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【救急外来マニュアル】非整形外科医が覚えておきたい整形外傷対応とコンサルトのタイミング

はじめに

  • 救急外来では、整形外科以外の医師が骨折や脱臼、靭帯損傷などの外傷患者を診ることが少なくありません。

  • 「どの患者をそのまま帰宅させてよいか」「どのタイミングで整形外科にコンサルトすべきか」は迷いやすいポイントです。

  • この記事では、非整形外科医が最低限覚えておきたい初期対応の流れとコンサルトの判断基準を分かりやすくまとめます。

non整形外科医がER当直をしている時を想定した記事だよ。
指導医

 

1. 初期対応の基本:診察と記録

まずは正確な記録が重要です。
カルテには以下を必ず記載しましょう。

  • 受傷機転(転倒、スポーツ、交通外傷など)

  • 主訴(痛み、腫れ、動かせないなど)

  • 発症日時、受傷部位

この3点を記載するだけで、後から整形外科医が対応しやすくなります。

 

2. 上肢・下肢外傷:まずは「骨折を見逃さない」

  • 腕や脚をぶつけた、捻った、転倒したなどで来院した場合は、必ずレントゲン2方向撮影を行います。
  • その上で、腫脹や疼痛の程度を確認しましょう。

レントゲン撮影

 

対応の流れ

  1. レントゲン2方向撮影(必須)

  2. 腫脹・疼痛の評価

  3. 簡易固定(シーネや三角巾)+鎮痛薬処方

  4. 近日中の整形外科外来受診を指示

💡 ポイント
骨折が明らかでなくても、「強い痛み」「歩行困難」「腫れが強い」場合は骨折の可能性があるため、固定+外来受診指示が安全です。

 

3. 整形外科に即時コンサルトが必要なケース

以下の場合は迷わずその場で整形外科医に連絡しましょう。

  • 骨折や脱臼が明らか

  • 開放骨折(皮膚が破れ骨が露出)

  • 血流障害が疑われる(手足が蒼白、冷感、脈が触れない)

  • 脱臼が整復できない、または整復後も神経症状が残る

  • 断裂や切断が疑われる外傷

 

4. 当日〜翌日受診でよいケース

整形外科医を呼ぶ必要はないが、近日中の整形外科外来受診を必ず指示するケースです。

  • 骨折ははっきりしないが腫れ・痛みが強い

  • 歩行は可能だが動作に制限あり

  • レントゲンで骨折が疑わしいが判断が難しい

この場合は、

  1. シーネ固定

  2. 松葉杖の指導(下肢外傷の場合)

  3. 翌日または近日中の整形外科外来受診を案内

松葉杖

 

5. 骨折が否定的なケース

  • レントゲン2方向で明らかな骨折なし

  • 歩行や関節可動域に問題なし

この場合は以下の対応でOKです。

  • 患部の安静指導

  • 鎮痛薬や湿布処方

  • 「症状が改善しない場合は整形外科受診を」と説明

 

6. 見逃しやすい外傷:アキレス腱断裂・膝靭帯損傷

アキレス腱断裂や膝の靭帯損傷は、見た目では分かりにくいため注意が必要です。

アキレス腱断裂を疑うポイント

  • 受傷時に「バチン」という音

  • 歩行困難だが立つことはできる

  • 足首の底屈力が弱い

  • Thompsonテスト陽性

対応

  • レントゲン2方向撮影(骨折除外)

  • シーネ固定

  • 松葉杖指導

  • 翌日の整形外科外来受診を必ず指示

 

7. コンサルト判断まとめ

状況 整形外科への連絡タイミング
開放骨折・血流障害・断裂 即時コンサルト
骨折・脱臼が明らか 即時コンサルト
骨折疑い、疼痛強い 翌日外来受診指示
骨折否定的、疼痛軽度 経過観察で可

 

8. 非整形外科医が覚えておくべき3つの原則

  1. 迷ったら撮影・固定する
    → レントゲン2方向は必須、固定は簡易でも可。

  2. 重症例はすぐにコンサルト
    → 開放骨折や血流障害は一刻を争います。

  3. 軽症でも整形外科外来に必ず繋げる
    → 翌日以降の受診指示でフォローを確実に。

まとめ

  • 救急外来では、診断をつけるよりも「見逃さない」ことが最優先です。
  • 骨折や脱臼を疑ったら、まずはレントゲン撮影と固定を行い、「緊急コンサルト」か「外来受診指示」かを判断しましょう。
  • 整形外科医と連携し、安全で迅速な対応を心がけてください。

 

  • この記事を書いた人
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小野真平(形成外科医)/ Shimpei Ono(Plastic Surgeon) 

日本医科大学形成外科学教室 准教授/医師。Advanced Medical Imaging and Engineering Laboratoryを主宰。 手足の形成外科、マイクロサージャリー、再建外科を専門とし、臨床・研究・教育に従事。可動式義指の開発、VR教育、3D超音波や医用画像工学の応用、PROsを重視した研究を展開。 美術解剖学や医療イラストレーションにも造詣があり、芸術と医学の融合をテーマに講演・執筆。教育活動では学生・研修医指導のほか、東南アジア医学研究会(Ajiken)部長として国際医療交流・災害医療にも取り組む。

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