形成外科
【保険診療Tips】デブリードマンと創傷処理のデブリードマン加算 Key Point Summary
「デブリードマン(K002)」と「創傷処理(K000)のデブリードマン加算」を区別する。
デブリードマン(K002)は、将来的な皮膚移植(植皮 or 皮弁)を要するキズでないと請求できない。
デブリードマン(K002)には、深部加算(1000点)がある。
創傷処理で請求可能な条件 = 局麻して糸を使う(=結紮や縫合)場合。
創傷処理には、デブリードマン加算(100点)と真皮縫合加算(460点)がある。
Q & A
デブリードマンとデブリードマン加算の違い
レジデント
この前、外来手術で「デブリードマン<100cm2 」で請求したら、外来医事課の担当者に「創傷処理のデブリードマン加算のことですか?」と聞かれたんですが…
デブリードマン(K002) と
創傷処理(K000) は、全く別の術式だよ。だからKコードも違う。デブリードマン(K002)は、局所麻酔をして壊死組織を除去する手術で、将来的に皮膚移植(植皮や皮弁)をしないといけないようなキズでないと請求できないよ。皮膚移植をするほどのキズでなければ局麻していても創傷処置になるよ。
指導医
ポイント
デブリードマンは、局麻して壊死組織を除去する手術。 創傷処理は、局麻してキズを縫合する手術。
創傷処理は局麻して糸で縫合する
レジデント
なるほど!...では、創傷処理ってどんな時に請求できますか?
創傷処理(K000)は、キズを縫う手術だよ。つまり、局所麻酔して糸を使う(=結紮や縫合)と覚えておくといいよ。キズの縫う手術だから、「長径<5cm」、「長径≧10cm」のように、縫合を要する長さで点数が異なるよ。
指導医
レジデント
頭部の挫創で、局所麻酔しないでステイプラーで縫合した場合はどうなりますか?
その場合は
創傷処置(J000) になるよ。創傷処置はJコードになるので、手術ではないよ。ちなみに局所麻酔してステイプラーしたら創傷処理で請求できるよ。ステイプラーは糸ではないけど縫合とみなされるんだ。
指導医
ポイント
局所麻酔をしないステイプラー縫合や切開排膿は、創傷処置(J000)となる。
創傷処理の加算は2つ:デブリードマン加算と真皮縫合加算
レジデント
加算は2つあるよ。汚染された挫創に対してデブリードマンを行った場合は、デブリードマン加算100点を請求できるよ。あと、露出部の創傷にたいして真皮縫合した場合は、真皮縫合加算460点が請求できるよ。
指導医
ポイント
創傷処理では、
① デブリードマン加算(100点)と
② 真皮縫合加算(460点)
の2つがある。
レジデント
デブリードマン(K002)と創傷処理のデブリードマン加算が今回の混乱の元だったんですね!
そう、ここは紛らわしいよね。創傷処理のデブリードマン加算は、キズを縫合しようとしたけど創縁の挫滅が強くてトリミングしてから縫合したような時に請求できるよ。
指導医
創縁のトリミング
創傷処理の加算は1つ:深部加算
あと余談だけど、デブリードマンにも深部加算っていう加算があるよ。1000点なので、けっこう高額。
指導医
レジデント
骨、腱、筋肉の露出を伴う損傷について、当初の1回だけ請求可能だよ。
指導医
ポイント
デブリードマンには深部加算(1000点)がある。 骨、腱、筋肉が露出するような損傷に対して、初回のみ請求可能。
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小野真平(形成外科医)/ Shimpei Ono(Plastic Surgeon)
日本医科大学形成外科学教室 准教授/医師。Advanced Medical Imaging and Engineering Laboratoryを主宰。
手足の形成外科、マイクロサージャリー、再建外科を専門とし、臨床・研究・教育に従事。可動式義指の開発、VR教育、3D超音波や医用画像工学の応用、PROsを重視した研究を展開。
美術解剖学や医療イラストレーションにも造詣があり、芸術と医学の融合をテーマに講演・執筆。教育活動では学生・研修医指導のほか、東南アジア医学研究会(Ajiken)部長として国際医療交流・災害医療にも取り組む。
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