整形外科

ぎっくり腰(急性腰痛症)

# 急性腰痛症(発症から1ヶ月以内)
・ERにおける初期対応を想定しているため亜急性〜慢性の腰痛症(有症期間が≧1ヶ月)は除外している
・急性腰痛症の典型的なエピソードは「30代の健康な男性が重い荷物を持ち上げようとした瞬間、腰にイナズマのような激痛が走って、痛みで歩くのもままならない」である
・その突然の激しい痛みから欧米では「魔女の一撃」と呼ばれる
・腰部に何らかの負担がかかったことにより、腰椎周囲の筋肉や椎間関節に捻挫がおこることが原因とされる
・通常は1〜2週間で自然に回復する
・上記の期間で回復しない、下半身に痛みやしびれといった症状+の場合は、神経症状を伴う腰椎疾患(腰椎椎間板ヘルニア、腰部脊柱管狭窄症、脊椎すべり症など)が隠れていることがあるので整形外科の専門外来を紹介する

■ 診断 
・赤旗徴候(Red Flags)が該当しないかチェックする。Red Flags(−)で重大な病変が潜んでいる確率は0.04%。
・腰痛が主訴で外傷歴があれば画像評価をする。外傷歴がない場合、Red Flagsの有無をチェックする。有なら「赤信号」である。無の場合、神経根症状(下肢のしびれ、麻痺など)をチェックする。神経根症状+なら神経根症状を疑う腰痛(黄色信号)となる。神経根症状−なら青信号である。
・赤・黄信号は整形外科にコンサルト、青信号は帰宅。急性腰痛症は青信号に属し、自然回復することが多い。
・ぎっくり腰が疑われる場合は、画像の必要はない。

日本整形外科学会,日本腰痛学会監修.腰痛診療ガイドライン2012.

■ 処置 
・ボルタレン坐薬(25mg)1〜2個挿肛
or
・アセリオ静脈液1000mgバック 30分で点滴投与
or
・ソセゴン15mg+アタラックスP25mg+生食100ml 30分で点滴投与
★痛みがある程度改善したら帰宅とする。痛みが完全にとれることはまずない。

■ 自宅での注意点 
・ベッド上で安静にし過ぎると腰痛の回復が遅れるため、腰椎コルセットや湿布などを併用して痛みのない範囲で普段どおりの日常生活を推奨する。
・温めたり冷やしたりはより楽になるほうを選択すればよいが、通常急性期は冷やした方がよい。
・ぎっくり腰では仰向けで膝を伸ばして寝るのが困難なため、膝の下にクッションなどを挟んで膝を90°に曲げた状態でえ寝ると良い。横向き、抱き枕もよい。

■ 処方箋
・セレコックス(100mg) 1回1錠 1日2回 毎食後  7日分
・ネキシウムカプセル(20mg) 1回1カプセル 1日1回 朝食後 7日分
・ミオナール(50mg) 1回1錠 1日3回 毎食後  7日分

・ボルタレン坐薬(25mg) 疼痛時 

・ロキソニンNaテープ100mg 1袋7枚 

・腰椎コルセット

★セレコックスはCOX-2選択的阻害薬であり、ロキソニンより胃にやさしい。
★坐薬は効くまでに時間がかかるが、長時間作用するので眠前によい。
★ミオナールは急性腰痛症の時に保険適応があるが、慢性では×。

腰椎コルセット

■ エビデンス
● 急性腰痛症に対してNSAIDsは有効である。
日本整形外科学会,他 監:腰痛診療ガイドライン2019(改訂第2版).南江堂,2019

■ コスト
腰部又は胸部固定帯固定(J119-2)
腰部、胸部又は頚部固定帯加算(J200)
★両方同時に請求できる。35点+170点。

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