Key Point Summary
爪下血腫(そうかけっしゅ)は、爪甲と爪床の間に血液が貯留した状態である。 痛みがある場合はドレナージが必要。 ドレナージは、18G針や高周波メスで爪甲に穴をあける。血液がドレナージされると痛みは消失する。 爪下血腫は末節骨骨折を伴っていることがあるのでXpが必須である。
Q & A
Outline
【解剖】
爪下血腫は爪甲と爪床の間に血腫が溜まる。
【病態】
- 爪下血腫は、爪甲と爪床の間に血液が溜まった状態である。
- 足趾に物を落としたり、きつい靴を履いて運動したりして発生する。
- 爪床の下には豊富な知覚神経終末があり、爪下に血腫がたまると内圧が上昇して激痛が生じる。
【検査】
- 爪下血腫は末節骨骨折を合併することが多いため、まずXp撮影する。
【治療】
- 爪下血腫をドレナージすることで内圧が下がり、痛みは劇的に改善する。将来的な感染や爪変形の予防になる。
- 血腫ドレナージが可能なのは受傷後2〜3日以内である(その後は血腫が固まってしまうため)。
中指の爪下血腫を認める。患者は激痛を訴えている。
- 爪下血腫は末節骨骨折を合併することが多いため、まずXp撮影をする。
骨折+の場合は、整復・鋼線固定が必要になる可能性がある。鋼線固定に慣れていないようであれば、下記の処置をした後、手指の背側からアルフェンスシーネ外固定をし、整形外科外来への受診を指示する(爪甲に穴をあけることで開放骨折になるため、十分に洗浄し、早期に整形コンサルトするのが望ましい)。
Xpで末節骨骨折を認める。Tuft部の粉砕骨折のため保存加療を選択した。
■ Step 2-①: 爪甲に孔を開けて血腫をドレナージ(18G針法)
- 18G針で爪甲に孔を2〜3個開ける
局所麻酔は通常不要である。
針先を爪甲にかるく押しつけ、クルクルと回すようにして孔を開ける。
垂直に孔をあけると針先で爪床を傷つけて痛みが生じるため、やや斜めに針先を刺入するとよい。
爪下血腫がドレナージされると内圧が下がり、痛みは劇的に改善する。
第1足趾も爪下血腫の好発部位である。
■ Step 2-③: 爪甲に孔を開けて血腫をドレナージ(高周波メス法)
- よく外来においてある高周波メス(サージトロン, ellman Japan)で爪甲に穴をあける。
- サージトロンのニードル型(先が針のようになっているもの)の先端を血腫上の爪甲にあてて爪甲を熱で溶かして孔を開ける。孔が開くと、血腫がドバッと圧出される。
ニードルの先端がズボッと深く刺入しないように注意する。
血腫がドレナージされて圧が下がれば痛みは消失するため、孔を大きく開ける必要はない。
■ Step 3: ドレッシング
- 生食洗浄し、ゲンタシン軟膏を塗布する。
- ガーゼをあてて、布テープや包帯で軽く圧迫することで、残存する爪下血腫がガーゼ側にドレナージされるようにする。
■ Step 4: 術後ケア & 説明
- 処置当日は、患部の安静、挙上、保冷材での冷却を指示する。
- 翌日からシャワー洗浄、ゲンタシン軟膏塗布を継続し、ガーゼに浸出がなくなったら処置終了とする。
- 可能であれば処置後1週以内に、外来再診を指示する。
爪甲剥離して1〜2ヶ月すると、手前から新しい爪が生えてきて二重爪(新しい爪が下、古い爪が上)になる可能性が高いこと、完全に爪が生えかわるのに約半年かかることを説明しておくとよい。
手指の爪は、成人で1日0.1mm伸び、約半年で全体が生えかわる。
足趾の爪は、成人で1日0.05mm(手指の爪の生えるスピードの半分)伸び、約1年で全体が生えかわる。
■ 処方箋
- ケフラールカプセル(250mg) 1回1錠 1日3回 毎食後 3日分
- ロキソニン錠(60mg) 1回1錠 1日3回 毎食後 3日分
- ムコスタ錠(100mg) 1回1錠 1日3回 毎食後 3日分
- ゲンタシン軟膏 10g 1本
■ コスト
- 創傷処置<100cm2(J000)
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