Key Point Summary
爪周囲炎・爪周囲膿瘍 = 爪周囲の感染。 ささくれが原因のことが多い。 治療は切開排膿、爪が干渉している場合は部分抜爪するとくすぶらない。 感染が広がると瘭疽に移行することがある。
Q & A
Outline
【定義】
- 爪周囲炎・爪周囲膿瘍とは、爪周囲の感染のこと。
- 爪周囲炎・爪周囲膿瘍の原因は、爪噛み、ささくれ、深爪、マニキュア、軽微な外傷、乳児の指しゃぶりなどである。
- 原因菌は、黄色ブドウ球菌や緑膿菌の割合が多いが、慢性経過のものでは結核菌や真菌の感染もある。
- 側爪郭の感染(paronychia)が一般的であるが、後爪郭にも生じうる(eponychia)。
【臨床所見】
- 発症早期は、爪郭に発赤、腫脹、熱感、圧痛を認める(=爪周囲炎)。
- 未治療のまま経過すると、膿瘍を形成し爪郭にそって徐々に広がっていく(=爪周囲膿瘍)。さらに爪下→指腹部に感染が広がると、瘭疽(ひょうそ)に移行することもある。
■ Step 1
- 爪周囲炎は抗生剤、軽症の爪周囲膿瘍は無麻酔で18G針 or 11番メスで膿瘍切開ドレナージ、中等症〜重症の爪周囲膿瘍は指ブロックをして爪を部分抜爪する。
- 1%キシロカイン10ccで指ブロック注射(患部への局所麻酔注射は激痛のため、趾の付け根にブロック注射をする)。
- 麻酔が効くまで5分待つ(通常は3分程度でよいが、炎症が強いと麻酔が効くまでに時間がかかる)。
- その間にモスキートペアンとメイヨー剪刀(先端が鈍なもの)を準備する。
■ Step 2
- 下写真のようにモスキートペアンを用いて食い込んでいる爪(通常2〜3mm)とその周囲の皮膚を剥がす。
モスキートの先端を後爪郭と爪の間にグッと5mmほど押し込んで、ゆっくりと先端を広げることで剥離する。爪周囲膿瘍では必ずしも部分抜爪の必要はないが、せっかく指ブロック麻酔までしたのであれば、食い込んでいる爪を切除しておいたほうが劇的な症状改善が期待できる。
■ Step 3
- メイヨー剪刀で食い込んでる爪を縦方向にカットする。
- すると食い込んでいた爪が容易に部分抜爪される。
部分抜爪なので将来的に爪はまた生えることを患者に説明しておく。
■ Step 4
- 爪を切除後に爪下にも膿瘍形成を認めることがある(瘭疽への移行過程)。
- 開放創に対してメイヨー剪刀を垂直に刺入して先端をゆっくりとひろげることで深部膿瘍を十分に開放する。
■ Step 5
- 生理食塩水100ccで十分に洗浄する。
- その際に指をミルキングして(=膿を絞り出すようにして)、深部から膿がでてこないことを確認する。
感染創は閉じないで開放創管理とするのが基本!
■ Step 6
- 止血材(ソーブサン or カルトスタット)とガーゼをあてて、布テープでガッチリと固定する。
軟膏を塗布してもよいが、創面からジワジワ出血していることが多いので、まずは止血を優先して、翌日から軟膏処置としている。
膿瘍は開放するのが基本であって、軟膏で治すものではない。
■ Step 7
- 当日は自宅内で安静にして、患手は心臓より高い位置に挙上し、保冷剤で1〜2時間冷却する。
- 当日は入浴、お酒、激しい運動は×。
- 翌日〜自宅処置(シャワー洗浄、軟膏、ガーゼを1日1回)を開始し、1週間後を目途に形成外科 or 整形外科 or 皮膚科を受診する。
術翌日の処置時にソーブサンを無理に剥がすと痛いため、流水に浸しながらゆっくりと剥がすとよい。処置に不安の強い患者は翌日再診を指示する。
■ 処方箋
- ケフラールカプセル(250mg) 1回1錠 1日3回 毎食後 3日分
- ロキソニン錠(60mg) 1回1錠 1日3回 毎食後 3日分
- ムコスタ錠(100mg) 1回1錠 1日3回 毎食後 3日分
- ゲンタシン軟膏 10g 1本 or イソジンゲル 4g 1本
■ コスト
- 皮膚切開術(K001)
爪を部分抜爪していれば爪甲除去術(K089)でも請求できるが、保険病名(膿瘍)に対しては皮膚切開術のほうがしっくりくる。
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