Key Point Summary
真皮の血流を最大限にすることで創治癒は促進する。
創縁の真皮に張力がかかると術後瘢痕は異常瘢痕(肥厚性瘢痕やケロイド)が生じやすくなる。
真皮縫合時の創縁の真皮に緊張がかからないようにするために、深部の浅筋膜や深筋膜レベルで層を閉じる方向に寄せ、創縁の真皮にかかる緊張を最小減にするのがポイントである。
Q & A
レジデント
"真皮縫合"って、真皮にかける糸はできるだけたくさんいれたほうがいいのですか?
結論からいうと、真皮にかける糸は最小減、つまり、少ない方がいいよ。大事なのは、真皮縫合をする前に、それよりも下の層(浅筋膜や深筋膜)で寄せて、真皮縫合をする時には、創縁(真皮)に緊張がかからないような状況が作られていることが大事だね。
指導医
レジデント
真皮に緊張をかけて縫合するとどうなるんですか?
部位にもよるけど、異常瘢痕(ケロイド・肥厚性瘢痕)のリスクが増すよ。
指導医
レジデント
きれいなきずあとにするためには真皮縫合よりも、その下の層の縫合が大事なんですね!
その通り!
指導医
Outline
【真皮縫合】
ピンクの丸の位置が左右の創縁でずれないようにするのがポイントだよ。
指導医
Step by Step
■ Step 1
- 炎症性粉瘤を切除後の背部の皮膚欠損を縫合する。
■ Step 2
- 浅筋膜(or 深筋膜)を同定する。
■ Step 3
- 浅筋膜を3−0バイクリルで縫縮する。
- 真皮よりも深い層(浅筋膜 or 深筋膜)で組織を寄せることで創縁は自然と盛り上がり、やや外反する。
単純に縫縮するだけでは不十分な大きな欠損では、浅筋膜 or 深筋膜の下を十分に剥離してから縫縮するとよいよ。
指導医
■ Step 4
- 4−0PDSで真皮縫合する。
鑷子で創縁を把持して挫滅させないように注意を払う。創縁を外反させるために、有鉤摂子の鉤でひっかけるか、スキンフックを使用するとよい。
真皮縫合の結紮をする際に、力いっぱい縫合している先生がいるけど、それは創傷治癒を阻害するだけだよ。創縁が密着する最小減の力で縫合するのがいいね。
指導医
■ Step 5
- 真皮縫合直後に創縁が密着しているのが理想的な縫合である。
- 表層縫合は極端な話、不要である。
真皮縫合の段階で創縁がピッタリあっていれば、表層は糸で縫合しても、ステリストリップ(ファスナート)、ダーマボンドでもなんでもよいよ。
指導医
若干の創縁の不正がある場合は、表層縫合で微調整するよ。糸による縫合は術翌日からシャワー洗浄処置がやりたやすいというメリットがあるよ。
指導医
表層縫合で、創縁同士を力をかけて寄せないといないとすると、筋膜縫合、真皮縫合がうまくできていない可能性が高いよ。
指導医
■ Step 6
- 6−0ナイロンで表層縫合する。
■ Step 7
- 表層縫合後。
- ステリストリップを併用すると、創縁に不要な緊張がかかった時に、減弱することができる。
■ Step 8
- 浅筋膜を3−0バイクリルで縫縮する。
- 真皮よりも深い層(浅筋膜 or 深筋膜)で組織を寄せることで創縁は自然と盛り上がり、やや外反する。
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