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【診療Tips】手指手術の切開法:Bruner's incision、Midlateral incision

Key Point Summary

Bruner's incision = 手掌側に作図するzig-zag incisionのこと。

Midlateral incision(Bunnell's incision) = 指の側面の側正中線(midlateral line)に沿った皮膚切開線のこと。

Midaxial incision = 骨軸に沿った皮膚切開線で、midlateral incision よりもやや背側に位置する。

指から手部方向に皮膚切開を広げる場合、手根管に向かって(屈筋腱の走行に沿って)zig-zagをデザインする。

 

Q & A

 

レジデント
手指・手の皮膚切開線のデザインって、正解はあるんですか?教科書をみてもいろんなデザインが書いてあって…

正解というよりは、原則を理解しておくことが大切だよ。あとは症例ごとに術者が選択していくことになるね。
指導医

レジデント
原則をおしえてください!

基本はzig-zagとmidlateral incisionの2択。手掌のキズアトは極力避けたいので、できればmidlateral incisionを選択したい。皮線にぶつかる度に向きをかえて、皮線に直交する皮膚切開線を避けるのが大切だね。あとは、指から手部方向に皮膚切開を広げる場合、手根管に向かって(屈筋腱の走行に沿って)zig-zagをデザインするといいよ。
指導医

 

 

Outline

【Bruner's Incision】

  • 定義:掌側に作図するzig-zag incisionのこと。
  • 利点:皮弁(三角弁)の血流は安定してる。
  • 利点:掌側の重要構造物(腱、神経血管束など)にアプローチしやすい。
  • 欠点:キズアトが掌側にくるため、術後の一定期間、感覚障害(圧痛や異常知覚など)が生じやすい。
  • 欠点:拘縮や癒着をきたす可能性がある。

皮膚切開線は、皮線(クリーセ:crease)にぶつかる度に向きをかえるとよい。皮線を直交する皮膚切開線は瘢痕拘縮をきたす。

三角弁の頂点は可能であれば側正中線のラインに一致させると拘縮をきたしづらい。

三角弁の頂点を鑷子などで鈍的に摘ままない。血流が最も不良な部分であり、同部が壊死して二次治癒すると瘢痕拘縮の原因になるため。

Bruner's incision(volar zig-zag incision between flexion creases )

 

 

【Midlateral Incision】

  • 定義:Bunnellが報告した指の側面の側正中線(midlateral line)に沿った皮膚切開線のこと。
  • 利点:皮膚切開線の掌側に位置する神経血管束を温存しやすい。
  • 利点:指の屈伸運動に際して、縫合創・手術痕に張力がかかりづらく、肥厚性瘢痕になりづらい。
  • 利点:掌側と背側の両方の重要構造物にアプローチできる。
  • 欠点:指動脈・指神経から背側に分岐する枝を切離しないといけない。

似たような切開として、midaxial incision が挙げられる。Midaxial incision は、骨軸に沿った皮膚切開線で、midlateral incision よりもやや背側に位置する。両者を混同して述べている教科書もあるので注意が必要である。

指を他動屈曲した際の皮線の背側点をマーキングする。点と点をつないだ線が側正中線(midlateral line)になる。

 

 

 

【手指手術における皮膚切開の実際】

  • Bruner's incision(zig-zag incision)とmidlateral incisionを組み合わせる。
  • 手掌の切開・キズアトを最小限にするために可能であればMidlateral incisionを第1選択にする。

指から手部方向に皮膚切開を広げる場合、手根管に向かって(屈筋腱の走行に沿って)zig-zagをデザインする。示指と小指では思いのほか正中側に皮膚切開線がくるので注意する。

皮膚切開線が掌側手首皮線(palmar wrist crease)をまたぐ時は、直交しないようにし、三角弁をいれると瘢痕拘縮の予防になる。

Hand & finger incisions

 

 

 

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小野真平(形成外科医)/ Shimpei Ono(Plastic Surgeon) 

日本医科大学形成外科学教室 准教授/医師。Advanced Medical Imaging and Engineering Laboratoryを主宰。 手足の形成外科、マイクロサージャリー、再建外科を専門とし、臨床・研究・教育に従事。可動式義指の開発、VR教育、3D超音波や医用画像工学の応用、PROsを重視した研究を展開。 美術解剖学や医療イラストレーションにも造詣があり、芸術と医学の融合をテーマに講演・執筆。教育活動では学生・研修医指導のほか、東南アジア医学研究会(Ajiken)部長として国際医療交流・災害医療にも取り組む。

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