Key Point Summary
爪下異物では、異物の端が見えている場合を除いて、指ブロック下で処置をおこなう。 指先への局所麻酔は激痛なので、指ブロックを選択したほうがよい。 摘出には異物鑷子が便利。
Q & A
Outline
【解剖】
- 通常、異物は爪甲と爪床の間に存在する。
【診断】
- 木片や棘が原因のことが多い。
- 視診と病歴聴取で診断がつき、特別な検査は要さないことが多い。
病歴を詳しく聴取するのが重要。何が刺さったかが推定できる。
爪下血腫を疑う場合は末節骨骨折の有無をレントゲンで確認する。
明らかな外傷歴がない場合の爪黒色班は、悪性黒色腫や爪黒色線条(=爪のホクロ)との鑑別を要する。鑑別にはダーモスコピーが有用なため、自分で診断が難しければ皮膚科に紹介する。
ダームライトDL-100は、非接触のダーモスコープである。小型、軽量、比較的安価で初心者でも使いやすい。ダームライトの上位機種では、デジカメやiphoneと接続して撮影(写真&動画)が可能である。
Step by Step
■ Step 1
- 異物鑷子を準備する。
- 異物の端を鑷子で把持できれば無麻酔で引き抜いてもよいが、通常は痛み止め(=指ブロック)を併用したほうが処置がしやすく、患者にも優しい。
■ Step 2
- 1%キシロカイン10ccで指ブロック注射する(患部への局所麻酔注射は激痛のため、指の基部にブロック注射をする)。
- 麻酔がきくまで3分待つ(感染を併発しているなど、炎症が強いときくまでに時間がかかる)。
■ Step 3
- 異物の端が把持できない場合は、下写真のように爪の一部を最小限でカットする。
■ Step 4
- 異物鑷子で把持する。
■ Step 5
- 把持した異物をゆっくりと引き抜く。
刺さってから数日以上経過した症例では、木片がくずれやすく、爪下に残ってしまう場合がある。その場合は、爪甲除去範囲を広げて異物を確実に除去する。指タニケットも併用したほうが無血野で処置がしやすい。
■ Step 6
- 生食で洗浄する。
■ Step 7
- ゲンタシン軟膏を塗布し、ガーゼをあてて、布テープで固定する。
■ Step 8
- 当日は、安静、患部冷却、患手挙上とする。
- 翌日〜自宅処置(シャワー洗浄、軟膏、ガーゼを1日1回)を開始する。通常は2〜3日で浸出はなくなり上皮化する。
- 破傷風トキソイドの接種を検討する。
通常は再診不要である。ただし、感染徴候(発赤、熱感、腫脹、疼痛)認めたら、早めに再診するように説明しておく。
■ 処方箋
- ケフラールカプセル(250mg) 1回1錠 1日3回 毎食後 3日分
- ロキソニン錠(60mg) 1回1錠 1日3回 毎食後 3日分
- ムコスタ錠(100mg) 1回1錠 1日3回 毎食後 3日分
- ゲンタシン軟膏 10g 1本
■ コスト
- 創傷処置(K001)
手掌・足底異物摘出術(K097)は、異物が深い位置にあり、麻酔や切開を要するものが対象となる。爪下異物は通常、創傷処置で請求する。
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