Key Point Summary
肘内障は、橈骨頭が輪状靭帯から亜脱臼した状態である。 「子どもの手を引っ張り上げたら急に泣き出して腕を動かさなくなった」というのが典型的なエピソード。 肘の腫脹や内出血を認める場合は、肘内障ではなく、打撲や骨折を疑う。 治療は、徒手整復(回内法 or 回外屈曲法)である。整復の瞬間、橈骨頭の上においた母指にクリックを感じる。
Q & A
Outline
【病態】
- 橈骨頭が輪状靭帯から亜脱臼した(はずれかけた)状態。
- 親が「子ども(2〜6歳)と手をつないで歩いていたら、転びそうになったので、手を引っ張り上げたんです。そうしたら急に泣き出して...腕を動かさなくなったんです…」というのが典型的な受傷機転エピソード。
【解剖】
- 輪状靱帯(annular ligament)は、橈骨頭(radial head)を輪状に取り巻く強い靱帯で、尺骨(ulna)の橈骨切痕前縁から起始し、その後縁に停止する。
- 小児の橈骨頭は未発達のため輪状靭帯からはずれやすい。
【症状】
- 患児は上肢をだらんと下垂し、動かさず、患肢を触ろうとすると嫌がる。
- 肘内障では、肘を触ったり動かすと痛みを訴えるが、安静時痛はない。また肘の腫脹や内出血はない。それらがあるようなら骨折を疑い、Xpを撮影する。
【検査】
- 特別な検査は不要。
- 骨折を疑う場合はXpを撮影する。骨折を疑う場合は以下の3点。
(a) 安静時痛 (b) 肘の腫れ・内出血 (c) 患側末梢の感覚障害・血行障害
Step by Step
■ Step 1: 橈骨頭を指で圧迫
- 橈骨頭(radial head)を指で軽く圧迫する。
■ Step 2: 回内法
- 前腕を回内(赤矢印)する。
この段階で整復されることが多い。整復されると①の母指にクリックを感じる。
整復に力はいらない=患児が痛みを感じない程度。患児をリラックスさせながら整復するのがコツである。
■ Step 3: 回外屈曲法
- 上記の回内法で整復されなければ…回外した状態で肘関節を屈曲する。
■ STEP 4: 整復の確認
- 患肢を挙上(バンザイ)させる。
ぬいぐるみやスマホを患児の頭の上にもっていき、とらせるとよい。
すぐには動かさないことが多いため、親と待合室で5〜10分ほど待機してもらう。その間に患肢を動かすことが多い。
■ STEP 5: 親への説明
- 後療法は不要。
- 整復直後は再亜脱臼しやすいため、翌日までは公園などの外遊びは控えた方が無難である。
- 上肢を長軸方向に引っ張り上げる動作をしないように両親に指導をする。
- 「クセになりますか?」の質問に対しては、「5〜6歳以降に橈骨頭がしっかりしてくるので外れづらくなります。」と回答する。
■ Evidence
Macias CG,et al. A comparison of supination/flexion to hyperpronation in the reduction of radial head subluxations.Pediatrics 1998;102:e10.
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