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【診療Tips】手術同意書に必要な年齢と法律知識まとめ

レジデント
前日、外来に18歳の男性が陥入爪の手術を希望して受診しました。数年前に成年年齢が18歳に引き下げられましたが、手術同意書を本人単独で取得できるのは何歳からなのでしょうか?

 

はじめに

  • 手術や輸血などの医療行為を行う際には、説明と同意(インフォームド・コンセント)が不可欠です。
    しかし、患者本人が何歳から単独で手術同意書に署名できるのかは、民法改正(成年年齢18歳への引き下げ)や各病院の規定により複雑になっています。
  • ここでは、法律上の年齢制限と、実際の医療現場での運用の違いを整理し、関連する他の医療行為の年齢制限もまとめました。

手術同意書

 

1. 法律上の考え方:18歳で成人

  • 2022年4月1日より、成年年齢が18歳に引き下げられました。

  • 18歳以上は法的に「成人」とされ、単独で契約・同意が可能です。

  • よって、18歳以上は法律上は本人のみで手術同意書に署名可能です。

根拠:民法第4条
「年齢18歳をもって、成年とする。」

 

2. 医療現場での運用:多くの病院では「20歳以上」

年齢 法律上の扱い 多くの病院での実務
20歳以上 本人のみで有効 本人署名のみで可
18〜19歳 本人のみで有効 本人+親権者の署名を必須または推奨
17歳以下 親権者署名が必須 本人署名は補助的
今後、18歳以上にかわっていく可能性が高いけど、時間がかかるだろうね。
指導医

 

なぜ20歳未満では親権者署名を求めるのか?

  1. 医療訴訟リスク回避

    • 18〜19歳は法的に成人でも、社会的には未成熟とされることが多く、トラブル防止のため親権者署名を求める。

  2. 医療安全・倫理的配慮

    • 家族も含めて説明を行うことで、治療理解と安全管理を徹底。

  3. 慣習の継続

    • 飲酒・喫煙が20歳以上禁止という社会通念から、「完全な自己決定権=20歳」という考えが医療現場に残っている。

 

3. 実務でよくあるケース

ケース1:18歳の新成人が手術を受ける

  • 法律上:本人単独で同意可能

  • 病院運用:多くの施設で親権者署名を併記してもらう


ケース2:17歳の高校生が手術を受ける

  • 親権者署名が必須

  • 本人署名は理解確認のため補助的に記載


ケース3:親権者不在の緊急手術

  • 民法720条に基づき、救命目的で医師判断で実施可能

  • ただし後日、親権者への報告と記録を残すことが必要

 

 

4. 関連する医療行為の年齢制限

医療行為・制度 年齢 根拠法
手術同意(法律上) 18歳以上 民法
手術同意(多くの病院) 20歳以上 院内規定
臓器提供意思表示 15歳以上 臓器移植法
骨髄ドナー登録 18〜54歳 日本骨髄バンク規定
輸血同意 原則18歳以上 厚労省指針
臨床研究参加同意 原則18歳以上 臨床研究法
喫煙・飲酒 20歳以上 未成年者喫煙禁止法・飲酒禁止法
刑法上の責任能力 14歳以上 刑法
レジデント
医療関係はだいたい18歳以上ですね。

 

5. 診療時のポイント

  1. 施設内規定を確認

    • 病院の倫理委員会や安全管理部門で定めたルールが最優先。

  2. 家族への説明を徹底

    • 18〜19歳でも、家族へ説明して理解を得ることが望ましい。

  3. インフォームド・アセント

    • 小児では同意(Consent)だけでなく、本人の理解・賛同(Assent)を尊重する。

法律を守ることは大前提だけど、何より大切なのは、患者さんやご家族に対して、しっかりとわかりやすく説明することに間違いはないね。
指導医

 

6. まとめ

  • 法律上は18歳から本人単独署名が有効

  • しかし実務では20歳未満は親権者署名も取得するのが安全策

  • 医療行為ごとに異なる年齢制限があり、臓器移植や輸血、臨床研究などは個別の法律を確認する必要がある。

  • 家族への説明を含めたインフォームドコンセントが医療安全につながる。

20歳以上ですか?

 

手術同意の説明では、患者本人と家族双方にわかりやすく伝える工夫が重要だよ。説明資料を整理して渡せるツールがあると、患者・家族の理解が深まり、誤解やトラブル防止につながるね。
指導医

 

 

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小野真平(形成外科医)/ Shimpei Ono(Plastic Surgeon) 

日本医科大学形成外科学教室 准教授/医師。Advanced Medical Imaging and Engineering Laboratoryを主宰。 手足の形成外科、マイクロサージャリー、再建外科を専門とし、臨床・研究・教育に従事。可動式義指の開発、VR教育、3D超音波や医用画像工学の応用、PROsを重視した研究を展開。 美術解剖学や医療イラストレーションにも造詣があり、芸術と医学の融合をテーマに講演・執筆。教育活動では学生・研修医指導のほか、東南アジア医学研究会(Ajiken)部長として国際医療交流・災害医療にも取り組む。

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