はじめに
足趾変形は糖尿病や末梢神経障害、外反母趾、外傷など多因子が関与して発症します。
特に代表的なのが以下の3つです。
A. Mallet toe(マレットトゥ)
B. Hammer toe(ハンマートゥ)
C. Claw toe(クロートゥ)
これらの変形は単なる美容的問題にとどまらず、潰瘍形成や歩行障害の原因となるため、早期診断と適切な介入が重要です。ここでは医療者向けに、臨床所見・評価法・治療戦略をまとめます。

足の指が曲がる3大変形: A. Mallet toe、B. Hammer toe、C. Claw toe
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1. Mallet toe(マレットトゥ)

足の指が曲がる3大変形A. Mallet toe、B. Hammer toe、C. Claw toe
病態
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DIP関節(遠位指節間関節)が屈曲位をとる変形。
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手指でいうマレットフィンガーと類似した状態。
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主に第2趾に発生し、末節部の背屈力低下が原因。
臨床所見
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爪先が下方に突出 → 爪下の胼胝形成や潰瘍リスク上昇
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靴との接触部位に発赤・疼痛を認めやすい
主な原因
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足趾末梢神経障害(糖尿病性ニューロパチーなど)
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靴による慢性的圧迫
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外反母趾による足趾配列不均衡
治療
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保存療法:パッド、靴調整
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手術適応
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保存療法で症状が改善しない場合
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DIP関節固定術が第一選択
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2. Hammer toe(ハンマートゥ)

足の指が曲がる3大変形A. Mallet toe、B. Hammer toe、C. Claw toe
病態
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PIP関節が屈曲、MP関節は伸展位、DIP関節は伸展または軽度屈曲を示す変形。
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足趾背側に突出部が生じ、靴擦れの原因となる。
臨床所見
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PIP関節背側の胼胝や潰瘍
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中足趾節関節(MTP関節)の可動域制限や疼痛を伴うことが多い
主な原因
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長期間のハイヒール・タイトシューズ着用
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外反母趾による横アーチ不均衡
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リウマチや神経疾患
治療
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保存療法:パッド、インソール、装具
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手術適応
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軟部組織リリース+PIP関節切除術(arthroplasty)
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重度例ではPIP関節固定術を併用
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3. Claw toe(クロートゥ)

足の指が曲がる3大変形A. Mallet toe、B. Hammer toe、C. Claw toe
病態
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MTP関節が背屈位、PIP関節・DIP関節が屈曲位をとる複合変形。
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3つの変形の中で最も重度で、神経疾患による筋バランス崩壊により生じやすい。
臨床所見
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足底と足背の両方に胼胝形成
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第2〜5趾の多趾性変形が多い
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MP関節の不安定性・脱臼を伴うこともある
主な原因
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糖尿病性ニューロパチー
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末梢神経障害(Charcot足など)
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進行した外反母趾
治療
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保存療法は変形進行の抑制が中心
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手術適応
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MP関節整復術、腱移行術、骨切り術を組み合わせる
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足底潰瘍を伴う場合は早期介入を検討
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4. 診断と評価
身体所見
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立位・歩行時に観察
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胼胝や皮膚潰瘍の有無を確認
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MP関節の可動性、内在筋と外在筋のバランス評価
画像診断
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X線側面像:変形の関節レベルを明確化
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足底圧分布計測:潰瘍リスク評価に有用
5. 比較表
変形 | 関与する関節 | 主因 | 主な合併症 | 手術術式 |
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Mallet toe | DIP屈曲 | 靴圧迫、末梢神経障害 | 爪下胼胝、潰瘍 | DIP関節固定術 |
Hammer toe | PIP屈曲+MP伸展 | 外反母趾、靴 | PIP背側潰瘍 | PIP切除術、固定術 |
Claw toe | MP背屈+PIP/DIP屈曲 | 神経疾患、Charcot足 | 多発性潰瘍、脱臼 | MP整復術+腱移行術 |

足の指が曲がる3大変形A. Mallet toe、B. Hammer toe、C. Claw toe
6. 臨床的注意点
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糖尿病患者では潰瘍形成のリスクが高く、積極的な介入が必要
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外反母趾を伴う場合、根治的には前足部全体の再建が必要
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術後は装具管理と足底圧コントロールが再発予防に重要
まとめ
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Mallet toe、Hammer toe、Claw toeは変形部位が異なるため、臨床評価と術式選択が異なる
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保存療法で効果がない場合、進行度に応じた手術介入が必要
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特に糖尿病性足病変では、潰瘍予防を念頭に早期治療を行うことが望ましい
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