Key Point Summary
Z形成術は皮弁Aと皮弁Bを入れ替える横転皮弁であり、60°の角度設定で73%延長できる。
皮線(クリーセ)に直交する長軸方向の瘢痕は瘢痕拘縮をきたしやすい。z-plastyはクリーセ上で作図し、直交している瘢痕の向きを変える。
術後は、アルフェンスシーネによる伸展位管理とステロイドテープで拘縮の再発を予防する。
Q & A
Outline
【Z plasty】
- まず拘縮ライン上に線(赤)をひく。
- 下図のように、角が60°になるようにZを作図する。Zの1辺はすべて同じ長さ。
- 皮弁Aと皮弁Bを入れ替えることで、73%の延長効果がある。
縫合練習パッド Medarchitect
Step by Step
■ Step 1
- 本症例は小児例のため全身麻酔下で手術をおこなっているが、8〜10歳以上であれば、指ブロック&指タニケットで手術をおこなってもよい。
- 瘢痕拘縮ラインは、周囲の皮膚に余裕があれば切除してもよい。
面状の瘢痕拘縮では、瘢痕をすべて切除すると皮膚がたりなくなるため、拘縮ラインを分断するのに留め、皮弁を挟み込んだほうがが良い(もしくは全層植皮を選択する)。
■ Step 2
- 拘縮の原因となっている瘢痕を切除した後、深部に残存している線維性組織(残存する瘢痕)を十分に切除する。
- 線維性組織を十分に切除するとやわらかい脂肪組織が創面に圧出される。
この線維性組織を残したままにすると瘢痕拘縮は不十分な解除となる。
神経血管束を損傷しないように注意をする。剪刀では不用意に組織を切ってしまうため、メスで剥離・切除をする。神経血管束と平行(長軸方向)にメスをすすめることで神経血管束損傷のリスクを軽減できる。
■ Step 3
- 瘢痕拘縮ラインを解除した後にz-plastyを作図する。
- 皮線(クリーセ)を直交する瘢痕が瘢痕拘縮の原因になりやすいため、z-plastyは、皮線上でおこなう。
- 11番メスをもちいて、メス刃が欠損側に向かうように皮膚切開をする。
三角弁の頂点の血流に最大限の注意を払う。三角弁は無鉤鑷子などで把持しない。
正しい位置に皮弁が作図されていると、皮弁を挙上した段階で皮弁Aと皮弁Bは自然と移動する。
■ Step 4
- 5−0 or 6−0ナイロンで縫合する。
- 皮線を直交していた瘢痕拘縮ラインが皮線上で分断されているのがわかる。
■ Step 5
- ゲンタシン軟膏、ガーゼ、布テープでドレッシングする。
- 軽く圧迫するとよい。一方で指先は血流を確認できるようにガーゼで覆わず、見えるようにする。
- 指背側からアルフェンスシーネで伸展位固定する。
術後は再び屈曲方向の瘢痕拘縮をきたしやすいため、キズを一次治癒させること(二次治癒させないこと)、シーネを用いて伸展位管理すること、ステロイドテープを抜糸後早めに貼付することがコツである。
■ 術後
- 当日は、患部の安静、冷却、挙上を徹底する。
- 術翌日に、ドレッシングをはずして、血腫がないか、皮弁血流に問題ないかを確認する。
- 翌日から洗浄処置を開始する。出血やしみだしがなければガーゼドレッシングは最小限でよい。
- 縫合創が安定するまで(術後1〜2週、抜糸まで)は、指の運動は制限する。1日数回の軽い自動運動以外はアルフェンスシーネで伸展位管理する。
- 抜糸後、日中はフリーとする。夜間は手術痕上にエクラープラスター(ステロイドテープ)を貼付し、アルフェンスシーネで伸展位で管理する。
- エクラープラスターは症例によってきずあとの赤みや固さを指標にして貼付期間を調整する。夜間のアルフェンスシーネは術後3ヶ月は継続する。
■ 処方箋
- ケフラールカプセル(250mg) 1回1錠 1日3回 毎食後 3日分
- ロキソニン錠(60mg) 1回1錠 1日3回 毎食後 3日分
- ムコスタ錠(100mg) 1回1錠 1日3回 毎食後 3日分
- ゲンタシン軟膏 10g 1本
- エクラープラスター 5枚 1日1回 就寝前 ハサミで適当な大きさに切って指に貼付
■ コスト
- 指瘢痕拘縮形成術(K099)
単なる拘縮に止まらず運動制限を伴う場合に算定する。
本手術には、z-plastyのみによるもの及び植皮術を要するものが含まれる。