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マイナー外科・救急

【Step by Step 手術手技】指の末節骨骨折(閉鎖骨折)

Key Point Summary

末節骨は解剖学的に、末梢側の膨らみ(tuft)、真ん中のくびれ(shaft)、中枢側の再び膨らんでいる部分(base) に分けられる。

Shaftの横骨折は不安定(unstable)のことが多いので、積極的な手術(内固定)を推奨する。

パワーツールの使い方をマスターしよう!

 

 

Q & A

 

レジデント
末節骨の開放骨折ってシラー法だけだと問題ありますか?

骨折部位によるね。横骨折は積極的に手術したほうがいいね。Shaftの部分で偽関節になるとピンチしたときの痛みがなかなかとれないよ。
指導医

レジデント
骨接合のワイヤーは1本がいいですか?それとも2本ですか?

多くは1本で安定するよ。指の末節部は爪が副子のような役割をするので、1本刺入してあげると骨折部が安定することが多いよ。
指導医

 

 

Outline

【概要】

  • 指の末節骨開放骨折」で詳説した部分は一部省きながら解説する。
  • 末節骨は解剖学的に、
    -末梢側の膨らみ(tuft
    -真ん中のくびれ(shaft
    -中枢側の再び膨らんでいる部分(base) に分けられる(下図)。
  • 末節骨骨折は、
    -皮膚軟部が損傷し骨折部が露出している開放骨折(複雑骨折)と、
    -骨折部が露出していない閉鎖骨折(単純骨折) に分けられる。
  • 閉鎖骨折で骨折部が安定(stable)していれば、外固定のみの保存加療が可能である。Shaftの横骨折は不安定(unstable)のことが多いので、積極的な手術(内固定)を推奨する。

末節骨は真ん中のくびれがshaft、それより遠位がtuft、近位がbaseとなる。



グラグラしやすい関節外骨折の横型と関節内骨折が手術になることが多い。



指を挟んで受傷した末節骨骨折(閉鎖骨折)。

 

 

■ STEP 1 

  • 指ブロック麻酔+滅菌手袋をつかった指タニケットで手術可能である。
  • 0.75%アナペイン10ccで指ブロック注射する(1%キシロカインでもよいが手術時間が1〜2時間をこえると術中に麻酔がきれてくることがある)。
  • 麻酔がきくまで3分待つ。

 

 

■ STEP 2

  • 手術はイメージ(手外科用のミニCアーム、なければ大きいCアーム)をみながらおこなう(下写真)。
  • パワーツール(ミニドライバーやパワープロが一般的)を使ってピンを刺入する。

指のピンニングでは手外科用のミニCアームの使用が望ましい。コンパクトで操作性に優れるうえに、被曝量もCアームの1/10に減量できる。

(ミニ)Cアームで骨折部をみながら骨接合する。



パワーツール = ハンドピース + アタッチメント からなる。ハンドピースは窒素コードにつながっている。



ハンドピースにセレクターボタンがついている。 R:Reverse、S: Safe、F: Forward。 Kワイヤー刺入時は"F"にする。




ワイヤーアタッチメントをとりつける。



ワイヤーアタッチメントにKワイヤーを挿入し、 Fにしてレバーを引き寄せながらトリガーをひくと回る。



Radiographic Imaging Exposure (mrem)
Chest Xp 25
Mammogram 170/view × 3 = 510
CT wrist 700
CT hip 1000
Cardiac catheterization 150,000 / study
C-arm 1200 to 4000 / min
Mini C-arm 120 to 400 / min
放射線画像検査と放射線被曝量
Singer G. Occupational Radiation Exposure to the Surgeon JAAOS 2005;13:69-76.



■ STEP 3

  • イメージをみながら骨接合をおこなう。

shaftの骨折を確認する 容易に転位する(=不安定性あり)のがわかる。



整復位を保持する。



Kワイヤー(or Cワイヤー、指骨ピン)1.0mmを刺入する。IP関節は貫かない。



側面でも確認する。この症例では1本で十分安定が得られた。

 

爪甲が安定していれば、ワイヤーは1本で十分。やや不安定(グラグラする)であれば2本(X状 のcriss cross pinning or 難しければ水平に2本 )刺入する。

末節骨は爪のすぐ直下に位置するので、Kワイヤーも指尖部、且つ、爪のすぐ下から刺入する。末節骨のtipは曲面で滑りやすいので、Kワイヤーの先端が末節骨のtipに達するまでは回転せずにぐっと押し込み、Kワイヤーの先端がtipに当たったら低速で回転させながら骨孔を作成する。

骨皮質を貫く時は固く、海綿骨に入ると急に固さ(抵抗)がなくなる。そしてKワイヤーの先端を奥にすすめて再びDIP関節付近で骨皮質に達するとまた固くなる。Kワイヤーは骨皮質との摩擦で止まっているので、何度も抜き差ししない。

ワイヤーはIP関節を貫かないようにし、術後にIP関節は可動できるようにする。IP関節を貫いてしまうと骨癒合を待っている期間、IP関節が動かせなくなり医原性の関節拘縮が生じてしまう。

Kワイヤーは骨癒合が得られる2〜3ヶ月間留置するため、皮下に埋め込んだ方が術後の管理がしやすい。

術直後 Kワイヤーは皮膚ギリギリでカットして皮下に埋め込んだ。



術直後からIP関節の自動運動が可能である。





 

■ STEP 4

  • 手術当日は患手の冷却と挙上を指示する。
  • 術後2週程度はできるだけ患手の挙上を継続した方がよい。患手を下垂して重い物を持つなどすると患部が腫れてズキズキとした痛みが生じる。
  • 術後はIP関節を伸展位にして、アルフェンスシーネ等で保護する。この際、MP関節はフリーにする。
  • IP関節は1日に数回(就寝時以外、2〜3時間毎に1回程度)、患者自身で自動運動をおこなうよう指導する。IP関節のクリーセの手前に健側の母指をおいて曲げ伸ばしすると効果的にリハビリできる。
  • 末節骨骨折は約2週間ごとの外来でXp評価し、術後2〜3ヶ月程度で骨癒合が得られたらKワイヤーを抜去する。皮膚表面からKWの断端が確認できれば、無麻酔でペアンなどで断端を把持して抜去する。断端が確認できなければ指ブロック下にて小切開を加えて同様に抜去する。

術後、外来でのレントゲン。




 

■ 処方箋

  • ケフラールカプセル(250mg) 1回1錠 1日3回 毎食後  5日分
  • ロキソニン錠(60mg) 1回1錠 1日3回 毎食後 5日分
  • ムコスタ錠(100mg) 1回1錠 1日3回 毎食後 5日分

 

  • 点滴ラインを確保している場合は、手術開始時に抗生剤を点滴静注する。セファゾリンNa点滴静注用1gバックなど。

 

 

■ コスト

 

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