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【診療Tips】アクアプラストで作るオーダーメイドスプリント|作成手順と臨床での活用例

アクアプラストとは?

  • アクアプラスト(Aquaplast)は熱可塑性プラスチックで、温めることで柔らかくなり、冷めると硬化する性質を持ちます。

  • この特徴を活かし、患者の患部に合わせて成形することで、オーダーメイドスプリントを簡単に作成することが可能です。

⚠️ 注意事項:本記事は医療従事者向けです
本記事は、形成外科・整形外科・リハビリ領域の医療従事者に向けて執筆しています。
一般患者が自己判断でスプリント作成や使用を行うと、熱傷や皮膚障害、誤った固定による症状悪化のリスクがあります。必ず医師・作業療法士の管理下で行ってください。

アクアプラストシートを患者に合わせてカットする

 

メリット

  • 既製品に比べてフィット感が高い

  • その場で調整できるため、患者満足度が高い

  • 変形や治癒過程に応じて、再成形が可能

  • スプリント作成に特別な機械を必要とせず、ティファールなどの湯沸かし器で対応可能

 

臨床での使用例

使用目的具体例
外傷後の固定マレット指、骨折後の安静保持
拘縮予防瘢痕拘縮に対する夜間スプリント
疼痛緩和変形性関節症に対する安静目的
術後管理皮弁や移植部位の安静保持
ちなみに、対象疾患により保険請求は異なるよ。骨折・脱臼は「J122 四肢ギプス包帯」、創傷の安静目的なら「J 000 創傷処置」、関節炎症の消炎鎮痛目的なら「J119 消炎鎮痛等処置」。それに材料費(アクアプラストの場合は、特定保険医療材料「056 副木(1)軟化成形使用型」)がプラスとなるよ。上記のJコードに当てはまらない場合(拘縮など)は材料費のみの請求になる。
指導医

 

作成に必要な道具

アイテム用途
アクアプラスト本体スプリント材料
ティファール電気ケトル材料を温める
はさみ不要部分のカット
蛍光ペンカット部分のマーキング

🩺 Tip: 角を丸く加工することで、スプリント装着時の不快感や皮膚障害を防止できます。

 

作成手順

Step 1:材料を温める

  • ティファール電気ケトルなどで60〜70℃前後に加熱。

  • アクアプラストを温湯に浸すと柔らかく変化する。

ポイント

熱すぎると皮膚熱傷の危険があるため、必ず少し冷ましてから患者にあてがう。

アクアプラストを柔らかくするためのお湯を準備する

アクアプラストを60〜70℃前後の温湯に浸して柔らかくする。やけど防止のためピンセットを使用するのが望ましい

 


Step 2:成形

  • 柔らかくなったアクアプラストを患者の手指に合わせて形作る。

  • 圧痕が残らないように、均一に力を加える

やや冷ましてから患者の手にあてがい、目的とする部位に沿わせて成形する(熱すぎる状態であてがうと熱傷のリスクがあるため注意)


Step 3:不要部分をマーキング&カット

  • 蛍光ペンで不要な部分をマーキング。

  • 医療用はさみでカットし、角は丸く整える


Step 4:冷却・固定確認

  • 形を整えた後、自然冷却または流水で冷やして硬化させる。

  • 装着後、患者に圧迫感や痛みがないか確認する。

冷えて硬化したアクアプラストスプリント:指や手にぴったりフィットし、変形や拘縮予防、安静保持に活用できる

 

保険請求(コスト)

  • アクアプラストを用いたスプリント作成では、疾患や病態によって請求できる内容が異なります
    大きく分けて以下の2パターンがあります。
請求内容点数・金額
処置料 + 材料費を同時請求J119 消炎鎮痛等処置:135点+特定保険医療材料「056 副木(1)軟化成形使用型」手指用:1,380円
材料費のみを請求056 副木(1)軟化成形使用型:1,380円

 

請求の考え方

  • J119 消炎鎮痛等処置は、疼痛や炎症の治療が目的である場合に算定可能です。
    例)変形性関節症など、痛みの軽減を目的としたスプリント

  • 拘縮予防が主目的の場合(例:瘢痕拘縮に対する夜間スプリント)では、J119は請求できず、材料費のみ(056 副木)を算定します。

ポイント

保険者(支払基金や国保)によって判断基準にばらつきがあり、同じ疾患でも認められるケースと認められないケースがあります。
特に拘縮予防目的では、J119が認められないことが多いため、事前に院内での運用ルールを確認しておくことが重要です

 

はじめに

  • アクアプラストを使えば、その場でオーダーメイドスプリントを作成可能。

  • 患者の手指形状にぴったりフィットするため、満足度が高い

  • 熱管理と角の加工を徹底し、快適な装着感を提供する。

  • 保険請求も可能で、臨床的なメリットが大きい。

指導医
スプリント作成に必要な商品を紹介するよ。手指には1.6mmぐらいの薄いタイプがいいよ。穴があいてないシート状と穴あきタイプがあるよ。

  • この記事を書いた人
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小野真平(形成外科医)/ Shimpei Ono(Plastic Surgeon) 

日本医科大学形成外科学教室 准教授/医師。Advanced Medical Imaging and Engineering Laboratoryを主宰。 手足の形成外科、マイクロサージャリー、再建外科を専門とし、臨床・研究・教育に従事。可動式義指の開発、VR教育、3D超音波や医用画像工学の応用、PROsを重視した研究を展開。 美術解剖学や医療イラストレーションにも造詣があり、芸術と医学の融合をテーマに講演・執筆。教育活動では学生・研修医指導のほか、東南アジア医学研究会(Ajiken)部長として国際医療交流・災害医療にも取り組む。

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