Key Point Summary
小児期に感染した水痘・帯状疱疹ウイルスがストレスや疲れ(免疫力の低下)を契機にして再活性化することにより発症する。 ≧50歳に多く発症する。高齢者では再発を繰り返すこともある。 全身どこにでも発症する可能性あり。小さな紅斑と水疱が片側 且つ 帯状に出現する。ピリピリ痛い。 治療はバルトレックスの内服。腎機能注意。 早期に診断、治療を開始することで、後遺症である帯状疱疹後神経痛を予防することが重要である。
Q & A
Outline
【概要】
- 小児期に感染した水痘・帯状疱疹ウイルス(ヘルペスウイルス3型)の再活性化により生じる(HSV1型: 口唇ヘルペスや単純ヘルペス角膜炎、HSV2型: 性器ヘルペス)。
- 小児期に初感染したものを水痘(すいとう=みずぼうそう)といい、抗体陽性率は3〜4歳頃から高くなり、10歳時でほぼ100%に達する。
- 帯状疱疹は50歳以上に多く発症する。
- 神経に潜んでいたウイルスが、宿主の免疫が下がったことにより暴れ出す。
- 三叉神経や肋間神経などの知覚神経に沿った帯状に、且つ、片側性に痛みを伴う皮疹(紅斑、丘疹、水疱)が集族性に出現し、病勢が収まると痂皮化する。
C3領域のデルマトームに発生した帯状疱疹。患者は湿布かぶれが原因だと思い込んでいた。
■ 診断
- 知覚神経の走行に沿った帯状、片側の、疼痛を伴った皮疹(特に水疱)が特徴的である。
- 発症のリスクファクター(VZV感染歴、年齢>50歳、免疫抑制状態、精神的ストレス、外傷)がないかを聴取する。
- 2018年〜デルマクイックVZV(保険適応+)により外来での迅速診断が可能となった(精度 96.2%)。
抗ウイルス薬(バルトレックス)の早期投与開始が、重症化や後遺症予防の観点から重要であり、そのためには早期診断が求められる。
明らかな水疱がなく診断に迷う場合、患側の所属リンパ節腫脹を診断の一助とする。
■ 重症例の判断
- ERで帯状疱疹の患者を診察した際に、大切なのは重症例や合併症例を見逃さないことである→重症例や合併症例は入院・点滴加療が必要になる。
- 重症例=支配神経領域の70%以上に皮疹がある and/or 汎発疹がある。
- 頭頚部の帯状疱疹で眼科合併症(角膜炎、結膜炎、ぶどう膜炎、網膜炎)、耳鼻科合併症(耳鳴り、めまい、顔面神経麻痺→ハント症候群と呼ぶ)がないか確認し、あれば専門家に早期に(できるだけ当日)コンサルトする。
重症例が入院する場合は、易感染宿主との同室は避ける(個室管理までは必要ない)。
■ 後遺症
- 帯状疱疹後の疼痛が3ヶ月以上継続する場合は、帯状疱疹後神経痛(PHN: postherpetic neuralgia)と定義される。
→皮膚科、ペインクリニックに紹介する。リリカ、ノイロトロピン、トリプタノール、トラムセットなどが処方されることが多い。
■ 自宅での注意点
- ストレスの原因がわかっていればそれを排除し、安静にする。
- 水痘未罹患小児との接触を避ける(タオルなどを共用しない)。
■ 処方箋
【軽症〜中等症例】 →帰宅可
- バルトレックス(500mg) 1回2錠 1日3回 毎食後 7日分
- カロナール(200mg) 1回2錠 1日3回 毎食後 7日分
- ゲンタシン軟膏10g 1本
バルトレックスは腎排泄なので、eGFRで投与量を調節する。バルトレックスは細粒もある。
バルトレックス錠500は1錠の薬価が350〜360円程度なので、1日6T×7日分処方するとそこそこ高額になるので、事前に患者に伝えておくと良い。
アラセナ-A軟膏3%という抗ウイルス作用を有する軟膏があるが、バルトレックスと同時に処方すると保険審査で査定されることがある(地域による)。
■ 処方箋
【重症例】 →入院・点滴
- ゾビラックス注 1回5mg/kg 1日3回 1時間以上かけて点滴静注 7日間
バルトレックス錠と同様にeGFRによる投与量調整が必要である。
■ エビデンス
- 抗ウイルス薬は皮疹出現後72時間以内の投与が望ましい。
Dworkin RH et al:Recommendations for the management of herpes zoster. Clin Infect Dis 44:S1-26,2007
- 帯状疱疹に対して、抗ウイルス薬は7日間投与する。
Beutner KR et al:Valaciclovir compared with acyclovir for improved therapy for herpes zoster in immunocompetent adults.Antimicrob Agents Chemother 39:1546-1553,1995