破傷風
■ 概要
- 破傷風菌(Clostridium tetani)が産生する毒素(tetanospasmin)により、運動神経の終板や脊髄前角細胞、脳幹の抑制性の神経回路が遮断され、
①筋硬直(rigidity、こわばり、開口障害、痙笑)、
②有痛性筋痙攣(spasm、後弓反張)、
③自律神経障害(autonomic instability)
の3徴を呈する(1徴候以上で積極的に疑って臨床診断にあたる)。 - 感染経路は創部感染である。破傷風菌は土壌や糞便中などに広く存在するといわれており、それらが絡むような汚染創では常に発症のリスクを考慮する。
- 潜伏期間は10日前後(3〜21日)である。
- 発症すると命にかかわる(死亡率=30%)ので予防接種が大切である。
- 日本では現在、年間100人が発病している。
- 5類感染症のため、診断したら7日以内に届け出が必要である。
土が絡む傷や動物咬傷などは特に接種したほうがいいね。指導医
■ 日本のワクチン接種事情
- 日本では1968年(昭和43年)〜乳幼児に破傷風ワクチンを接種している。
- つまり、1968年より前に生まれた人たちは基礎免疫がない可能性がある。そのため、1968年生まれを境に破傷風トキソイドの接種回数が異なる。
いわゆる三種混合ワクチン(ジフテリア、百日せき、破傷風)だね。指導医
■ 破傷風トキソイド
- 1A(0.5ml)を上腕外側に皮下注または筋注する。
- 約10年間で抗体価が減衰する。つまり追加接種が必要になる。
■ どんな時に接種をするか?
- American College of Surgeons(ACS)が、創部の性状から接種基準を作成している。
- 破傷風をおこす可能性の高い創傷:
-受傷後時間の経過しているもの(≧6時間)
-創面に異物などを認め、壊死組織や感染徴候のあるもの
-創の深さが1cmをこえるもの
-神経障害や組織の虚血を合併しているもの
-人間や動物咬傷によるもの
■ 接種の実際
- 1968 年(昭和43年)以前の生まれなら、受傷直後、受傷1 ヵ月後、受傷6 ヵ月〜1年後の3 回接種とし、その後は10 年毎に1 回とする。
- 1968 年(昭和43年)より後の生まれであれば、1 回接種を10 年おきとする。
■ コスト
- 外傷後の破傷風ワクチン接種は予防的な意味合いが、強いが保険適応である。
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