Key Point Summary
皮膚マスト細胞の脱顆粒がおこり、ヒスタミンが放出され、紅斑、膨疹、痒みが生じる。
治療の第1選択は抗ヒスタミン薬の投与、ダメならステロイドの点滴静注も考慮する。
Q & A
レジデント
蕁麻疹にステロイド外用薬は効果ありますか?
蕁麻疹診療ガイドライン2018では、「ステロイド外用薬は蕁麻疹の症状を抑制するための治療法として推奨されない」と記載されているよ。一方で「局所の冷却、石炭酸亜鉛華リニメント、抗ヒスタミン薬含有軟膏(レスタミン)、クロタミトン軟膏(オイラックス)の外用などが痒みの軽減に役立つことがある」としているよ。蕁麻疹にたいする外用薬は、あまり推奨されていないね。
指導医
レジデント
寒冷蕁麻疹の時も冷却していいのでしょうか?
するどいね。寒冷蕁麻疹では冷却で新たな皮疹を誘発するから例外的に避けた方がいいね。
指導医
Outline
【病態】
- なんらかの原因により皮膚マスト細胞(肥満細胞)の脱顆粒が起こり、ヒスタミンが放出され、小血管拡張による紅斑、血管透過性亢進による膨疹、知覚神経刺激によるかゆみなどが生じる。
- 皮疹は24時間以内に消失する(一過性)。
【原因】
- ①直接的誘因: 外来抗原(ホコリなど)、物理的刺激(擦れ)、発汗、食物、薬剤、運動
- ②背景因子:抗原感作、感染、疲労・ストレス、薬剤、基礎疾患)
- 一方で、聴取しても原因不明なことも多い。
指導医
1つの因子だけでなく、複数の因子が組み合わさって初めて生じるよ。例えば、「疲れているとき」に、「生サバ」を食べて、「飲酒」して、「入浴」すると蕁麻疹がでたりするよ。
【緊急受診を要する場合】
- 蕁麻疹はERに問い合わせがくる頻度の高い疾患の1つである。緊急受診を要するキーワードを紹介する。
① 呼吸困難、喘鳴
② 咽頭・喉頭の浮腫 → 嚥下障害、嗄声、咳
③ 顔面(特に口唇・眼瞼)の浮腫
上記のキーワードを確認したらすぐにER受診、場合によっては救急要請を指示しよう。
指導医
【治療方針】
- 原因がわかれば原因の除去、抗ヒスタミン薬の投与が治療の基本となる。
【呼吸困難 and/or 血圧低下を認める場合】→基本的に入院管理
① 気道確保、O2吸入
② 静脈路の確保と輸液
③ アドレナリン:ボスミン® 0.3~0.5mg 皮下注射
④ 抗ヒスタミン薬の点滴静注: ポララミン1A+生食100ml 点滴静注
⑤ステロイドの点滴静注: ソル・コーテフ100mg+生食100ml 点滴静注
ステロイド注射は即効性はないよ。
指導医
【呼吸と循環が安定している場合】→帰宅可
- 上記の④抗ヒスタミン薬の点滴静注(ポララミン1A+生食100ml )をする。
- それでも効果が乏しければ、⑤ステロイドの点滴静注(ソル・コーテフ100mg+生食100ml)を追加する。
ERを受診する多くの蕁麻疹患者さんはこの治療で改善するよ。後述する内服薬を処方して、日中の皮膚科外来受診を指示しよう。
指導医
ちなみにポララミンのみで痒みがとれない場合、H2受容体拮抗薬(ガスター)の点滴静注も効果あるよ。H2のHはヒスタミンで、ガスターにもヒスタミンを抑える効果があるよ。あと、グリチルリチン製剤(強力ネオミノファーゲンシー:通称、強ミノ)も試してみる価値はあるよ。
指導医
【帰宅時の処方箋】
- アレジオン(20mg) 1回1錠 1日1回 寝る前(ERであれば通常1〜2日分)
ERでは、ポララミン、ザイザル、アレロック、セレスタミンなどが置いてあることが多いよ。蕁麻疹は、一度発症すると当面は繰り返し症状がでやすいので、皮膚科外来への受診を指示するとよいよ。
指導医