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【診療Tips】瘢痕拘縮と関節拘縮の違い

Key Point Summary

瘢痕拘縮 = 瘢痕が原因で関節可動域制限を生じること。

関節拘縮 = 関節が原因で関節可動域制限を生じること。

瘢痕拘縮が重度だと、それが原因で関節拘縮を合併することがある。

瘢痕拘縮の本質は皮膚の不足である。

瘢痕拘縮解除のみで関節可動域の改善が得られるのか、術前に見極める必要がある。

 

 

Q & A

 

レジデント
先日、指のPIP関節上の瘢痕拘縮の手術をしました。瘢痕拘縮をリリースしてもPIP関節は完全には伸展できるようになりませんでした…

それは瘢痕拘縮だけじゃなくて、関節拘縮も合併してたんじゃないかな?重度の瘢痕拘縮には関節拘縮を合併することがあるよ。
指導医

レジデント
瘢痕拘縮に関節拘縮を合併しているかってどうやって判断するんですか?

例えば、PIP関節の掌側に瘢痕拘縮があるとする。その隣接関節(DIP関節、MP関節)を屈曲位にしてあげると掌側の皮膚はゆるむよね?その状態でPIP関節が伸びるか確認するといいよ。PIP関節が伸びれば関節拘縮はないし、伸びなければ関節拘縮の合併を疑うよ。
指導医



 

Outline

【定義】

  • 瘢痕拘縮は、"瘢痕が原因となり関節可動域制限を生じること"と定義される。
  • 関節自体が拘縮する関節拘縮とは区別される。
  • 瘢痕拘縮の本質は皮膚の不足である。そのため瘢痕拘縮を解除すると皮膚欠損が生じる。瘢痕拘縮形成術は、この欠損に皮膚移植(植皮 or 皮弁)をすることである。

瘢痕拘縮の本質は皮膚の不足である。拘縮ラインを分断すると皮膚欠損が生じるのがわかる。

 

 

 

【拘縮の原因】

  • 拘縮の原因は、関節そのものに原因がある場合(関節要素)関節外に原因がある場合(関節外要素)に大別できる。
  • 関節要素は関節の構成組織である関節包、側副靱帯、関節面などが原因となる。
  • 関節外要素は、皮膚瘢痕、腱の癒着、筋の拘縮などが挙げられる。
  • 関節要素と関節外要素を併せ持つような病態があり、皮膚から関節までが深達性に損傷された重度外傷例や瘢痕拘縮が重度な故に二次的に関節拘縮をきたした例などが該当する。

指導医
拘縮の原因が"皮膚のみ"だと思い込んで手術したけど、実は関節拘縮を合併していて、思ったより関節可動域の改善が得られなかったという事態は避けたいよね。

拘縮の原因は、関節要素と関節外要素に大別される。瘢痕拘縮は、関節外要素が原因で生じる拘縮ということになる。

 

 

 

【瘢痕拘縮と関節拘縮の見分け方】

  • 関節拘縮と瘢痕拘縮の鑑別には2つのチェック項目がある。
  • 1つ目は、瘢痕拘縮では皮膚を他動伸展すると皮膚が蒼白になる。
  • 2つ目は、瘢痕が緩むような肢位にして、評価したい関節の自動・他動関節可動域を評価する。例えば、下の症例ようにPIP関節の拘縮の原因が瘢痕拘縮である場合、MP関節を屈曲位にすると掌側の皮膚がゆるみ、PIP関節を容易に伸展できるようになる。一方、PIP関節の関節拘縮では皮膚を緩めたところでPIP関節は自動・他動いずれでも伸展できない。

PIP関節の瘢痕拘縮:患指を他動伸展すると皮膚が蒼白になるがPIP関節は十分に伸展可能である。

 

PIP関節の関節拘縮:患指を他動伸展しても伸展不可能である。

 



 

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