その他 整形外科

【診療Tips】義足作成の流れと手続きまとめ

はじめに

  • 下肢切断後のリハビリや社会復帰において、義足の作成は非常に重要なステップです。

  • しかし、患者さんやそのご家族にとっては「どこに相談すればよいか」「費用はどのくらいかかるのか」「行政手続きはどのように進むのか」など、分かりにくい点が多いのが現状です。

  • この記事では、義足作成の一連の流れと、医師・義肢装具士・役所の関わりを整理して解説します。

  • 患者指導や退院支援に関わる医療者の参考になれば幸いです。

義肢装具士

義肢装具士

 

義足作成の全体像

義足作成は、医療と福祉制度が連携して進められます。
大まかな流れは以下の通りです。

    1. 医師による診断と義足適応の判断

    2. 義肢装具士による評価と採型(型取り)

    3. 仮義足の作成と歩行練習

    4. 本義足の完成

    5. 行政による費用助成の申請・交付

    6. 定期的なフォローアップ

 

1. 医師の関わり

義足作成の起点となるのは、医師の診断と指示です。
医師は以下の役割を担います。

  • 切断部位や原因疾患の診断
    例:外傷、糖尿病性壊疽、末梢動脈疾患など

  • 断端の治癒状態の確認
    → 義足作成のタイミング判断

  • 身体障害者手帳用の診断書作成
    → 後述する行政手続きに必要

  • 義足処方箋の作成
    → 義肢装具士が製作する際の指示書

  • リハビリテーション科や義肢装具士への紹介

ポイント:医師が作成する主な書類

  • 身体障害者診断書・意見書

  • 義肢装具士への処方箋(指示書)

  • 医療保険申請用書類(場合による)

 

2. 義肢装具士の関わり

義肢装具士は義足作成の専門職であり、患者一人ひとりに合わせた義足を設計・製作します。
流れは以下の通りです。

  1. 初回面談・評価

    • 断端の形状、皮膚の状態、筋力、活動レベルを確認

  2. 採型(型取り)

    • 義足ソケットの精密な型を作成

  3. 仮義足の作成

    • 歩行練習を通じてフィット感やアライメントを調整

  4. 本義足の完成

  5. 納品後のフォローアップ

    • 断端の変化に合わせてソケット調整

義肢装具士は医師と連携し、患者のリハビリチームの一員として活動します。

 

3. 行政・役所の関わり

義足は高額なため、多くの患者が公費助成制度を利用します。
主に以下の制度が関わります。

(1) 身体障害者手帳の交付

  • 初めて義足を作成する場合、多くは身体障害者手帳の取得が必要

  • 医師が作成した診断書・意見書を添えて、市区町村役場へ申請

主な流れ

  1. 医師が診断書を作成

  2. 市区町村役所へ提出

  3. 判定 → 手帳交付(1〜2か月程度かかる)


(2) 自立支援法による補装具費支給制度

  • 義足の費用は補装具費支給制度を利用することで自己負担が軽減される

  • 医師が作成する補装具交付意見書が必要

手続きの流れ

  1. 医師が補装具交付意見書を作成

  2. 義肢装具士が見積書を作成

  3. 役所に申請 → 審査・承認

  4. 承認後に義足製作開始

注意点

  • 手続き完了前に義足を製作すると公費が適用されない

  • 納品後にも役所で確認作業がある場合が多い

 

4. 仮義足から本義足までのリハビリ

義足は完成後すぐに最終型を使うわけではありません。
初期段階では仮義足を使い、歩行練習を行います。

  • 仮義足

    • 断端の腫脹が落ち着くまでの一時的な義足

    • 歩行訓練とフィット感確認が目的

  • 本義足

    • 仮義足での訓練を経て断端が安定してから製作

    • 長期的に使用できる仕様で作成される

5. 費用について

  • 義足は数十万円〜100万円以上する場合がありますが、補装具費支給制度を利用することで自己負担は原則1割程度となります。


ただし、収入や保険制度によって負担割合が変動するよ。
指導医

スポーツ競技用の義足も存在しますが、これらは補装具費支給制度の対象外となります。

 

 

6. 医療者が押さえるべきポイント

  • 断端の治癒状態を確認して義足作成時期を判断する

  • 必要書類(診断書・意見書・処方箋)を漏れなく作成

  • 行政手続きは時間がかかるため、早期に申請を開始する

  • リハビリチーム(医師、看護師、理学療法士、義肢装具士)との情報共有を密に行う

まとめ

  • 義足作成には医療と行政の連携が不可欠であり、特に医師の診断書や意見書が重要な役割を果たします。

  • 初回は身体障害者手帳の取得が必要で、補装具費支給制度を利用することで自己負担を大幅に軽減できます。

  • 医療者は患者や家族に対して、手続きの流れやスケジュールをわかりやすく説明することが大切です。

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指導医

 

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指導医

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小野真平(形成外科医)/ Shimpei Ono(Plastic Surgeon) 

日本医科大学形成外科学教室 准教授/医師。Advanced Medical Imaging and Engineering Laboratoryを主宰。 手足の形成外科、マイクロサージャリー、再建外科を専門とし、臨床・研究・教育に従事。可動式義指の開発、VR教育、3D超音波や医用画像工学の応用、PROsを重視した研究を展開。 美術解剖学や医療イラストレーションにも造詣があり、芸術と医学の融合をテーマに講演・執筆。教育活動では学生・研修医指導のほか、東南アジア医学研究会(Ajiken)部長として国際医療交流・災害医療にも取り組む。

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