形成外科 手外科

【Step by Step 手術手技】指瘢痕拘縮に対するdigitolateral flap

Key Point Summary

Digitolateral flapは、指側正中部にU字型に作図する皮膚茎皮弁である。

指基部またはPIP関節掌側の瘢痕拘縮解除後の欠損の被覆に有用である。U字皮弁は順行性と逆行性いずれも作図可能である。

術後は、アルフェンスシーネによる伸展位管理とステロイドテープで拘縮の再発を予防する。

 

 

Q & A

レジデント
横転皮弁(transposition flap)のデザインで、この部分の皮膚切開は必要ですか?

そこの皮膚切開は不要だね。もし皮膚切開しても結局は同じ場所を縫合することになるよ。横転皮弁を作図するときは、皮弁を横転するときのピボットポイントの位置を意識するといいよ。
指導医

上図のように作図するといいよ。厳密には皮弁は"U字"じゃなくて、"J字"になるね。
指導医
 

 

 

Outline

【横転皮弁: transposition flap】

  1. 拘縮ラインを分断すると欠損が生じる(赤)。
  2. 欠損の長軸に直交するようにU字型の皮弁を作図する。この際、下図のようにピボットポイントは黒●、45°になるように皮弁をデザインする(厳密には、U字ではなくJ字になる)。
  3. 皮弁Aと皮弁Bを入れ替える。
  4. 皮弁のドナーは、単純縫縮が理想的だが、植皮をすることもある。

指導医
横転皮弁は、皮弁Aと皮弁Bを入れ替える。そのため、入れ替え皮弁と訳されることもある。
   

 

【Digitolateral flap】

  • Digitolateral flapは、指側正中部にU字型に作図する皮膚茎皮弁であり、真皮下血管網により栄養されるrandom-pattern flapである。
  • 指基部またはPIP関節掌側の瘢痕拘縮解除後の欠損の被覆に有用である。U字皮弁は順行性と逆行性いずれも作図可能である。U字皮弁はクリーセを超えないように作図する。

指基部の欠損を順行性のdigitolateral flapで被覆する。

 

 

PIP関節掌側の欠損を基節骨上の逆行性のdigitolateral flap、または、中節骨上の順行性のdigitolateral flapで被覆する。

 

 

指導医
基節骨の側正中部は皮膚に余裕があるため10mmほどの皮弁幅を確保できるけど、中節骨の側正中部は皮膚に余裕がないため5mmぐらいが限度になるよ。Digitolateral flapで解除できる瘢痕拘縮には限度があるから、瘢痕拘縮が高度の場合は、本皮弁を複数挟み込むか、別の術式を選択したほうがいいよ。
   

 

 

Step by Step

■ Step 1

  • 指掌側の幅広の拘縮ラインを切離し、それにより生じた欠損に側正中部に作図したU字皮弁(digitolateral flap)を挟み込む計画とした。遠位はz-plastyでの拘縮解除の方針とした。
  • U字皮弁の幅はピンチテスト(皮膚をつまんで縫縮できる幅か判断するテスト)で決定する。

指導医
この症例では拘縮ラインを分断する線をわざと斜めにしたよ。皮弁の回転角度を少なくした方が、皮弁移動時の皮膚のヨレが少なく、皮弁の血行も安定するからね。
   

 

 

■ Step 2 

  • 瘢痕拘縮ラインを分断すると4mmほどの欠損が生じた。

神経血管束を損傷しないように注意をする。  

 

 

■ Step 3

  • 皮弁を皮下脂肪をつけて挙上し、約90°回転して欠損に移植する。

皮弁先端の血流に最大限の注意を払う。皮弁先端は無鉤鑷子などで把持しない。皮下脂肪を把持するのは可。

 

 

■ Step 4

  • 5−0または6−0ナイロンで縫合する。

 

 

■ Step 5 

  • ゲンタシン軟膏、ガーゼ、布テープでドレッシングをする。
  • 軽く圧迫するとよい。一方で指先はガーゼで覆わず、血流を確認できるようにする。
  • 指背側からアルフェンスシーネで伸展位固定する。

術後は再び屈曲方向の瘢痕拘縮をきたしやすいため、キズを一次治癒させること(二次治癒させないこと)、シーネを用いて伸展位管理すること、ステロイドテープを抜糸後早めに貼付することがコツである。  

 

 

  ■ 術後

  • 当日は、患部の安静、冷却、挙上を徹底する。
  • 術翌日に、ドレッシングをはずして、血腫がないか、皮弁血流に問題ないかを確認する。
  • 翌日から洗浄処置を開始する。出血やしみだしがなければガーゼドレッシングは最小限でよい。
  • 縫合創が安定するまで(術後1〜2週、抜糸まで)は、指の運動は制限する。1日数回の軽い自動運動以外はアルフェンスシーネで伸展位管理する。
  • 抜糸後、日中は患指を自由に使うことを許可する。夜間は手術痕上にエクラープラスター(ステロイドテープ)を貼付し、アルフェンスシーネで伸展位で管理する。
  • エクラープラスターは症例によってきずあとの赤みや固さを指標にして貼付期間を調整する。夜間のアルフェンスシーネは術後3ヶ月は継続する。

 

 

■ 処方箋

  • ケフラールカプセル(250mg) 1回1錠 1日3回 毎食後  3日分
  • ロキソニン錠(60mg) 1回1錠 1日3回 毎食後 3日分
  • ムコスタ錠(100mg) 1回1錠 1日3回 毎食後 3日分
  • ゲンタシン軟膏 10g 1本

 

  • エクラープラスター 5枚  1日1回 就寝前  ハサミで適当な大きさに切って指に貼付

エクラープラスター

 

■ コスト

単なる拘縮に止まらず運動制限を伴う場合に算定する。

本手術には、Z形成術のみによるもの及び植皮術を要するものが含まれる。

 

 

  ■ 長期経過

  • 瘢痕拘縮は解除されている。
  • 局所皮弁による再建のため、整容的にも満足のいく結果となっている。

 

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