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【診療Tips】ケナコルトが手に入らないときの代替薬は?関節内注射やケロイド治療に使えるステロイド注射薬を徹底解説【保存版】

はじめに

  • 近年、ケナコルト(トリアムシノロンアセトニド注射液)の流通が滞っており、関節内注射やケロイド治療に使う薬剤を変更せざるを得ないケースが増えています。
  • このように、ケナコルトを使用することができない場合、代替薬を検討することが重要です。
  • 本記事では、ケナコルトの代わりに使用できる他のステロイド注射薬の特徴、保険適応、投与量目安について詳しく解説します。
  • 特に、ケナコルトが推奨される症例に合った選択肢についても考慮しましょう。

本記事は医療者を対象とした情報共有を目的としております。実際の投与量は、必ず投与を行う医師の責任の下で最終決定してください。
指導医

1. ケナコルトとは?

  • ケナコルトは、中長時間作用型のステロイド注射薬で、強い抗炎症作用と持続性が特徴です。

ケナコルト-A注40mg/1mL

ケナコルト-A水懸注50mg/5mL

 

ケナコルトは、懸濁液(結晶懸濁型)として製剤化されており、注射した部位に長くとどまることで、持続的な抗炎症作用を発揮するよ。これが、ケナコルトの「中長時間作用型」という特徴の理由だよ。
指導医

 

  • 主な使用用途は以下の通りです。
    • ケロイド・肥厚性瘢痕への局所注射

    • 関節内注射(手指の変形性関節症、関節リウマチなど)

    • アレルギー疾患(鼻アレルギーなど)

  • しかし近年、製造・流通が不安定になっており、代替薬への切り替えが課題となっています。
  • その際、代替薬の投与量・濃度が問題になることが多いです。

 

 

2. 代替として使用される主なステロイド注射薬

 

デカドロン注射液2mL中6.6mg(3.3mg/mL)

プレドニン注射液1mL中10mg

 

① 各ステロイド注射薬の比較

薬剤名 主成分 製剤型 作用発現 持続性 ケナコルト4mg換算量 特徴
ケナコルト-A注射液(KENACORT-A) トリアムシノロンアセトニド 懸濁型(結晶型)水に溶けにくく、注射部位にとどまる 遅い(徐々に効く) 局所で長く作用(中長時間作用型) 1(4mg=4mg) 注射部位にとどまり持続的に炎症を抑える。関節内注射、腱鞘内注射、ケロイド治療が唯一適応
プレドニン注射液(Predonine Injection) プレドニゾロン 水溶性 速い(即効性あり) 短時間作用型 5mg 即効性があり急性炎症に有効。広がりやすいが持続性は短い。関節内・腱鞘内注射に使用可。ケロイドは適応外。
デカドロン注射液(Decadron) デキサメタゾンリン酸エステルナトリウム 水溶性 速い(即効性あり) 全身で長く作用(長時間作用型) 0.75mg 少量で強力。関節炎、重症アレルギー反応などに使用。腱鞘内注射・ケロイドは適応外。
指導医
デカドロンは少量で強力に全身で長く作用する!

 

② 各ステロイドの適応のまとめ

用途 ケナコルト プレドニン デカドロン
ケロイド ◯ 適応あり
関節内注射
腱鞘内注射
  • ケロイド治療では、添付文書上はケナコルトのみが保険適応。

  • しかし流通不足時は、臨床上やむを得ずプレドニンを代替薬として使用せざるを得ない

  • その際は以下を徹底することが重要:

    1. 患者への十分な説明と同意取得(IC)

    2. 診療録への記載

    3. 保険請求名目の慎重な判断

  • プレドニンは水溶性で持続時間が短いため、効果の持続性はケナコルトよりやや劣ることを考慮し、投与間隔や治療計画を調整する必要があります。

 

3. 使用場面ごとの投与量目安

以下はあくまで一般的な参考値だよ。 実際の投与量は医師が患者さんの症状や状態を考慮して決定するよ。
指導医

① ケロイド治療(局所注射)

  • ケナコルト:1回 2.5〜10mg

    この際、ケナコルトの投与量を正確に把握することが重要です。

  • プレドニン注射液:ケナコルト換算で 3〜12mg

  • デカドロン:ケナコルト換算で 0.5〜2mg

ポイント

  • ケロイドへの局所注射は、総投与量が10mg以内/1回を目安とします。
  • 複数部位に注射する場合は、全身投与量に注意が必要です。

② 手指変形性関節症の関節内注射

  • ケナコルト:1関節につき 2〜10mg

  • プレドニン注射液:ケナコルト換算で 3〜12mg

  • デカドロン:ケナコルト換算で 0.5〜2mg

ポイント

  • 手指の変形性関節症への関節内注射は、1関節につき2〜10mgを目安とします。
  • DIP関節(第1関節)やPIP関節(第2関節)では2〜4mg程度が多い
  • MP関節や手関節では5〜10mgとやや多めに使うこともある
  • 同一関節には3ヶ月以上間隔をあけて投与することが推奨されます。
  • 短期間での繰り返し注射は、軟骨破壊や感染リスクが高まります。
ケナコルトとプレドニンは似ていて、語呂合わせで、「ニコ(2)ッと(10)注射」で2-10mg注射と覚えておくといいね。
指導医

 


まとめ

  • ケナコルトが不足している場合、水溶性プレドニンデカドロンなどが代替薬として使用されます。

  • 各薬剤は作用時間・強さ・保険適応が異なります。

  • B!