Key Point Summary
指ブロックは、掌側から or 背側から注射する方法がある。掌側からのほうが痛みが強い。 掌側からのブロックには、皮下 or 腱鞘内に注射する方法があるが、基節骨背側の麻酔が不十分になりやすい。 背側からのブロックには、2ヵ所の注射を要する。指全体の麻酔が可能。 初心者には、背側からの"経中手骨ブロック"がオススメ!
Q & A
Outline
【解剖】
- 指節骨の2時と10時に背側指神経(橈骨神経浅枝と尺骨神経背側枝)があり、4時と8時に掌側指神経がある。
- 掌側指神経が、PIP関節以遠・背側の皮膚感覚を支配する。
【指ブロックの分類】
(1) 指基部・掌側・正中1ヵ所から注射するSingle-injection volar 法
→ (a) 皮下ブロック
→ (b) 経腱鞘ブロック
(2) 指間(みずかき=web)・背側・2ヵ所から注射するTwo-injection dorsal法
→ (c) 経中手骨ブロック
掌側から注射するほうが、痛みが強い傾向がある。
掌側の正中1ヵ所から注射するほうが、神経障害は起こしづらい。
【各 指ブロックの特徴】
(a) 皮下ブロック
- 指基部・掌側の皮下に2〜3cc注入する。
- 背側指神経のブロックが不十分になるため、基節骨背側の麻酔効果が弱い。
- (b)経腱鞘ブロックと比較すると痛みが少なく、効果は同等とされている。
(b) 経腱鞘ブロック
- 指基部・掌側の腱鞘内に2〜3cc注入する。
- 骨に達するまで針先を刺入して、シリンジに軽く圧を加えながら針をゆっくりと引き抜き、麻酔液が楽に注入できる位置(骨膜と屈筋腱の間隙)で注入する。
- 背側指神経のブロックが不十分になるため、基節骨背側の麻酔効果が弱い。
少量の注射量で確実に指ブロックができるとされているが、腱鞘を貫くブロックは、少なからず感染、腱損傷、癒着のリスクがあることから著者は使用していない。
(c) 経中手骨ブロック
- Web・背側・2ヵ所から背側指神経に1cc、掌側指神経に2〜3ccずつ注入する。
- 背側指神経もブロックするため、基節骨背側を含め指全体が麻酔される。
注射針による神経障害のリスクがある。
Step by Step
■ Step 1
- 手掌側からの指ブロック注射は、針を刺入する際の痛みが強いこと、背側の指神経のブロックが不十分となる傾向にあるため(基節骨背側の麻酔の効きが悪いため)、著者は経中手骨ブロックを好んで用いている。(指尖部のみの処置であれば、掌側からの皮下ブロックも有効である。)
- 1%キシロカイン10cc または 0.75%アナペイン10ccを10ccロック付きシリンジに吸う。
- 針は23G針を好んで用いている。ある程度の針の長さがないと手背のwebから注射した際に手掌の指神経まで届きづらいためである。
■ Step 2
- 指の橈側(or もちろん尺側からでもOK)から背側指神経に1 cc注射する。
注射はゆっくりと時間をかけて注入したほうが痛みが少ない。
■ Step 3
- 針先を深部にすすめて掌側指神経に2〜3 cc注射する。
局所麻酔薬が容易に注入可能な層に注射する。シリンジ圧が高くて押せない場合は、不適切な層に針先が入っている可能性が高いので位置をずらす。
■ Step 4
- 尺側の背側指神経も同様に1cc注射する。
■ Step 5
- 尺側の掌側指神経も同様に2-3cc注射する。
■ Step 6
- 3分待ってから手術を開始する。
手術部位の炎症が強い時(例:瘭疽など)は、麻酔が効くまでに時間がかかるため3分以上待ってから執刀した方が良い。
Lalonde D et al. A multicenter prospective study of 3,110 consecutive cases of elective epinephrine use in the fingers and hand: the Dalhousie Project clinical phase. J Hand Surg Am. 2005;30:1061-1067.
※Elective epinephrine injection was avoided in the uncommon situations in which patients might have had pre-existing significant problems with hand or finger ischemia such as previous finger infarction, severe acute crush, previous replantation, Buerger’s disease, revision Dupuytren’s surgery, severe vasospastic disorders, and so forth. Smokers, however, were not excluded unless they showed significant signs of finger ischemia.