Key Point Summary
ばね指:屈筋腱の滑膜性腱鞘が何らかの原因で炎症(腱鞘滑膜炎)をおこし、ふくらみ(pseudonodule)を形成するのが原因である。 指伸展時に、このふくらみ(pseudonodule)がA1 pulley内にスムースに入れないのがひっかかりの原因である。 手術の本質は、靱帯性腱鞘(通常はA1 pulley)を切開し、ふくらみ(pseudonodule)と腱鞘のひっかかりを解消することである。 A1 pulley切開後にひっかかりが残存する症例では、A2 pulleyの近位 and/or A0 pulleyを切開することもある。
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Q & A
Outline
【解剖】
Step by Step
■ Step 1
- 手術は伝達麻酔または局所麻酔下でおこなう。
- 上肢ターニケットを使用して、無血野で手術する。
肉眼での手術はオススメしない。ルーペ or 顕微鏡を使用しての手術が望ましい。
局所麻酔下で手術する場合でも、上肢タニケットを併用したほうがよい。その場合、タニケットペインを予防するために、20〜30分以内に駆血を解除する。
■ Step 2
- 皮膚切開線を作図する。
- A1 pulleyの直上に斜めの皮膚切開線を作図することが多い。斜め切開は、さらに皮膚切開を追加しないといけない場合にzig-zag切開に移行しやすい。
A1 pulleyの位置を正確に同定することが重要である。患者の患指のA1 pulley直上を術者が指でおさえ、患者に患指を屈伸してもらうと、肥厚した腱鞘と引っかかり感(ゴリゴリする感じ)を触れる。
手掌皮線をランドマークとした場合、母指では手掌母指皮線の2〜3mm中枢、示〜小指では近位手掌皮線の橈側端と遠位手掌皮線の尺側端を結んだ線の5〜7mm末梢がA1 pulleyの中心となる。
中指と環指のA1 pulleyは指の正中に位置する。しかし、母指、示指、小指ではやや正中寄りにズレているので、注意を要する。
■ Step 3
- 1%Eキシロカイン10ccで局所麻酔をする。
- 上腕をターニケットで駆血する。圧は250mmHgである。
■ Step 4
- 15番メスで皮膚切開をする。
皮膚切開の際に、いきなり深く切り込まないようにする。深部の神経損傷のリスクがあるためである。
■ Step 5
- モスキート(曲)を刺入して、先端をゆっくりと広げることで皮下脂肪を左右にかきわけて、深部のA1 pulleyを確認する。
- さらに神経鉤をもちいて、A1 pulleyの全体像が露出するように展開する。
■ Step 6
- 神経鉤で十分に視野を確保しつつ、同時に、橈尺側の神経血管束を保護した状態で、A1 pulleyの正中を15番メスで切開する。
- この際、下の写真のように刃先を末梢側に向けて、A1 pulleyの中枢端から遠位に向かって切開していくとよい。
- 腱鞘が切れると深部に屈筋腱(FDS)が見える。滑液や滑膜が溢れでてくることもある。
■ Step 7
- A1 pulleyを切開したら、屈筋腱を観察する。屈筋腱に腱鞘で圧迫されたわずかな陥凹とその近位部にわずかな膨らみがある場合がある。患者に患指を自動伸展してもらい、ここが圧迫されない範囲まで遠位方向に腱鞘切開を追加する=すなわち、必要に応じて、A2 pulleyの近位を部分切開することになる。
- A0 pulley(palmar aponeurosis; PA)でひっかかりがおこることは稀であるが、もし引っかかるようであれば、A0 pulleyも切開する。
■ Step 8
- 再癒合を防ぐために切開した腱鞘を切除する。
■ Step 9
- 最後にもう一度、患者に指の自動屈曲・伸展をしてもらい、ばね現象やクリックの消失を確認する。
- 生理食塩水で洗浄する。
■ Step 10
- 皮膚縫合 5−0ナイロン
- ガーゼドレッシングをする。
■ 術後
- 当日は、安静、患部冷却、患手挙上を徹底する。
- 術翌日〜自宅処置(シャワー洗浄、軟膏、ガーゼを1日1回)を開始する。
- 術翌日〜患指の自動運動を開始する。2〜3時間毎に1回が目安である。
- 術翌日〜日中は軽作業から可とする。PIP関節に屈曲拘縮を認める症例では、日中の積極的なPIP伸展訓練(自動・他動)を推奨し、夜間はアルフェンスシーネを患指背側からあてがい、伸展位固定する。
- 術後2週間程度で抜糸する。
■ 処方箋
- ケフラールカプセル(250mg) 1回1錠 1日3回 毎食後 3日分
- ロキソニン錠(60mg) 1回1錠 1日3回 毎食後 3日分
- ムコスタ錠(100mg) 1回1錠 1日3回 毎食後 3日分
- ゲンタシン軟膏 10g 1本
■ コスト
- 腱鞘切開術(K028)
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