整形外科 日記

【日記】義肢装具サポートセンター見学記|形成外科医が見た義肢医療の最前線

義肢装具サポートセンター見学記:形成外科医の視点から

  • 先日、公益財団法人鉄道弘済会 義肢装具サポートセンターを見学する機会をいただきました。
  • 本センターで長年義足制作に携わってこられた義肢装具士・臼井二美男先生(現代の名工に選出)は、私の母校である前橋高校の大先輩でもあります。義肢装具分野における国内外でのご功績は、医療者としても大きな学びとなりました。
公益財団法人鉄道弘済会は、鉄道の整備事故でケガ(たとえば手足の切断)をした鉄道職員や、その遺族の生活を助けるためにできたんだよ。最初は駅の中の売店(キオスクの原型)で販売員として働ける職を提供するところから始まり、そこから事業を広げて、医療・リハビリ・福祉の分野にも取り組むようになったんだよ。
指導医

 

公益財団法人鉄道弘済会 義肢装具サポートセンター

公益財団法人鉄道弘済会 義肢装具サポートセンター

 

四肢切断とトータルケアの重要性

  • 私は手足の形成外科を専門としていますが、四肢切断に至った患者さんにとって「歩く」「働く」「社会復帰する」ためには、手術だけでなく義肢装具を含めた包括的な治療戦略が不可欠です。
  • 形成外科医は切断や再建のみにとどまらず、その後の装具適合、リハビリテーション、社会復帰までを見据えた長期的な治療計画を考える必要があります。

 

技術革新:3Dスキャンから電気制御義肢まで

  • 今回の見学で特に印象的だったのは、義肢制作現場におけるデジタル技術の実装です。

  • 3Dスキャンで残存肢の形状をデータ化し、CADで設計、3Dプリンタで出力したソケットや装具を臨床に応用するプロセスはすでに実用段階に入っています。

  • さらに、義肢自体も進化を続けており、電気制御タイプの義肢(センサーで筋電位や動作を検知し、モーターで関節を駆動する方式)が導入されています。従来の機械的制御に比べ、より自然な動作や活動範囲の拡大が可能となり、リハビリテーションや社会復帰の質的向上が期待されます。

従来の義肢は“体で動かす単純な仕組み”、電気制御義肢は“筋肉の電気信号でモーターを動かすハイテク仕組み”。今は昔よりもずっとスムーズに動くようになっているんだよ。
指導医

 

3Dスキャンで残存肢の形状をデータ化し、CADで設計、3Dプリンタで出力する流れ

3Dスキャンで残存肢の形状をデータ化し、CADで設計、3Dプリンタで出力する流れ

電気制御タイプの義肢

電気制御タイプの義肢


 

残存肢の形状を上の3Dスキャナーでスキャンして、CAD専用ソフトで加工した後、3Dプリンターで出力していたよ。
指導医

 

社会的取り組みと患者支援

  • 義肢装具サポートセンターでは、単なる義肢製作や臨床適合にとどまらず、義肢使用者の運動会・競技会ファッションショー(切断ヴィーナス)といった社会的な活動を継続的に開催しています。これらは患者さん自身が「義肢を使うことの誇り」を感じ、社会と積極的につながる場となっています。

  • 医療従事者としても、患者さんのQOLを支える上で非常に参考になる取り組みでした。

 

まとめ

  • 今回の見学を通じ、形成外科医としての臨床の枠を超え、医工連携と社会的支援を含めたトータルケアの重要性を改めて実感しました。

  • 義肢装具の進歩は日進月歩であり、今後も切断患者の社会復帰を支援するために、形成外科と義肢装具士、リハビリスタッフが連携していく必要があります。

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小野真平(形成外科医)/ Shimpei Ono(Plastic Surgeon) 

日本医科大学形成外科学教室 准教授/医師。Advanced Medical Imaging and Engineering Laboratoryを主宰。 手足の形成外科、マイクロサージャリー、再建外科を専門とし、臨床・研究・教育に従事。可動式義指の開発、VR教育、3D超音波や医用画像工学の応用、PROsを重視した研究を展開。 美術解剖学や医療イラストレーションにも造詣があり、芸術と医学の融合をテーマに講演・執筆。教育活動では学生・研修医指導のほか、東南アジア医学研究会(Ajiken)部長として国際医療交流・災害医療にも取り組む。

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