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【診療Tips】手指変形性関節症とエクオール ― エストロゲン受容体との関わり

はじめに

  • 手指変形性関節症(Hand OA)は閉経後女性に多く発症し、関節痛・可動域制限を引き起こす。
  • そのため更年期女性の手指の痛みはMenopausal Hand(更年期手)と呼ばれている。
  • 女性ホルモン(エストロゲン)の減少が病態に関与することが指摘されており、近年、大豆イソフラボン代謝物であるエクオールが注目されている。

エクエルは処方薬ではなくサプリメントなので薬局やネットで購入できるよ。
指導医

 

エクオールとは

  • 大豆イソフラボン(ダイゼイン)が腸内細菌により代謝されて生成

  • 日本人女性の約50%が腸内で産生可能(“エクオール産生能”)

  • エストロゲン様作用を持つが、天然エストロゲンと異なる受容体選択性

 

エストロゲン受容体との違い

  • エストロゲンにはERαとERβが存在

  • エストロゲン(エストラジオール):ERα・ERβの両方に強く作用

  • エクオール:ERβに選択的に結合し、ERαへの作用は弱い

    • ERβは抗炎症作用・骨関節保護作用に関与

    • よって、エストロゲン補充療法に比べ副作用リスク(乳癌・子宮内膜症増悪など)が少ないと考えられる

エクオールはエストロゲンのα受容体の作用が弱いことで乳癌・子宮への影響が少ないと言われているよ。
指導医

 

エビデンス

  • いくつかの臨床研究で、エクオールサプリメント摂取が閉経後女性の手指関節痛を軽減する可能性が示唆されている。

  • 特にエクオール産生能を持たない女性でサプリメント投与が有効との報告あり。

  • 日本の小規模RCT(Aso et al., Menopause 2012):エクオール10 mg/日投与群で関節痛VASの改善傾向。

  • 一方で、長期的有効性・構造的改善効果(関節破壊抑制)についてはエビデンスが不足している。

エクオールの産生能をチェックするキットが販売されているよ。
指導医

 

安全性

  • エストロゲン補充療法に比べ、乳腺・子宮への影響は少ない

  • 一般に忍容性は良好

  • まれに消化器症状(腹部膨満、下痢)を認めることあり

 

臨床での使い分け

  • 第一選択:NSAIDs(局所・内服)、リハビリ

  • 補助療法:閉経後女性において、エクオールは疼痛緩和の一助となりうる

  • 対象

    • 閉経後女性で手指関節痛を有する

    • NSAIDsの長期使用が困難

    • エクオール産生能が低いと推定される患者

 

まとめ

  • エクオールは大豆由来の代謝物で、ERβ選択的作用を介して抗炎症・鎮痛効果を発揮する可能性がある。
  • 手指変形性関節症に対するNSAIDsの補完的オプションとして期待されるが、長期的な有効性・構造的効果についてはさらなる研究が必要である。
  • エストロゲン補充療法に比べ安全性が高い点からも、閉経後女性における治療選択肢の一つとして考慮する価値がある。

 

外来診療について

この記事の筆者である 小野真平(日本医科大学 形成外科・再建外科・美容外科) は、以下の施設にて外来診療を行っています。

  1. 日本医科大学付属病院(東京都文京区)水曜AM・PM

  2. 江戸川病院 形成外科(東京都江戸川区)火曜AM・金曜AM

受診を希望される場合は、各施設の外来予約システムをご利用ください。

1は紹介状が必要(何科でもOKです)、2は不要です。いずれも受診前にお電話いただいたほうが確実です。
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