形成外科 皮膚科

【Step by Step 手術手技】陥入爪→部分抜爪

Key Point Summary

陥入爪=爪の側縁が側爪郭に食い込んで炎症をおこした状態。

陥入爪は、①爪に原因がある場合と、②軟部が腫れて爪が相対的に食い込む場合がある。①②はお互いがお互いの原因となって悪循環サイクルに入りやすい。

陥入爪は種々の原因があるため、原因にあわせて治療法を選択する。

感染を伴うような重症型は、まずは悪循環を断ち切るために陥入した爪(爪棘)をカーブ状に切除すると劇的に痛みが消失する。

 

 

Q & A

 

レジデント
陥入爪と巻き爪って同じなんでしょうか?

違うものだよ。陥入爪は"爪の側縁が側爪郭の軟部(皮膚・皮下脂肪)に食い込んで炎症をおこした状態"、一方で巻き爪は"爪が巻いた状態"と定義されるよ。巻き爪は普通は痛くないんだけど、側爪郭に炎症が生じると、"巻き爪に陥入爪を合併した"と表現するよ。
指導医

 

典型的な陥入爪。爪は平らで深爪が原因のことが多い。

典型的な巻き爪。爪の形が巻いている。食い込んでいる部分が痛くなれば"巻き爪に陥入爪を合併した"という。


レジデント
テーピング、コットンパッキング、ガター、ワイヤーなどいろんな治療法がありますが、何が1番いいんですか?

爪は専門にしている医師が少ないため、不適切な治療が横行しているのが現状なんだ...残念ながら。軽症では列挙してくれた保存加療でいいんだけど、化膿性肉芽腫がモリモリして痛くて生活するのもツライような重症例では部分抜爪をオススメするよ。そして、陥入爪の病因を聴取して、再発予防のための日常生活指導(正しい爪切り、靴選びなど)をするのが何よりも大切だよ。
指導医

 

 

 

Outline

【定義】

  • 陥入爪 = 爪の側縁が側爪郭に食い込んで炎症をおこした状態。
  • 爪周囲の感染や化膿性肉芽腫を伴うことがある。

 

【病因】

爪が軟部(皮膚・皮下脂肪)に食い込むことが原因だよ。原因として1番多いのが深爪だよ。深爪をすることで爪の角が皮膚に食い込みやすくなる。食い込むと軟部が腫れて、爪の角がさらに食い込むよ。
指導医

レジデント
まさに悪循環ですね…

 

 

【爪に原因がある】

  • 深爪
  • 生まれつき爪の幅が広い
  • 爪白癬(爪の形が変化する)

【軟部が腫れて爪が相対的に食い込む】

  • 靴(高めのヒールや先が尖ったパンプス)による圧迫
  • 長時間の立位や歩行(立ち仕事、ハイキングや登山)
  • スポーツ(瞬発力を要する競技:バスケットなど)
  • 体重が増える肥満や妊娠

レジデント
爪に原因がある人の足に負荷がかかると発症するんですね…

 

 

【治療】

 

レジデント
爪の専門治療をしているクリニックのホームページをみても、陥入爪の治療はいろんな方法が提唱されています...何が正解なのか混乱してきました〜

そう、この分野は治療法が乱立していて大きな混乱があるよね。個人的な意見としては、陥入爪は上記のように原因がいろいろあうわけだから、原因にあわせて治療法を選択すべきだと思うよ。爪を切る治療を嫌う先生もいるけど、生まれつき爪幅が広くて陥入爪を繰りかえす患者さんにはやはりフェノール法に代表される外科的治療は有用だと思うよ。
指導医

あと、感染を伴うような重症型は、まずは悪循環を断ち切るために陥入した爪(爪棘)を切除すると劇的に痛みが消失するよ。あとは日常生活指導で再発を予防するように指導するとよいよ。
指導医

 

 

【保存的治療】

テーピング法:爪が食い込まないように軟部をひっぱる

コットン充填法:爪が軟部を乗り越えるように浮かせる

ガター法:爪が軟部に食い込む部分を保護する

アクリル人工爪:爪が軟部を乗り越えるようのを補助する

ワイヤー法:巻き爪のように弯曲が原因で陥入している場合に爪の弯曲を弱める

爪の保存治療の多くは保険適応にならず自費治療になるよ。
指導医

 

テーピング法では粘着力の強い布テープがオススメだよ。
指導医

 

 

 

【外科的治療】

  • フェノール法:爪の幅を狭くする
  • 陥入爪根治手術:幅を狭めたい部位の爪母をメスで切除する

外科的治療は、爪郭爪母楔状切除術(labiomatricectomy)と呼ばれるよ。要は爪母を一部切除して爪の幅を狭くするんだ。
指導医

外科的治療は本当に適応があるのか慎重に考えよう。巻き爪にたいして爪の弯曲をなおすことはできないよ。生まれつき爪の幅が広いことが原因の陥入爪によい適応と考えるよ。
指導医

 

感染を伴った重症型に対する部分抜爪法

 

 

■ Step 1 

  • 1%キシロカイン10ccで足趾ブロック注射する(患部への局注は激痛のため、趾の付け根にブロック注射する)。
  • 麻酔がきくまで3分待つ。
  • その間にモスキートペアンメイヨー剪刀(先端が鈍なもの)を準備する。 

 

 

■ Step 2 

  • モスキートで食い込んでいる爪(通常2〜3mm)とその周囲の皮膚を剥がす.

モスキートの先端を後爪郭と爪の間にグッと5mmほど押し込んで、ゆっくりと先端を広げることで剥離する。

 

 

■ Step 3

  • モスキートを食い込んでいる爪の下(=爪床の上)にグッと押し込む。

爪の根元(爪母の位置まで)まで十分押し込んで剥離するのがコツ。

 

 

■ Step 4

  • メイヨー剪刀で食い込んでる爪を縦方向にカットする。
  • すると食い込んでいた爪が容易に部分抜爪される。

縦方向のカットは、側爪郭に沿った直線ではなく、下の青線のようにカーブを描くように食い込んだ爪を切除する方法が推奨されている。

カーブ状のカットのほうが爪が生えてきたときに再発しづらいよ。
指導医

部分抜爪はあくまでも応急処置なので将来的に爪はまた生えること、日常生活での予防が大切であることを患者さんに説明しておく。

 

 

 

 

■ Step 5

  • 止血材(ソーブサン or カルトスタット or アルジサイトAg)とガーゼをあてて、布テープでガッチリと固定する。

 

 

■ Step 6

  • 当日は自宅内で安静にし、足台やクッション等で患足を挙上し、保冷剤で1〜2時間冷却する。
  • 当日は入浴、お酒、激しい運動は×だが、翌日以降はフリーとする。

手術後すぐに歩くと出血がガーゼ表面まで染み出てくることがあるので、10分ほど待合室のソファーで足を挙げて休んでから帰宅を許可する。

 

手足に巻き付けるタイプのバンドがあると保冷剤を効果的に患部にあてがうことができるよ。
指導医

 

 

■ 処方箋

  • ケフラールカプセル(250mg) 1回1錠 1日3回 毎食後  3日分
  • ロキソニン錠(60mg) 1回1錠 1日3回 毎食後 3日分
  • ムコスタ錠(100mg) 1回1錠 1日3回 毎食後 3日分
  • リンデロンVG軟膏 5g 1本(or 感染が強ければ イソジンゲル 4g  1本)

 

 

■ コスト

 

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