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【Step by Step 手術手技】グロームス腫瘍(爪床下編)

 

Outline

【概要】

外観上ははっきりしないが、明らかな圧痛点がある。日によって暗紫色の円形が透見できるとのこと。爪半月の変形を生じてることがあるため、健常な爪との比較観察も重要である。

 

 

Step by Step

■ Step1 

  • 手術は局所麻酔でおこなうことが多い。
  • 1%キシロカイン10cc指ブロック注射する。
  • 麻酔がきくまで3分待つ。
  • 指タニケットを使用して、無血野で手術する。

ルーペ or 顕微鏡を使用しての手術が望ましい。

 

 

■ Step 2

  • 腫瘍直上にコの字状に切開線を作図する。

抜爪は術後の疼痛や爪変形を誘発するので×。

切開デザイン

 

 

■ Step 3 

  • 爪甲をメスでコの字に切開し、中枢側を茎にして弁状に挙上する。
  • 腫瘍が爪甲下に存在するタイプではこの段階で何もみえない。

コの字にカットした爪甲を翻転する際にはモスキートを用いると操作しやすい。

カットしたコの字の爪をめくる。
めくる際にモスキートを使用するとよい。



爪床下のグロームス腫瘍の場合はこの段階では腫瘍はみえない。写真の白くみえている部分は爪床である。

 

 

■ Step 4 

  • 爪床を15番(or 11番)メスで縦切開すると、すぐ直下に透明(or ややピンク色)で、境界明瞭な腫瘤を確認できる。

爪床下を縦切開すると腫瘤を確認することができる。

 

 

■ Step 5

  • 先の細い剥離鉗子エレバラスパ先の小さな鋭匙等で腫瘍を周囲から剥離する。
  • 摘出した腫瘍を病理検査に提出する。

エレバラスパのエレバを爪床と腫瘍の間に潜り込ませるように剥離すると爪床の損傷を最小限にできる。

爪床を極力損傷しないようにすることで術後の爪変形を最小限にすることができる。爪床を鑷子で不用意に把持して損傷しないように注意する。

先の小さな鋭匙で腫瘤をすくうように摘出する。

エレバラスパ:エレバ(左側)とラスパ(右側)からなる。左側のエレバを爪床下と腫瘍の間に潜り込ませるように剥離する。

 

 

■ Step 6

  • 摘出した腫瘍を病理検査に提出する。

境界明瞭な円形の腫瘤を摘出した。

 

 

■ Step 7

  • 生理食塩水で洗浄する。

生理食塩水で洗浄する。

 

 

■ Step 8

  • 爪甲をもとに戻して6-0ナイロンで2ヵ所程度、縫合する。

爪下血腫のドレナージを効かせたいので、密に縫合しないほうがよい。

爪床を縦切開して腫瘍を摘出した場合は、6−0バイクリル等で爪床を縫合する場合もある。ただし、無理に縫合して爪床を損傷するぐらいであれば、縫合せずにそのまま爪甲でカバーして治癒させたほうが成績がよいと思われる。

直径3mmまでの爪床欠損は自然治癒する。それ以上の欠損では、人工真皮や足趾からの爪床移植を考慮するが、グロームス腫瘍の摘出術ではその適応は稀である。

 

 

■ Step 9

  • 当日は、安静、患部冷却、患手挙上とする。
  • 翌日〜自宅処置(シャワー洗浄、軟膏、ガーゼを1日1回)を開始する。通常は2〜3日で出血の浸みだしはなくなる。
  • 術後2週間で抜糸する。
  • 抜糸後にカットした爪甲が浮くようであればサージカルテープで固定継続または市販のトップコート(爪の補強ジェル)で補強する。浮かなければ、そのまま爪が生え代わるのを待つ。

 

 

■ 処方箋

  • ケフラールカプセル(250mg) 1回1錠 1日3回 毎食後  3日分
  • ロキソニン錠(60mg) 1回1錠 1日3回 毎食後 3日
  • ムコスタ錠(100mg) 1回1錠 1日3回 毎食後 3日分

 

  • ゲンタシン軟膏 10g 1本

 

 

■ コスト

 

 

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Shimpei Ono (Plastic Surgeon)

Associate Professor, Department of Plastic and Reconstructive Surgery, Nippon Medical School. He specializes in hand and foot plastic surgery, microsurgery, and reconstructive surgery, and is involved in clinical practice, research, and education. His research interests include the development of movable prosthetic fingers, VR education, application of 3D ultrasound and medical imaging engineering, and emphasis on PROs. He also has an interest in art anatomy and medical illustration, and lectures and writes about the fusion of art and medicine. In his educational activities, in addition to teaching students and residents, he is also involved in international medical exchange and disaster medicine as the director of the Association for Southeast Asian Medical Research (Ajiken).

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