Key Point Summary
耳瘻孔(耳前瘻孔)は生まれながらに耳周囲に認める瘻孔のこと。耳輪前縁部発生が約50%を占める。
耳前部の化膿性病変を見つけたら、耳瘻孔の感染を疑い、開口部を意識して探すようにする。
治療は瘻管の摘出。24Gサーフローやピオクタニン液を使用して、取り残しのないように注意する。
Q & A
Outline
【解剖】
【概要】
- 生まれながらに耳介周囲に孔を認める(両親、本人もきづいていないことがある)。
- 多くは無症状であるが、瘻孔内に垢が溜まって化膿すると炎症性粉瘤のように患部が赤く腫れあがる。
【疫学】
- 典型例では耳輪前縁部に開口部(孔)があり、瘻孔を認める。瘻孔開口部の位置は様々であり、瘻孔の長さや深さも症例によって異なる。
- 発生頻度:5〜10%、両側性のこともある。
【治療】
- 化膿している→切開排膿。
- 化膿していない→手術で瘻孔の完全摘出をおこなう。
小児期に耳瘻孔を認め、且つ、化膿歴がない場合、手術時期が悩ましい。個人的には局所麻酔が可能な8歳以降になるのを待ってから手術でよいと考えるが、炎症がおこる前に(8歳未満でも全身麻酔で)手術したほうが良いという意見もある。
Step by Step
■ Step 2
- 1%Eキシロカイン(27〜30G針)で局所浸潤麻酔する。
耳瘻孔の盲端部は耳介軟骨上に接することがあり、深部まで十分に麻酔をまく。深部の局所麻酔は術中に追加してもよい。
■ Step 3
- 24Gサーフローのカテーテル(外筒)を孔に刺入し、6−0ナイロンなどで縫着する。
サーフローを留置すると、内腔が虚脱しづらく、ある程度の固さがあるため耳瘻孔を外側から剥離する際にわかりやすい。
ピオクタニンで瘻孔を染色する際には、注入するというよりは内腔に色をつける程度に考えた方がよい。ピオクタニンで術野全体が青く染まってしまうと逆に解剖が分かりづらくなる。
個人的には、サーフローの外筒にピオクタニンで色をつけて耳瘻孔内に留置し、内腔が虚脱しないようにしながら手術するのがやりやすい。
■ Step 4
- サーフローの固さを感じながら耳瘻孔の外側を剥離していく。
- 耳側と盲端部には軟骨を触れることが多い。
剥離中に万が一サーフローが露出するようであれば、その外側の層に戻って剥離を再開する。
■ Step 5
- 摘出した耳瘻孔を病理検査に提出する。
瘻孔の取り残しがあると、丸い内腔がみえる。再度、内腔にサーフローを留置して確実に切除する。取り残しがあると確実に再発する。
瘻孔が耳介軟骨に付着していることが多く、軟骨を一部切除することがある。
■ Step 6
- バイポーラで止血し、十分に洗浄する。
■ Step 7
- 4-0PDS(or 5-0PDS)で真皮縫合する。
過去に感染したことがある症例、死腔が大きい症例ではペンローズを留置したほうが安全である。
■ Step 8
- 表層縫合 6−0ナイロン
■ Step 9
- ガーゼと布テープで軽く圧迫しながら固定する。
■ 術後
- 手術当日は自宅でもガーゼの上から保冷材で冷却して、患部の安静を保つ。
- 入浴、お酒、激しい運動×
- 翌日から自宅でシャワー洗浄処置とする。シャワー洗浄(ペンローズ留置中は洗浄のみで石鹸・シャンプーは不可)、タオルで水分をふきとって、ゲンタシン軟膏、ガーゼテープ。
- 術後1〜3日後にペンローズ抜去する。
- 術後1週を目途に抜糸する。
■ 処方箋
- ケフラールカプセル(250mg) 1回1錠 1日3回 毎食後 3日分
- ロキソニン錠(60mg) 1回1錠 1日3回 毎食後 3日分
- ムコスタ錠(100mg) 1回1錠 1日3回 毎食後 3日分
- ゲンタシン軟膏10g 1本
■ コスト
- 先天性痔瘻管摘出術(K287)
■術後経過
- 術後1ヶ月