はじめに
- 手指の変形性関節症(Hand OA)は、中高年女性に多く見られる疾患です。
- 関節変形や痛みのほか、DIP関節に発生する粘液嚢腫(digital mucous cyst)が合併することも少なくありません。
- 興味深いのは、炎症が存在しても痛みを強く訴えない患者に、粘液嚢腫が出現しやすい点です。
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粘液嚢腫とは?
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好発部位:DIP関節背側
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病態:ゼリー状の関節液が袋状に貯留した嚢胞性病変
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特徴:爪の変形(圧迫による陥凹)を合併することがある
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画像所見:X線で嚢腫直下の骨棘形成が確認できることが多い
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粘液嚢腫と爪の陥凹変形
手指OAとの関連
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粘液嚢腫は DIP OAと密接に関連 しており、OAの患者に高頻度でみられる。
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関節内圧上昇や滑膜炎によって関節液が外へ突出し、嚢腫が形成されると考えられている。
痛みとの乖離
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DIP OAにおいては「レントゲンで強い変形があるが痛みが少ない」という患者が存在する。
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この場合でも、関節内では滑膜炎や関節液増加が進行していることがある。
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痛みを強く感じないため放置されやすいが、その結果として粘液嚢腫が形成されやすいと考えられる。
臨床的示唆
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粘液嚢腫は「痛みが少ないから安心」とは言えず、OA進行の一側面と捉える必要がある。
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感染や破裂を予防するためには、
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穿刺・ステロイド注入
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手術
が検討される。
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患者説明では「痛みがなくても関節の変化は進んでいる」ことを強調することが重要。
まとめ
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粘液嚢腫はDIP OAに高頻度で合併する。
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痛みの有無と嚢腫の発生は必ずしも相関しない。
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「痛みが軽い患者ほど粘液嚢腫を形成する」ケースが少なくなく、注意が必要。
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治療では感染・破裂リスクを念頭に置き、OA全体の管理の一環として対応する。
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