形成外科 手外科 皮膚科

【Step by Step 手術手技】指の粘液嚢腫

Key Point Summary

 

指粘液嚢腫はDIP関節の変形性関節症に続発する。

背側関節包から発生した茎が嚢腫に連続しており、DIP関節から発生したガングリオンと考えられている。

治療: 嚢腫の切除ではなく、嚢腫茎の処理(切除して関節内の滑膜を切除すること)である。

術後はDIP関節をシーネで伸展位固定し、関節包が瘢痕で被覆されるのを待つ。

 

 

 

 

Q & A

レジデント
指の粘液嚢腫って原因はなんですか?

長らく原因がよくわかっていなくて、治療法も変遷してきた歴史があるんだ。① 皮膚の変性が原因とするMyxomatous typeと、② DIP関節からのガングリオンとするGanglion typeの2つの説があるよ。現在は②が原因とする意見が主流だよ。
指導医

レジデント
粘液嚢腫を切除して、切除によって生じた欠損を、指背に作図した大きな回転皮弁で閉鎖する手術を教科書で読みました。

そう、昔はその手術が一般的だったんだ。今は、嚢腫の茎を処理(切除して関節内の滑膜を切除すること)が重要で、嚢腫自体の切除は必要ないと言われているよ。茎を処理すれば、嚢腫は萎んだ風船と同じで、自然に消失するよ。
指導医
   

昔の教科書では、嚢腫を切除して指背に作図した大きな回転皮弁で欠損を被覆する治療法が紹介されている。

 

 

Outline

【病因】

  • ① 皮膚の変性が原因とするMyxomatous typeと、② DIP関節からのガングリオンとするGanglion typeの2つの説がある。
  • 現在は②が原因とする意見が主流である。
  • 指粘液嚢腫はDIP関節の変形性関節症に続発する。背側関節包から発生した茎が嚢腫に連続しており、DIP関節から発生したガングリオンと考えられている。
  • DIP関節内の滑膜炎が原因で関節包の弱い部分(通常は背側関節包)に亀裂が生じ、内圧の上昇に耐えかねて嚢腫が飛び出る。そのため嚢腫の中身は関節液(ゼリー)である。関節包から起ち上がる細い部分は茎(root)と呼ばれ、check valve構造(関節内→嚢腫は流れる、嚢腫→関節内は流れない)をしていると言われている。

正常な関節(左)と変形性関節症(右)

Check valve構造 関節内の圧があがると関節液が嚢腫に流れるが、反対方向には戻れない。

 

お餅がプクーッと膨らんだ状態と同じだね。
指導医

 

 

【治療法の変遷】

  • 1970年代までは嚢腫穿刺&ステロイド注射、嚢腫切除のみで、再発率が高かった。
  • 1970年代以降、骨棘切除が推奨された。
  • 近年は、骨棘切除は不要とする報告もあり、関節包や滑膜の切除の有用性が注目されている。
 

 

 

Step by Step

 

DIP関節のやや遠位に嚢腫を認める。嚢腫の位置や大きさはまちまちであるが、1cmを超えることは稀である。

嚢腫が爪母を圧迫して爪変形(陥凹や亀裂)を生じることもある。

 

 

■ Step 1 

  • 指ブロック注射をする。
  • 1%キシロカイン10cc または 0.75%アナペイン10ccを注射する。
  • 滅菌手袋で指タニケットをする。

 

 

■ Step 2

  • T字型 or L字型の皮膚切開線を作図しする。
  • 皮膚切開線がDIP関節の皮線側正中線に合わせるようにする。

以前は終末伸筋腱を挟んだ対側に隠れた嚢腫(occult cyst)も確認して切除することが推奨されていたが、現在は嚢腫側のみの片側アプローチが推奨されている。

 

 

 

 

■ Step 3

  • 関節包上の層で皮弁上に挙上すると、背側に終末伸筋腱掌側に側副靱帯を確認できる。
  • その間が背側関節包と呼ばれる。構造上弱い部分になる。この部分から嚢腫側に起ち上がる茎(root)が確認できる。
  • 皮弁挙上の際に茎を切離するとゼリーが漏出する。

嚢腫が萎んでいる症例では茎が確認しづらいことがある。その場合は、皮弁の裏面から嚢腫方向にメスで孔をあけてドレナージするようにしている。

 

 

 

 

 

■ Step 4

  • DIP関節を他動的に屈曲すると関節内のゼリーが漏出する。
  • ゼリーが出てくる孔をメスで四角に切開し、その深部にある滑膜を先の細いモスキートで可及的に切除する。

DIPを他動的に屈曲すると、ゼリー(青)が漏出するため、関節包から起ち上がる茎がわかりやすい。

 

関節内の滑膜(ピンク)を可及的に切除する。タニケット駆血下では滑膜は薄ピンク色にみえる。

 

 

■ Step 5

  • 5−0ナイロンで皮膚縫合する。

嚢腫は切除せず、茎を処理することで、まるで萎んだ風船のようになる。

 

 

  ■ Step 6

  • ゲンタシン軟膏を貼付し、ガーゼ、布テープで軽く圧迫固定する。

 

  ■ 術後

  • 当日は、安静、患部冷却、患手挙上を徹底する。
  • 術翌日から自宅処置(シャワー or 水道水洗浄、ゲンタシン軟膏、ガーゼを薄めに貼付、テープ固定)を開始する。
  • 指背側からアルフェンスシーネ外固定する(DIP関節伸展位、PIP関節はフリーで動かせるように)。
  • 抜糸は術後2週間が目安である。

術後2週間は、アルフェンスシーネでDIP関節の動きを制限することが重要である。その間に開放した関節包が線維性被膜で覆われる。

術後2週間経過したら、日中は制限なしで患指の使用を許可し、夜間のみアルフェンスシーネで伸展位固定をさらに2週間継続する。

介護職など指先に負荷がかかる場合はコーバンテープサージカルテープをDIP周囲にまいて仕事をするとよい。また指用のゴム製サポーターも有用である。

 

 

コーバンテープ 3Mヘルスケア

コーバンテープ(=自着性包帯)をDIP関節周囲に巻くと、サポーターと同様の役目を果たすよ。コーバンテープは水につけることができないため、頻回に手洗いをする環境では、サージカルテープの方が使い勝手がいいよ。
指導医

 

指関節まもりん サンメディカル

エラストマーを素材にした指保護用のサポーターだよ。水につけても大丈夫。指先がでているのがポイント。
指導医

 

 

 

■ 処方箋

  • ケフラールカプセル(250mg) 1回1錠 1日3回 毎食後  5日分
  • ロキソニン錠(60mg) 1回1錠 1日3回 毎食後 5日分
  • ムコスタ錠(100mg) 1回1錠 1日3回 毎食後 5日分
  • ゲンタシン軟膏 10g 1本

 

■ コスト

上記のいずれかで請求することが多いよ。粘液嚢腫は術式が変遷してきたこともあり、保険審査も地域や審査員によって異なるのが現状。詳記を記載したほうが無難だね。
指導医

 

 

■ 長期経過

嚢腫を切除せずとも、嚢腫は自然に消失している。爪変形を有する場合は、嚢腫が消失して1〜2ヶ月すると平らな爪が生えてくる。

 

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