日記
【日記】メディチ家と医学 ― 芸術と医療を支えたルネサンスの庇護者たち
メディチ家とは?
メディチ家は15〜18世紀にかけてフィレンツェで繁栄した名門一族。銀行業で財を成し、芸術・科学・医学に強力な支援を行いました。
ダ・ヴィンチやミケランジェロなど芸術家への支援が有名ですが、医学研究や解剖学教育の庇護 も行い、ルネサンスの知の発展 を支えました。
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メディチ家と医学の象徴 ― 紋章の「丸薬」
メディチ家の紋章に描かれた複数の赤い丸(パッレ)は、古くは貨幣や血の滴を意味するともされますが、一説には薬剤を意味する丸薬(pill) とも言われています。
家名「Medici」が「医師(medic)」に通じることからも、医学や薬学と深い関係をもつ象徴と考えられています。
この紋章を見ると、メディチ家が医学的伝統を背景に持ち、芸術だけでなく医療においても影響力を持っていたことを感じさせます。
メディチ家の紋章を描いたタペストリー。赤い丸(パッレ)はメディチ家の象徴であり、芸術や学問への庇護を示す。彼らの支援は医学の発展にも大きく寄与した。
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解剖学と美術への貢献
メディチ家は、フィレンツェ大学 やサンタ・マリア・ヌオーヴァ病院 での解剖を認め、解剖学教育を推進しました。これにより外科や医学研究が発展し、同時に美術家も写実的な人体表現を可能にしました。
ダ・ヴィンチやミケランジェロが優れた人体描写を行えた背景には、メディチ家の支援による環境がありました。
医学研究の庇護と遺産
彼らは図書館に医学書を収蔵し、解剖学者や医師を支援しました。
ルネサンス期の医療研究は、権力者による庇護なくして成立しなかったといえます。
メディチ家は「学問を守り育てる力 」がいかに重要かを示す歴史的事例です。
まとめ
メディチ家のタペストリーや紋章に描かれた赤い丸は、薬や医学との結びつきを暗示します。
芸術と同時に医学を支援した彼らの姿勢は、現代の医療者に「研究環境を整えることの重要性」を教えてくれます。
小野真平(形成外科医)/ Shimpei Ono(Plastic Surgeon)
日本医科大学形成外科学教室 准教授/医師。Advanced Medical Imaging and Engineering Laboratoryを主宰。
手足の形成外科、マイクロサージャリー、再建外科を専門とし、臨床・研究・教育に従事。可動式義指の開発、VR教育、3D超音波や医用画像工学の応用、PROsを重視した研究を展開。
美術解剖学や医療イラストレーションにも造詣があり、芸術と医学の融合をテーマに講演・執筆。教育活動では学生・研修医指導のほか、東南アジア医学研究会(Ajiken)部長として国際医療交流・災害医療にも取り組む。
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-フィレンツェ , メディチ家 , ルネサンス医学 , 丸薬 , 医学 , 医療史 , 紋章 , 解剖学
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