形成外科 手外科
【診療Tips】Allen testの正しい理解と臨床応用:手掌動脈アーチの完全型と不完全型を見極める Key Point Summary 手掌部の動脈アーチは、アーチが形成されている完全型と形成されていない不完全型がある。
Allen testは、橈骨動脈を犠牲にしても手指末梢血流が保たれるかを確認する検査である。
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Q & A レジデント
橈骨動脈と尺骨動脈は、通常は手掌部でアーチを形成しているよ。アーチは浅掌動脈弓(SPA)と深掌動脈弓(DPA)の2つがあるんだけど、指の血行に主に関与しているのはSPA系だよ。問題は、SPAにそこそこ解剖学的変異があること(アーチが形成されていないこと)があるんだ。
指導医
レジデント
橈骨動脈は、Aライン確保目的で穿刺したり、冠動脈バイパスグラフト術のグラフトとして使用されるね。形成外科領域では、前腕皮弁を挙上する際に橈骨動脈を犠牲にするね。アーチが不完全な症例で橈骨動脈を犠牲にすると、橈側の母指や示指の血流障害が生じることがあるよ。Allen testはそれを術前にチェックする検査法のことだね。
指導医
浅掌動脈弓と深掌動脈弓
レジデント
そう。このアーチが真ん中で分断されているのが不完全型だよ。不完全型で橈骨動脈を採取するとそれより末梢の母指や示指の血行が途絶えてしまうのがわかるね。
指導医
Allen testとは何か 橈骨動脈と尺骨動脈は通常、浅掌動脈弓(SPA)と深掌動脈弓(DPA)を形成する。特に指血行にはSPAが主要な役割を担う。しかしSPAには解剖学的バリエーションがあり、アーチが形成されない「不完全型」が一定割合で存在する。 橈骨動脈を穿刺する場面(Aライン確保)、冠動脈バイパス術におけるグラフト採取、さらには形成外科領域での前腕皮弁挙上などでは、橈骨動脈を犠牲にする必要がある。不完全型症例で犠牲にすると、母指や示指の虚血を招く可能性があるため、術前にAllen testで評価することが重要である。
Outline ■ Step 1
患者に手を強く握らせて、手の血液を絞り出す。
■ Step 2
検者が橈骨動脈と尺骨動脈を前腕遠位部で同時に圧迫する。 検者が橈骨動脈と尺骨動脈を前腕遠位部で同時に圧迫する。
■ Step 3
この段階では橈骨動脈と尺骨動脈を介して手指に流れる血行は遮断されているので、患者の手は蒼白だよ。
指導医
両動脈を圧迫したまま、患者に手を開いてもらう。
■ Step 4
検者が、尺骨動脈の圧迫のみを解除する。 5〜15秒以内に患者の手の赤みが戻ったら尺骨動脈1本で手指の血流は十分に保たれていることになる(=橈骨動脈は犠牲にしても問題ない)。 検者が尺骨動脈の圧迫のみを解除する。 5〜15秒以内に手掌の赤みが戻れば、尺骨動脈のみで十分な血流が確保されていると判断できる。 (=橈骨動脈を犠牲にしても虚血のリスクは少ない)
■ 判定
陽性:手の赤みが速やかに戻る(=完全型アーチ、橈骨動脈犠牲可) 陰性 :赤みが戻らない(=不完全型アーチ、橈骨動脈犠牲リスクあり)Allen test陽性・陰性の定義は、教科書によっては間違って逆に書いてあることがあるので注意が必要だよ。
指導医
■ 臨床での応用と注意点 冠動脈バイパス:橈骨動脈採取の前に必須
形成外科:前腕皮弁デザイン前の評価
手中治療室・麻酔科:Aライン確保時の血行評価
■ 参考文献
リンク
小野真平(形成外科医)/ Shimpei Ono(Plastic Surgeon)
日本医科大学形成外科学教室 准教授/医師。Advanced Medical Imaging and Engineering Laboratoryを主宰。
手足の形成外科、マイクロサージャリー、再建外科を専門とし、臨床・研究・教育に従事。可動式義指の開発、VR教育、3D超音波や医用画像工学の応用、PROsを重視した研究を展開。
美術解剖学や医療イラストレーションにも造詣があり、芸術と医学の融合をテーマに講演・執筆。教育活動では学生・研修医指導のほか、東南アジア医学研究会(Ajiken)部長として国際医療交流・災害医療にも取り組む。
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