Key Point Summary
骨内に硝子軟骨を形成する良性の骨腫瘍である。手の骨腫瘍のなかで最も多い。 単発性と多発性がある。内軟骨腫が体の片側に多発する場合はOllier(オリエール)病、多発性内軟骨腫に血管腫を合併するとMaffucci(マフッチ)症候群と呼ばれる。 放置すると病的骨折をきたすことがある。 治療は、病巣掻爬と人工骨移植が一般的である。
Q & A
Outline
【概要】
- 骨内に硝子軟骨を形成する良性の骨腫瘍である。手の骨腫瘍のなかで最も多い。
- 単発性と多発性があり(多くは単発性)、体の片側に多発する場合はOllier(オリエール)病、血管腫を合併するとMaffucci(マフッチ)症候群と呼ばれる。
- 放置すると病的骨折することがある。そのため、皮質骨の菲薄化が強く、病的骨折が懸念される症例が手術適応となる。
- 治療は、病巣掻爬と人工骨移植が一般的である。
【画像】
- 本症例では、隣接指の外傷でレントゲン撮影した際に、たまたま末節骨の内軟骨腫が見つかった。
Step by Step
■ Step 1 麻酔
- 病変部が末節骨、中節骨、基節骨遠位にある場合は指ブロック&指タニケット下にて手術をおこなう。
- 病変部が基節骨近位や中手骨にある場合は、伝達麻酔や全身麻酔を選択する。
- 指タニケットや上肢タニケットを使用して、無血野で手術する。
肉眼での手術はオススメしない。ルーペ or 顕微鏡を使用しての手術が望ましい。
■ Step 2 デザイン
- 皮膚切開線を作図する。
- 皮膚切開を側正中線に一致させた側方アプローチを選択する。
- 15番メスで皮膚に垂直に皮膚切開をする。
■ Step 3 皮膚切開
- 皮膚切開するとすぐ直下に内軟骨腫で膨隆した骨皮質を確認できる。
創縁は鑷子などで鈍的に把持しない。スキンフックを使用する。
■ Step 4 皮質骨の開創
- 術中X線透視下で、開創する部位の確認をする。
- 内軟骨腫直上の骨皮質は菲薄化していることが多いため、尖刀でも開創可能であることが多いが、困難な場合は、1mm程度のKワイヤーやエアトームを使用して四角形の骨孔を作成する。
- 開創時に切除した骨皮質は可能であれば、人工骨充填後に蓋として使用したいため生食ガーゼにくるんで保管しておく。
■ Step 5 病巣掻爬
- 骨孔から先端の小さな鋭匙を刺入して、内部のゼリー状物質を除去する。
腫瘍の取り残しがないように、鋭匙の位置をイメージで確認しながら、360°、正常な骨髄が出現するまで掻爬する。
■ Step 6 生食洗浄
- 生理食塩水で十分に洗浄する。
■ Step 7
- 骨孔から人工骨を空洞内に充填する。
- 空洞内全体に人工骨が充填されているかをイメージで確認しながら操作する。
■ Step 8
- 開窓時に保管しておいた骨片を蓋をするように戻す。
- 皮膚縫合 5−0ナイロン
- ガーゼドレッシングをする。アルフェンスシーネを併用して、術直後の患部の安静を保つとよい。
■ 術後
- 当日は、安静、患部冷却、患手挙上を徹底する。
- 術翌日〜自宅処置(シャワー洗浄、軟膏、ガーゼを1日1回)を開始する。
- 術翌日〜患指の自動運動と軽い他動運動を開始する。2〜3時間毎に1回が目安である。
- 術翌日〜日中は軽作業のみ可とし、夜間や外出時はアルフェンスシーネで患指を保護する。
- 術後2週間で抜糸、アルフェンスシーネもOFFする。
- 患指の荷重は、レントゲンをみながら術後1〜2ヶ月以後に許可する。
■ 処方箋
- ケフラールカプセル(250mg) 1回1錠 1日3回 毎食後 3日分
- ロキソニン錠(60mg) 1回1錠 1日3回 毎食後 3日分
- ムコスタ錠(100mg) 1回1錠 1日3回 毎食後 3日分
- ゲンタシン軟膏 10g 1本
■ コスト
- 骨腫瘍切除術(K052)
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