形成外科

【Step by Step 手術手技】頸部リンパ節生検

Key Point Summary

CTで病変部の位置や大きさを確認して、術前計画(局麻 or 全麻など)をたてる。

術前に、リンパ漏のリスクに関して説明しておく。

依頼元の血液内科(or 腫瘍内科)のドクターと密に連携して、検査オーダーをする。

摘出したリンパ節は、すぐにホルマリンに漬けずに、生理食塩水ガーゼにくるんで血液内科(or 腫瘍内科)の指示に従う。

 

Q & A

レジデント
リンパ節生検って、対象となるリンパ節がすごく深くにある場合はどうしたらいいんですか?
多くは体表から触知するような浅在性のリンパ節を生検することが多い。ただ、まれに深在性リンパ節しか腫れてないケースがあるよね。その場合は、全身麻酔での生検を計画するのが安全だね。頚部の深在性リンパ節の場合、手術に慣れている頭頚部外科の先生に依頼するのも1つのオプションだよ。
指導医
レジデント
全摘生検と部分生検はどちらがいいのですか?
可能なら全摘生検がベター。ただ、近くに重要な血管・神経があり全摘生検にこだわると損傷の危険がある場合、リンパ節が大きすぎる場合、転移した腫瘍が周囲に浸潤している場合では部分切除生検をすることもあるよ。その場合、切除断端からの出血やリンパ漏に注意だね。術中にしっかりと止血・結紮してペンローズを留置しよう。
指導医

 

Outline

【概要】

  • 形成外科は血液内科(or 腫瘍内科)からリンパ節生検の依頼を受ける機会が多い。
  • 悪性リンパ腫、結核性リンパ節炎、他部位悪性腫瘍のリンパ節転移、IgG4 関連多臓器リンパ増殖性疾患等が疑われる時、リンパ節生検の適応となる。
  • 画像(CTやMRI)を見ながら、摘出するリンパ節の大きさや位置を確認する。

可能であれば依頼元の主治医と電話で話して、摘出するリンパ節を確認したほうが間違いがない。また、リンパ節のHE染色、免疫組織染色、新鮮凍結標本の検査依頼は主治医にお願いした方が安全である。

体表から触知可能なリンパ節は局所麻酔下にて摘出可能である。一方で、触知しないリンパ節の局所麻酔手術は組むべきではない。深い位置にあるリンパ節は全身麻酔下での摘出を考慮する。その場合、頭頚部外科に紹介するのもよい判断である。

腫大したリンパ節を複数触知する場合、(a) 1番最初に大きくなったリンパ節 and/or (b) 大きいリンパ節(>1cm)を摘出したほうがよい。偽陰性を少なくすることができる。

顎下部は顔面神経下顎縁枝麻痺、後頸三角は副神経麻痺をきたす可能性があるため、他に適切なリンパ節があれば避けるか、神経刺激装置を併用しながら慎重に手術をおこなう。

CTで広頚筋下に約2cmの腫大したリンパ節を確認できる。

 

■ 全摘生検? or 部分生検?

  • 原則は、全摘生検(excisional biopsy)である。
  • 部分切除生検(incisional biopsy)の適応は、近くに重要な血管・神経があり全摘生検にこだわると損傷の危険がある場合、リンパ節が大きすぎる場合、転移した腫瘍が周囲に浸潤している場合など、リンパ節全体の摘出生検が容易でない場合である。

Incisional biopsyでリンパ節に切り込む時は電気メスではなく通常のメス(cold knife)でおこなう(標本が変性しないようにするため)。

切離面からの出血は電気凝固や結紮で対応するが、後出血やリンパ漏が生じやすいため注意する。

 

 

Step by Step

鎖骨上窩に腫大したリンパ節を触知する。


■ Step 2 

  • 1%Eキシロカイン10ccを局所浸潤麻酔する。

皮下脂肪層に多めに注入し、それを上から圧迫してジンワリと深部まで浸潤させる。リンパ節の裏面を剥離する際には局所麻酔を追加したほうがよい。

 

■ Step 3 

  • 本症例では術前CTで広頚筋下にリンパ節が位置するのを確認している。リンパ節直上の広頚筋をバイポーラで焼灼・切離し、リンパ節の被膜を確認する。
  • 被膜を有鉤摂子でつまんで軽く牽引しながら被膜上で剥離をすすめる。

細い血管は、適宜バイポーラで焼灼し、術野を無血野に保ちながら剥離を進める。

索状物は神経を含む可能性があるため、むやみに切離をしない。マイクロ剥離子などで索状物を剥離し、神経でないことを確実に確認してから切離する。

リンパ節生検は1人での手術は避けた方がよい。必ず助手(慣れていれば外来看護師でも可)に筋鉤をひいてもらうようにする。

 

■ Step 4 

  • リンパ節の流入血管を4−0絹糸で二重結紮してから切離する。

バイポーラで焼灼するDrもいるが、極力結紮したほうが合併症(血腫やリンパ漏)を予防することができる。

 

広頚筋下に存在するリンパ節を剥離し、流入血管を処理する直前の状態。

4−0絹糸で結紮する。

 

■ Step 5 

  • 止血・洗浄した後、ペンローズドレーンを留置して皮膚縫合(4-0PDS、6−0ナイロン)する。

死腔をつぶすドレッシングが確実にできるのであれば、ドレーンは不要である。ただし経験を要するため、ビギナーはドレーンを留置したほうが安全である。

 

■ Step 6 

  • 生食に浸して絞った綿で死腔をつぶすようにしながら、ガーゼ&布テープで圧迫しながら固定する。

 

 

■ Step 7 

  • 摘出したリンパ節は生食ガーゼで乾燥しないように管理し、3分割して、HE染色や免疫組織染色検査に提出する。この段階で、依頼元の内科Drにパスすることが多い。

摘出したリンパ節をいきなりホルマリンで固定しないようにする。

 

■ Step 8 

  • 手術当日は自宅でもガーゼの上から保冷材で冷却して、患部の安静を保つ。
  • 入浴、お酒、激しい運動×
  • 翌日から自宅でシャワー洗浄処置とする。シャワー洗浄(ペンローズ留置中は洗浄のみで石鹸・シャンプーは不可)、タオルで水分をふきとって、ゲンタシン軟膏、ガーゼテープで圧迫を継続。
  • 術後1〜3日後にペンローズ抜去する。
  • 術後1週を目途に抜糸する。

 

■ 処方箋

  • ケフラールカプセル(250mg) 1回1錠 1日3回 毎食後  3日分
  • ロキソニン錠(60mg) 1回1錠 1日3回 毎食後 3日分
  • ムコスタ錠(100mg) 1回1錠 1日3回 毎食後 3日
  • ゲンタシン軟膏10g 1本

■ コスト

 

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