形成外科 皮膚科

【診療Tips】保険適応レーザー治療の対象疾患・算定ルール・病院の探し方

1. 保険適応の基本条件

レジデント
レーザーは自費ではないですか?
多くは自費なんだけど保険が効くレーザー治療があるよ。
指導医
  • レーザー治療が保険で算定できるのは、「疾患の治療」が目的である場合のみです。
  • 美容目的(シミ・肝斑・しわ・ほくろ等)の場合は算定不可で自由診療(10割負担)となります。

算定不可の例
加齢によるシミ、そばかす、肝斑、ニキビ跡、傷跡、しわなど美容目的の照射

 

2. 対象疾患一覧(保険適応)

病変の色調 疾患名 照射療法区分 備考
青あざ 太田母斑、異所性蒙古斑 Qスイッチ付ルビー/アレキサンドライト/ヤグ ルビーは5回まで
茶あざ 扁平母斑(茶あざ) Qスイッチ付ルビー 2回まで
赤あざ 単純性血管腫(ポートワイン母斑)苺状血管腫(乳児血管腫)毛細血管拡張症 色素レーザー 回数制限なし
その他 外傷性色素沈着 Qスイッチ付レーザー ルビーは5回まで
レジデント
レーザー照射の回数制限が「ある」あざと、「ない」あざがあるんですね。

 

3. 算定区分と点数(2025年4月現在)

J054-2 皮膚レーザー照射療法(一連につき)

① 色素レーザー照射療法

  • 2,712点

  • 照射面積加算:10cm²を超えるごとに+500点(最大+8,500点)

適応疾患
単純性血管腫、苺状血管腫、毛細血管拡張症

色素レーザー


② Qスイッチ付レーザー照射療法

照射面積 点数
4cm²未満 2,000点
4~<16cm² 2,370点
16~<64cm² 2,900点
64cm²以上 3,950点

対象レーザー

  • Qスイッチ付ルビーレーザー

  • Qスイッチ付アレキサンドライトレーザー

  • Qスイッチ付ヤグレーザー

Qスイッチ付レーザー


③ 乳幼児加算

  • 3歳未満の患者に施行した場合 +2,200点

 

4. 回数制限とルール

照射療法 対象疾患 回数上限
ルビーレーザー 太田母斑・異所性蒙古斑・外傷性色素沈着 5回まで(同一部位)
ルビーレーザー 扁平母斑 2回まで(同一部位)
アレキサンドライト・ヤグ 太田母斑・異所性蒙古斑・外傷性色素沈着 制限なし
色素レーザー 単純性血管腫・苺状血管腫・毛細血管拡張症 制限なし
レジデント
ルビーレーザーは回数制限がありますが、それが終了した後はどうしたらいいのですか?
多くは自費診療に切り替えて照射を続けることが多いよ。
指導医

 

5. 「一連」の取り扱い

  • 「一連」=概ね3か月間の治療過程

  • 同一部位に複数回照射しても、3か月間に1回しか算定できない

  • 例:1か月に3回照射 → 3回分まとめて1回算定

  • レセプトには一連の治療開始日を摘要欄に記載

 

6. 部位ごとの算定

  • 算定は以下の身体部位ごとに行える
    頭頚部/胸腹部または背部(臀部含む)/左上肢/右上肢/左下肢/右下肢

  • 部位が重複しない別疾患であれば、それぞれ算定可能。

 

7. 実施病院を探す方法

① 日本形成外科学会の病院検索

② 大学病院・母子医療センター

  • 小児血管腫・太田母斑は小児専門施設や母子医療センターでの治療が中心。

③ 事前電話確認

  • 同じレーザー機器でも美容目的のみ自費診療の施設があるため、
    「〇〇病名で保険適応のレーザー治療が可能か」を確認する。

どの病院・クリニックで保険レーザーを扱っているか、ホームページからだけだとわかりづらいことが多いよ。電話で確認するのが確実だね。
指導医

 

まとめ

  • 疾患治療のみ保険算定可能、美容目的は不可。

  • 「色素レーザー」と「Qスイッチ付レーザー」で対象疾患と回数制限が異なる

  • 特にルビー使用時は扁平母斑2回、太田母斑・蒙古斑・外傷性色素沈着5回までと厳密管理が必要。

  • 3か月=一連ルールと、レセプト摘要への記載を忘れずに。

レーザー治療後は皮膚が一時的にデリケートな状態になり、乾燥・摩擦・紫外線が刺激となって赤みや色素沈着を悪化させることがあるよ。 自宅でのケアをしっかり行うことで、治療効果を高め、合併症を防ぐことができるよ。
指導医

 

レーザー後は皮膚バリアが低下するため、刺激の少ない保湿剤が必須だよ。ワセリンは防腐剤や香料を含まず、レーザー後でも安心して使用できるよ。
指導医

 

 

レーザー後は紫外線に非常に敏感になるよ。 低刺激・ノンケミカルタイプの日焼け止めを選ぶことが重要だよ。
指導医

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小野真平(形成外科医)/ Shimpei Ono(Plastic Surgeon) 

日本医科大学形成外科学教室 准教授/医師。Advanced Medical Imaging and Engineering Laboratoryを主宰。 手足の形成外科、マイクロサージャリー、再建外科を専門とし、臨床・研究・教育に従事。可動式義指の開発、VR教育、3D超音波や医用画像工学の応用、PROsを重視した研究を展開。 美術解剖学や医療イラストレーションにも造詣があり、芸術と医学の融合をテーマに講演・執筆。教育活動では学生・研修医指導のほか、東南アジア医学研究会(Ajiken)部長として国際医療交流・災害医療にも取り組む。

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