Key Point Summary
手台(腕台)をセットする。
上腕タニケットを装着する。
スクラビングをマスターする。
ドレーピングをマスターする。
Q & A
上肢の手術のドレーピングに、テープ付きドレープを使ってはダメですか?
ダメということはないんだけど、上肢の手術では、術中に上肢を動かさないといけないことが多々あるよ。その時に、テープが引っかかって動かしづらかったり、無理に動かすと、テープがはがれてタニケットが露出して不潔になったりするよ。
確かに上肢の手術では、肩関節を外転・内転したり、屈曲したりする機会が多いですよね。
下で紹介するディスポーザブル不織布滅菌シーツと布鉗子を使ったドレーピング法にすると、タニケットの下に手をいれて、自由に上肢を動かすことができるよ。下肢の手術も同じだね。
Step by Step
■ Step 1
- まず手台(腕台とも言う)を準備する。
- 手台の上に体圧分散ウレタンフォーム (ソフトナース®)を敷いて段差をなくすようにする。
手台は、(a) X線をとおすアクリル板製で、且つ、(b) ミニCアームを術野にいれやすい脚がないもの、が理想的であるが、なかなか売っていない。
写真の手台はアクリル製ではなく金属のため、X線は通さない。ただし、完全な四角形の板ではないため、板の欠けている部分に患部をもっていくと、術中イメージをみることができる。
手台の上に体圧分散ウレタンフォーム (ソフトナース®)を敷いて段差をなくすようにする。
脚のないアクリル板製の手台を自作している施設もあるよ。最近はミニCアームが進化したので、滅菌カバーをかけたCアームの下の部分(フラットディテクター)を術野にのっけて、投影しながら手術することも可能になったよ。
■ Step 2
上腕タニケットを上腕中央部にまく。この際、本体と連結するチューブコネクターが患者側に向くようにする。さらに、ゆるみがないように赤い紐をひっぱりながらまきつけることが大切である。
先ほどのビニール袋の端を折り返し、タニケットが汚れるのを予防する。
チューブコネクターの部分のビニールに小さな穴をあけ、完成。
日本医科大学形成外科では上肢手術のタニケット圧は250mmHgで固定、1回の駆血時間を90分までとしているよ。駆血を解除して30分以上経過したら再び駆血可能だよ。駆血圧の設定は、施設によって若干の違いがあるので、上司に確認してみるといいよ。
■ Step 3
- スクラビングする。
- この際、下に吸水シーツを必ず敷く。
- 日本医科大学形成外科では、外傷などで汚染が強い場合は、まず手洗い用スポンジとイソジンスクラブで入念に洗う(汚染がない症例では、この行程をスキップしている)。
- その後、イソジンスクラブの泡を生食で洗い流した後、イソジン綿球→ハイポ綿球で再度消毒する。
各施設で"お作法"があるよ。全例で、術者が手洗いするときのように、手術用スポンジ、イソジンスクラブでスクラビングする施設もあるよ。
汚染が強い場合は、まず手洗い用スポンジとイソジンスクラブで患部をきれいにする。
さらにイソジン綿球で全体を消毒し、さらにハイポでイソジンを脱色する。
イソジンを洗い流さず、そのままストッキネットをする施設もあるよ。ただ、イソジン焼け(イソジンによる接触性皮膚炎)のリスクがあること、皮膚軟部の手術が多いため、皮膚の色調を確認したいこともあり、ハイポで脱色するようにしているよ。
■ Step 4
- ドレーピングする。
- ドレーピングにはディスポーザブルの不織布滅菌シーツを4枚使う。
- まず1枚目を手術台の上に敷き、その上から2枚目を敷く。2枚目は、患者側を下の写真のように折り返す。
- 次に、上肢をストッキネットで被覆する。
- 3枚目は患者の上半身にかぶせる。そして、下写真の①〜④の流れで布鉗子×4個で固定する。
- 最後に4枚目を患者の下半身にかぶせる。
まず1枚目を手術台の上に敷き、その上から2枚目を敷く。2枚目は、患者側を折り返す。
下布を上布よりも少し長く折り返し、下布で上布を捻り込むようにして、最後は布鉗子でとめる。
この際、布鉗子で皮膚を咬まないように、十分に注意してね。
ストッキネットは手術する部分のみをカットするよ。手術時間が経過すると汗や皮脂などから常在菌がでてくるので、それによる創感染を予防するためだよ。