Key Point Summary
スライサーや包丁による指尖部の皮膚欠損は、ER当直でよく遭遇する外傷の1つである。 治療法:まず止血材で止血して、2〜3日後に再診して、創傷被覆材(ドレッシング材)に切り替えて、湿潤療法で上皮化させる。 糸で強く結紮して止血する方法は、痛みが続くうえに創の血流も妨げるため×。
Q & A
Step by Step
■ Step 1: 指ブロック注射する。
- 1%キシロカイン10ccで指ブロック注射する。
- 麻酔が効くまで3分待つ。
■ Step 2: 生食で洗浄する。
- 生理食塩水できれいに洗う。
創面から出血がジワジワでていても問題はない(創面を圧迫したら必ず止血する)。
■ Step 3: 創面に止血材をあてがう。
- 止血材(ソーブサン or カルトスタット or アルジサイトAg、等)で創を覆う。
- その上からフィルム(テガダーム or エアウォール、等)で覆う。
止血材は乾燥すると創に固着して剥がすときに痛いので、Top dressingはガーゼではなくフィルムがおすすめ。
指尖部の欠損を糸で結紮して止血するのは、痛みが長引くのでおすすめしない。
この時点ですでに止血しているようであれば、止血材ではなくStep5の創傷被覆材でも可である。
■ STEP 4: 患手を挙上・冷却する。
- 当日は患手を挙上(心臓より高い位置)し、保冷剤で1〜2時間冷却する。
- 入浴、お酒、激しい運動は×。
- 翌日以降(2〜3日後)に形成外科 or 整形外科を受診する。
血流がよくなること(入浴、飲酒、運動など)をすると、患部が腫れて、出血して、ジンジン痛む。
■ STEP 5: 創傷被覆材に切り替える。
- 止血材は、翌日はがすとまた出血することが多いので、2〜3日経ってからが望ましい。
- 出血がおさまっていれば、創傷被覆材(デュオアクティブETやキズパワーパッド)で創面を密閉して湿潤環境で上皮化させると痛みなくきれいに治癒する。その場合、浸出液の量にもよるが、2〜3日ごとの交換で可である。
フィブラストスプレーの併用は上皮化を促進する。
止血材が剥がれづらいときはどうする?
■ 処方箋
- ケフラールカプセル(250mg) 1回1錠 1日3回 毎食後
- ロキソニン錠(60mg) 1回1錠 1日3回 毎食後
- ムコスタ錠(100mg) 1回1錠 1日3回 毎食後
■ コスト
- 創傷処置<100cm2(J000)