整形外科

【診療Tips】PTB装具とは?膝下で体重を支え足部を守る免荷装具の仕組みと使い方

はじめに

  • 下腿・足部疾患においては、患部への荷重コントロールが治療経過を左右します。
  • 骨折部位や潰瘍部位への荷重が持続すると、骨癒合遅延や潰瘍悪化、感染進展を引き起こす可能性があり、適切な免荷が不可欠です。
  • PTB装具(Patellar Tendon Bearing brace:膝蓋腱支持免荷装具)は、膝蓋腱部で体重を支持することで下腿遠位部や足部への荷重を減少させることを目的とした装具で、下肢疾患の保存療法・術後管理・リハビリ初期において広く使用されています。
  • 本記事では、PTB装具の構造と適応、臨床での使用上の留意点について整理します。

 

PTB装具の基本構造と免荷機構

  • PTB装具は義足のPTBソケットの考え方を応用して開発されました。
  • 膝下の膝蓋腱部および脛骨内側顆・外側顆周囲の強固な軟部組織で荷重を受け止め、下腿遠位部や足部を免荷します。

PTB装具

主な構成要素

  • PTBソケット部:膝蓋腱前面で荷重を支持するカップ構造

  • 支柱(内側・外側):膝下から足関節まで連結

  • 足底部(フットプレート):足を安定させる

  • ストラップ類:下腿を固定するベルト

PTB装具

 

適応疾患と目的

  • PTB装具は、下腿遠位部から足部にかかる荷重を制限する必要がある症例で適応となります。
    代表的な適応は以下の通りです。
適応疾患 使用目的
脛骨骨幹部骨折・骨接合術後 骨癒合期における段階的荷重管理
踵骨骨折 かかとへの直接荷重を回避
糖尿病性足潰瘍 足底圧を軽減し潰瘍治癒を促進
シャルコー関節(Charcot foot) 足部変形進行の抑制
足関節周囲の軟部組織再建術後 皮弁・移植部位の保護
特に、糖尿病性足潰瘍や踵骨骨折では、患部を免荷しながら早期リハビリを進めるために有用だよ。
指導医

 

臨床上のポイント

1. 初期評価

PTB装具を処方する前に以下を評価します。

  • 皮膚状態:発赤・潰瘍・壊死の有無

  • 末梢循環:ABI、SPP、TcPO₂などで血流を評価

  • 感覚評価:末梢神経障害の有無(糖尿病性神経障害など)

  • 荷重許可レベル:完全免荷、部分荷重、全荷重のいずれかを主治医が指示

血流が極端に低下している場合は、局所の圧迫により潰瘍や壊死が悪化するリスクがあるため、装具使用は慎重に判断する必要があります。


2. 装着手順と適合確認

  • 膝蓋腱部が確実にソケットにフィットしているかを確認

  • 足関節の中立位保持

  • ストラップで過剰な圧迫を避ける

  • 歩行時に患部への荷重が十分に軽減されているかを理学療法士が歩行観察で評価


3. 使用上の注意

注意点 内容
皮膚トラブル 圧迫部位の発赤や水疱に注意
装具重量 高齢者や筋力低下例では歩行負担増加
コンプライアンス 装着が煩雑で患者が自己管理できないケースでは指導が必要
段階的荷重管理 骨癒合進行に合わせて医師が荷重量を調整

 

リハビリテーションでの活用

  • PTB装具は、保存療法や術後早期から立位訓練・歩行訓練を開始できる点が大きな利点です。
    • 完全免荷期:両松葉杖+PTB装具で歩行訓練

    • 部分荷重期:装具を使用しつつ段階的に荷重量を増加

    • 全荷重期:骨癒合や潰瘍治癒が進めば装具離脱を検討

  • 理学療法士、義肢装具士、医師が連携して荷重管理と歩行動作の再獲得を進めます。

 

まとめ

  • PTB装具は、膝蓋腱部で体重を支持することにより、足部や下腿遠位部を効果的に免荷できる装具です。
  • 骨折、糖尿病性足潰瘍、シャルコー関節など、さまざまな疾患で活用され、患者の早期離床とリハビリ促進に寄与します。
  • しかし、適切な評価・適合確認・使用指導が不十分な場合は皮膚障害や免荷不良を招くリスクがあり、医療チームによる継続的なモニタリングが必須です。
  • 臨床現場では、患者の病態と治療計画に応じてPTB装具を適切に活用し、最適なリハビリテーションを提供することが求められます。

 

 

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小野真平(形成外科医)/ Shimpei Ono(Plastic Surgeon) 

日本医科大学形成外科学教室 准教授/医師。Advanced Medical Imaging and Engineering Laboratoryを主宰。 手足の形成外科、マイクロサージャリー、再建外科を専門とし、臨床・研究・教育に従事。可動式義指の開発、VR教育、3D超音波や医用画像工学の応用、PROsを重視した研究を展開。 美術解剖学や医療イラストレーションにも造詣があり、芸術と医学の融合をテーマに講演・執筆。教育活動では学生・研修医指導のほか、東南アジア医学研究会(Ajiken)部長として国際医療交流・災害医療にも取り組む。

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