# 顎がはずれた=顎関節脱臼
・下顎頭が関節結節を乗り越えて前方移動し、元に戻せなくなった状態。
・下顎が前方にずれる前方脱臼の頻度が高い。
・原因:大きな開口時(あくび、大笑い、歯科処置など)に生じる。
・若い人のあくびや大笑いだけでなく、脳梗塞・出血後やParkinson病、心因的因子やジストニア様薬物作用でも生じる。
・既往のある人では習慣性脱臼になりやすい。
■ 臨床所見
・症状:疼痛、閉口できない→流涎、会話困難、嚥下困難
・顔が面長になる
・耳前部の陥凹
・片側脱臼の場合は、下顎骨は患側が下がって斜めになる
■ 検査
・外傷により発症した場合は骨折が否定できないため、顔面骨CTを撮影する
★歯科領域でよく用いられるパノラマX線でも良いが、夜間・休日は対応していない施設が多い。
■ STEP 1:整復
・1番オーソドックスなHippocrates法(徒手整復の一種)を紹介する。
・患者は座位でも臥位でもよいが、後頭部が後に下がらないようにするための"支え"(背もたれや枕)があったほうがよい。
・術者の母指を患者の下顎臼歯(奥歯)に置き、残りの4指で下顎を把持する(下の写真)。
・手順:
①下顎全体を下方に下げて(これで関節が緩む)、
②母指は下方向の力を加えつつ、残り4本の指で前歯部を持ち上げて、
③下顎全体を後方に押し込む
→ゴリッという下顎頭が関節結節を乗り越える感触が得られる
★脱臼整復全般にいえることだが、関節を緩めるために患者をリラックスさせながら整復することがコツである。
★コミニュケーションがとれる患者の場合、②〜③にかけて軽く噛む動作をしてもらうと整復しやすい。
★コミニュケーションがとれない患者の場合、術者の母指を噛まれる危険があるためバイトブロックなどを併用したほうがよい。
■ STEP 2:固定
・開口制限をおこなう。
・固定具:
(i) チンキャップ(おとがい帽)などを装着する。
(ii) 夜間・休日は入手困難なため、弾性包帯(バートン包帯)で対応する。
・日常生活での注意点:
(a) 食事や会話で口を大きく開けない。
(b) あくびの際は手で頤を支える。
(c) 硬い食べ物を避ける。
※以上を数週間〜数ヶ月続ける(明確な基準はない)。
・歯科口腔外科受診をすすめる。
■ コスト
・顎関節脱臼非観血的整復術(K430)