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【救急外来】指輪が抜けない!応急処置とリングカッターの使用方法

はじめに

  • 外傷やむくみなどで指輪が抜けなくなるケースは、救急外来でよく見られます。
  • 放置すると、指先の血流が途絶え、壊死や感覚障害へ進展する危険があります。
  • そんなときに活躍するのが リングカッター です。
    (例:指の感染症による腫脹で指輪が抜けなくなった症例など)

指の感染症により指輪が抜けなくなった

 

 

 

なぜ指輪が抜けなくなるのか

  • 指輪が抜けない原因には、以下のようなものがあります。
原因詳細
外傷による腫脹打撲や骨折後に指が腫れて抜けない
感染や炎症蜂窩織炎などで急激にむくむ
アレルギー反応金属アレルギーなどで腫脹
妊娠や全身性浮腫体液貯留による腫れ
長期間外さなかった皮膚が指輪に食い込み、物理的に外せない

 

応急処置の流れ

1. 潤滑油を使う方法

  • 潤滑剤を使用
    石鹸水オリーブオイル、医療用潤滑剤などを指輪と皮膚の間に塗布し、軽く回転させながら抜く。

 

2. テープや糸を使う方法

  • 指に糸や細い包帯を巻きつけて腫れを圧縮し、反対側から指輪を押し出すストリング法が有名です。
  • ただし、強い痛みや血流障害がある場合は無理をしないことが重要です。

 

3. 緊急時はリングカッターで切断

  • 潤滑剤や糸法で外せない場合、もしくは指先が青紫色になり血流障害が疑われる場合は、すぐにリングカッターを使用します。

リングカッター

リングカッターの説明書

 

 

リングカッターとは?

  • リングカッターは、金属製の指輪を安全に切断するための医療器具です。
  • ERや手術室で常備されており、特に整形外科や形成外科領域で活躍します。

特徴

  • 手動式と電動式がある

  • 先端にガードが付いており、皮膚を傷つけにくい設計

  • チタン製やタングステン製など硬い素材は切断困難なこともある

 

STEP by STEP

STEP 1: ポジショニング

  • 手を心臓より高く挙上し1–2分、可能ならアイシングで軽度の浮腫を減らす。

STEP 2: 指保護

  • リングと皮膚の間にリングガード(薄い金属板)を差し込む。入らない時はワセリンを少量、糸/デンタルフロスで皮膚を軽く牽引して隙間を作る。

リングカッターで指輪をカット

 

STEP 3: カットする

  • ダイヤル/ハンドルゆっくり一定速度で回す。
  • 強く押し付けず、切粉が出たら一旦停止→位置微調整。
  • 発熱対策:温感が出たら冷却(湿ガーゼ/生食滴下)、10–15秒休止。
  • リングが「抜け目」になるまで切り進める。皮膚側に食い込まないか都度確認。

ダイヤル(ハンドル)をゆっくり一定速度でまわす

 

STEP 4: 180°反対側もカット(必要時)

  • ペンチなどを利用しながらC字状の隙間を広げる。
  • リングが厚く開きにくい場合は、180°反対側もカットする。

 

STEP 5: 取り外し

  • リングが十分開いたら回転させながら優しく外す。
  • 無理に引っ張らず、皮膚の摩擦を避けるようにする。

リングが十分開いたら回転させながら優しく外す

 

STEP 6: 処置後の確認

  • 指先の循環・感覚を再評価

  • 必要に応じて軽い圧迫包帯・外用処置を行う

  • 熱傷や擦過がある場合は抗菌外用薬を塗布

 

注意が必要な指輪

  • 近年は、硬度の高い金属を使用した指輪が増えています。
  • これらは通常のリングカッターでは切れない場合があり、専用工具(ダイヤモンドカッターやボルトカッター)が必要です。
素材特徴対応
金・銀・プラチナ比較的やわらかい通常のリングカッターでOK
ステンレスやや硬い手動 or 電動カッター
チタン非常に硬い電動でも困難、専門工具が必要
タングステン極めて硬い粉砕して除去する

 

指輪を切断した後の対応

  • 指輪をカットした後は、修理可能な専門業者が存在します。
  • 患者に情報を提供すると親切です(例:宝飾店や金属加工業者)。

 

まとめ

  • 外傷や感染などで指輪が抜けなくなった場合は、一刻も早く除去することが最優先です。
  • その際、リングカッターの正しい使用手順を理解しておくことで、安全かつ迅速に処置が可能になります。
救急外来に常備しておくと安心な製品を紹介するよ。
指導医

 

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小野真平(形成外科医)/ Shimpei Ono(Plastic Surgeon) 

日本医科大学形成外科学教室 准教授/医師。Advanced Medical Imaging and Engineering Laboratoryを主宰。 手足の形成外科、マイクロサージャリー、再建外科を専門とし、臨床・研究・教育に従事。可動式義指の開発、VR教育、3D超音波や医用画像工学の応用、PROsを重視した研究を展開。 美術解剖学や医療イラストレーションにも造詣があり、芸術と医学の融合をテーマに講演・執筆。教育活動では学生・研修医指導のほか、東南アジア医学研究会(Ajiken)部長として国際医療交流・災害医療にも取り組む。

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