手外科

【診療Tips】腱縫合におけるLockingとGraspingの違い

Key Point Summary

Grasping様式よりもlocking様式を採用した腱縫合の方が強度は勝る。

そのため、早期自動運動療法(early active mobilization: EAM)ではlocking様式を採用した腱縫合が望ましい。

ただしlocking様式では腱がしめつけられるため、腱のロック部の糸をかける幅は<5mmが望ましい。

 

 

Q & A

レジデント
Graspingとlockingってなんのことですか?
腱縫合をする時の縫合様式のことだよ。Graspは「握る」「つかむ」という意味。一方Lockは「鍵をかける」「動かなくする」という意味。Locking様式では、下のイラストのように糸が交叉するような通し方をすることで、ロックがかかる仕組みになっているよ。
指導医
レジデント
Locking様式で腱縫合する際に気を付けることはありますか?
Lockingでは腱が締め付けられるので、腱の血行を極力維持するために、腱のロック部の糸をかける幅は5mm以内にしたほうがよいよ(実際には2〜3mm幅が理想的)。あと、腱断端同士を密着させてから縫合しないと、途中で糸がlockingしてしまいギャップ形成に繫がるよ。
指導医

 

 

Outline

【Locking Loop vs Grasping Loop】

  • Locking様式を採用した腱縫合の方が、Grasping様式を採用した腱縫合よりも強固でゆるまない。

Hotokezaka S et al: Differences between locking loops and grasping loops: Effects on 2-strand core suture . J Hand Surg Am 1997;22995-1003.

  • そのため、早期自動運動療法(early active mobilization: EAM)ではlocking様式を採用した腱縫合が望ましい。

 

  • ただし、locking様式のほうが腱が締め付けられるため腱の血行に留意しないといけない。
  • 主縫合の際、腱のロック部の糸をかける幅は<5mmが望ましい(幅2〜3mmで十分とする報告がある)。

Xie RG, Xue HG, Gu JH, Tan J, Tang JB. Effects of Locking Area on Strength of 2-and 4-Strand Locking Tendon Repairs. J Hand
Surg Am 2005;30:455-460.

 

指導医
腱を把持する様式として、"grasping"と"locking"があるんだけど、lockingのほうが強度が勝るとされているよ。よくKessler(ケスラー)縫合というけど、Kesslerのオリジナルの報告では、graspingを採用しているよ。"modified Kessler"の定義は実は曖昧なんだけど、"locking様式を採用したKessler縫合"を指していることが多いよ。

 

Locking loop と grasping loopの違い

 

 

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