Key Point Summary
前額部骨腫(osteoma)は、良性の骨腫瘍である。 骨腫(osteoma) ≠ 外骨腫(exostosis)。 ※ 外骨腫は骨軟骨腫(osteochondroma)と同義である。 中年女性の前額に好発し、固く、円形で、ドーム状に隆起した病変である。 整容面の改善目的に手術することがある。
Q & A
Outline
【概要】
- 前額部骨腫(osteoma)は、良性の骨腫瘍である。
- 原因は不明。
- 前額部のしこりは、脂肪腫が最多であるが、固くて深部との可動性が不良な場合、骨腫であることが多い。
- 中年女性の前額に好発し、固く、円形で、ドーム状に隆起した病変である。
- 通常、触診で診断がつくが、画像検査(エコーやCT)で確認してもよい。
- 整容面の改善目的で手術になることがある。
- 多発性の骨腫を認める場合、ガードナー症候群(多発性の骨腫、家族性大腸腺腫症,皮膚嚢腸管膜などの線維腫,顔面・頭部の表皮嚢腫を併発する)の可能性がないか問診する。
Step by Step
■ Step 1
- 皮膚切開線を作図する。
皮膚切開線は生え際や前額の深い皺にあわせることで整容アウトカムが良くなる。
滑車上神経、眼窩上神経の走行を確認し、腫瘍の位置が神経に近いようであれば術中の剥離の際に注意を払いながら骨膜下にアプローチする。
■ Step 2
- 1%Eキシロカインで局所浸潤麻酔する。
局所麻酔は皮膚直下と深部(骨膜上)に注入する。
局所麻酔でも手術可能であるが、患者が顔周りの骨をいじる手術を受けることにたいして恐怖心が強い場合は、全身麻酔で手術することもある。
■ Step 3
- 15番メスで皮膚→前頭筋→骨膜の順に切開する。
神経の走行位置を意識して、レイヤー(層)ごとに剥離をすすめる。
神経が走行している可能性がある場合は、まず皮膚を切開し、神経を損傷しないように筋鉤で軟部をわけて前頭筋→骨膜の順にアプローチする。
前額部には帽状腱膜は存在しない(正中部以外)。
通常は、前額部には帽状腱膜はなく、前頭筋の下は骨膜になる。
■ Step 4
- 骨膜下トンネルを作る場合は、エレバラスパや剥離剪刀を用いて骨腫までの通路を確保する。
■ Step 5
- 骨用平ノミで骨腫の立ち上がり部から骨腫をすくうように少しずつ優しくハンマーで打ち進めていく。力は要さない。
前頭骨と骨腫の境界は不明瞭なことがある。
手外科や耳鼻科用の先が細くて平らな小型のノミが望ましい。
■ Step 6
- 骨腫をモスキートで把持して摘出する。病理組織検査に提出する。
■ Step 7
- 生理食塩水で洗浄、バイポーラで止血する。
■ Step 8
- 筋膜縫合:4-0PDSII、皮膚縫合:6-0ナイロン
■ Step 9
- ガーゼや水に浸して絞った綿球を厚めに折り畳んで圧迫しながら布テープで固定する(血腫や漿液腫を予防する目的)。
布テープでかぶれないように皮膚被膜剤スプレーを散布するとよい。
■ Step 10
- 自宅でもガーゼの上から保冷材で冷却して、患部の安静を保つ。
- 入浴、お酒、激しい運動×
- 翌日から自宅でシャワー洗浄処置とする。シャワー洗浄(石鹸、シャンプーも可)、タオルで水分をふきとって、ゲンタシン軟膏、ガーゼテープ。
- 抜糸は術後1週で可能である。
翌日以降の内出血、眼瞼浮腫のリスクを説明しておく。
■ 処方箋
- ケフラールカプセル(250mg) 1回1錠 1日3回 毎食後 3日分
- ロキソニン錠(60mg) 1回1錠 1日3回 毎食後 3日分
- ムコスタ錠(100mg) 1回1錠 1日3回 毎食後 3日分
- ゲンタシン軟膏 10g 1本
■ コスト
- 骨腫瘍切除術(K052)