手外科

【診療Tips】粘液嚢腫と手指変形性関節症(OA)の関係

はじめに

  • 手指の変形性関節症(Hand OA)は、中高年女性に多く見られる疾患です。
  • 関節変形や痛みのほか、DIP関節に発生する粘液嚢腫(digital mucous cyst)が合併することも少なくありません。
  • 興味深いのは、炎症が存在しても痛みを強く訴えない患者に、粘液嚢腫が出現しやすい点です。
粘液嚢腫を主訴に来院する患者さんは、痛みがないことが多いよ。例外的に穿刺をくり返している患者さんは痛みを訴えるよ。
指導医

 

粘液嚢腫とは?

  • 好発部位:DIP関節背側

  • 病態:ゼリー状の関節液が袋状に貯留した嚢胞性病変

  • 特徴:爪の変形(圧迫による陥凹)を合併することがある

  • 画像所見:X線で嚢腫直下の骨棘形成が確認できることが多い

粘液嚢腫に合併する爪変形は、必ず爪が陥凹するよ。嚢腫が爪母を圧迫するのが原因。嚢腫がなくなると爪は平らに戻るよ。
指導医

 

粘液嚢腫と爪の陥凹変形

粘液嚢腫と爪の陥凹変形

 

手指OAとの関連

  • 粘液嚢腫は DIP OAと密接に関連 しており、OAの患者に高頻度でみられる。

  • 関節内圧上昇や滑膜炎によって関節液が外へ突出し、嚢腫が形成されると考えられている。

 

痛みとの乖離

  • DIP OAにおいては「レントゲンで強い変形があるが痛みが少ない」という患者が存在する。

  • この場合でも、関節内では滑膜炎や関節液増加が進行していることがある

  • 痛みを強く感じないため放置されやすいが、その結果として粘液嚢腫が形成されやすいと考えられる。

 

臨床的示唆

  • 粘液嚢腫は「痛みが少ないから安心」とは言えず、OA進行の一側面と捉える必要がある。

  • 感染や破裂を予防するためには、

    • 穿刺・ステロイド注入

    • 手術
      が検討される。

  • 患者説明では「痛みがなくても関節の変化は進んでいる」ことを強調することが重要。

 

まとめ

  • 粘液嚢腫はDIP OAに高頻度で合併する。

  • 痛みの有無と嚢腫の発生は必ずしも相関しない。

  • 「痛みが軽い患者ほど粘液嚢腫を形成する」ケースが少なくなく、注意が必要。

  • 治療では感染・破裂リスクを念頭に置き、OA全体の管理の一環として対応する。

手指OAや粘液嚢腫は一度進行すると自然に治ることは難しく、早めのケアと予防が大切だよ。サプリメントやサポーターを上手に取り入れて、毎日の生活を快適に過ごしましょう。おすすめの商品はこちらから。
指導医

 

  • この記事を書いた人
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小野真平(形成外科医)/ Shimpei Ono(Plastic Surgeon) 

日本医科大学形成外科学教室 准教授/医師。Advanced Medical Imaging and Engineering Laboratoryを主宰。 手足の形成外科、マイクロサージャリー、再建外科を専門とし、臨床・研究・教育に従事。可動式義指の開発、VR教育、3D超音波や医用画像工学の応用、PROsを重視した研究を展開。 美術解剖学や医療イラストレーションにも造詣があり、芸術と医学の融合をテーマに講演・執筆。教育活動では学生・研修医指導のほか、東南アジア医学研究会(Ajiken)部長として国際医療交流・災害医療にも取り組む。

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