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【救急外来マニュアル】非整形外科医が覚えておきたい整形外傷レントゲン撮影の基本

はじめに

  • 救急外来では、整形外科医が不在の時間帯に、非整形外科医が外傷患者の初期対応を行うことがあります。

  • 骨折や脱臼を見逃さないためには、正しいレントゲン撮影オーダーが必須です。

  • この記事では、整形外科医がいないときに迷わないレントゲン撮影のポイントを解説します。

 

1. 基本は「2R」=正面+側面

  • 外傷のレントゲンは基本的に2Rで撮影します。
    • 正面(AP view)

    • 側面(Lateral view)

💡 ポイント
2方向で撮影することで、骨折の有無やずれを確実に評価できます。
1方向のみでは骨折を見逃すリスクが高くなります。

2. 詳細評価が必要なら「4R」

骨折線の複雑さや、関節面の損傷が疑われる場合は4Rをオーダーしましょう。

  • 正面

  • 側面

  • 斜位(Oblique view)

  • 追加特殊撮影(例:スカプラY、スカイライン など)

目安

  • 骨折部位がはっきりしない

  • 関節の骨折が疑われる

  • 手術や入院を視野に入れる場合

 

3. 入院が必要そうならCTも検討

  • 入院が必要と判断される外傷ではCT撮影を検討します。
    • 高エネルギー外傷(交通外傷、転落など)

    • 骨折の詳細評価が必要な場合

    • 手術の計画を立てる際

例:
「大腿骨頸部骨折」「脊椎骨折」「関節内骨折」などはCTを追加オーダー。

 

4. 部位別レントゲン撮影の目安

上肢

部位 基本撮影 補足
肩関節 3R(正面+斜位+スカプラY) 脱臼・肩甲骨骨折
手指 3R(正面+側面+斜位) 小児は両側比較が必要

下肢

部位 基本撮影 補足
股関節 2R(正面+軸射)
膝関節 3R(正面+側面+スカイライン) 膝蓋骨評価にスカイライン追加
3R(正面+側面+斜位)
踵(かかと) 3R(正面+側面+軸射)

変性疾患(痛み・腫れが主訴の場合)

部位 高齢者 若年者
頚椎(首) 4R(正面+側面+前後屈) 6R(さらに追加撮影)
腰椎(腰) 4R(正面+側面+前後屈) 6R

 

5. 股関節脱臼・膝関節疾患の場合

  • 変形性股関節症
    両側2R(正面+ラウエンシュタイン)

  • 変形性膝関節症
    両側4R(立位正面+側面+スカイライン+ローゼンバーグ)

 

6. 小児患者への注意点

  • 小児は左右比較が必須
    • 成長軟骨(骨端線)が骨折と間違えやすいため、両側撮影をオーダーしましょう。

    • 例:肘、手首、膝など

7. オーダー例まとめ

状況 オーダー内容
通常の外傷 2R(正面+側面)
詳細評価が必要 4R(正面+側面+斜位+追加撮影)
肩関節脱臼疑い 3R(正面+斜位+スカプラY)
入院が必要そう 2Rまたは4R+CT

 

まとめ

  • 非整形外科医が救急外来で整形外傷を診る際、正しい撮影オーダーは診断精度を左右する重要なポイントです。
  • 迷ったらまず2R(正面+側面)を基本に、複雑なケースでは4RやCTを追加しましょう。
  • レントゲン撮影を適切に行うことで、整形外科医へのスムーズなコンサルトや迅速な治療につながります。

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小野真平(形成外科医)/ Shimpei Ono(Plastic Surgeon) 

日本医科大学形成外科学教室 准教授/医師。Advanced Medical Imaging and Engineering Laboratoryを主宰。 手足の形成外科、マイクロサージャリー、再建外科を専門とし、臨床・研究・教育に従事。可動式義指の開発、VR教育、3D超音波や医用画像工学の応用、PROsを重視した研究を展開。 美術解剖学や医療イラストレーションにも造詣があり、芸術と医学の融合をテーマに講演・執筆。教育活動では学生・研修医指導のほか、東南アジア医学研究会(Ajiken)部長として国際医療交流・災害医療にも取り組む。

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