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【診療Tips】形成外科に広がる内視鏡手術革命|最新システムがもたらす新時代の外科治療

はじめに:外科治療は「可視化」で進化する

  • 内視鏡手術は、これまで消化器外科や整形外科で進化を続けてきました。

  • その中心にあるのは、「術野をより鮮明に、より安全に可視化する」という目標です。

  • 近年、4K・3D・ICG蛍光観察といった先進機能を搭載したシステムが登場し、これまで内視鏡手術の主戦場でなかった形成外科領域にも革新の波が押し寄せています

 

1. 驚異的な進歩を遂げた内視鏡システム

4K解像度 × 3D立体視

  • 従来のHD映像をはるかに超える4K解像度により、微細な血管や神経まで鮮明に描出。

  • 3D立体視では深度感が飛躍的に向上し、繊細な組織操作をサポート。

形成外科では、皮下の複雑な構造を立体的に把握できるため、乳房再建や顔面骨骨折整復で特に威力を発揮します。


ICG蛍光によるリアルタイム血流評価

  • 近赤外線蛍光(ICG)を利用し、皮弁や組織の血流状態をリアルタイムに可視化

  • 合併症の早期発見や皮弁デザインの精度向上に直結。

4K解像度と3D立体視に対応し、さらにICG蛍光観察(近赤外線)を統合した先進的な内視鏡プラットフォーム。

Karl Storz社「IMAGE1 S 4U RUBINA」では、白色光と蛍光画像を重畳表示でき、皮弁血流をその場で評価可能。


フレキシブルスコープと操作性革新

  • Olympus社「ENDO EYE FLEX 3D」は、先端が屈曲可能な硬性鏡。

  • 狭い皮下でもカメラを抜き差しせずに視野変更が可能で、乳房再建やフェイスリフトの効率が大幅に向上。

高精細3D画像による立体視と、先端湾曲機構による角度切り替えにより、狭小術野でも安定かつスムーズな視野展開を実現する。

 

2. 形成外科領域に広がる応用

乳房再建手術

  • 経腋窩アプローチによる自家組織乳房再建で、傷を最小限にしつつ広範囲な剥離が可能

  • 患者の整容性と機能性を両立。


顎顔面外科・顔面骨骨折整復

  • 従来は大きな切開が必要だった骨折整復手術でも、小切開+内視鏡で精密操作が可能

  • 術後瘢痕の最小化と早期回復に貢献。


美容外科手術(フェイスリフトなど)

  • 微細な血管や神経を保護しながら安全に剥離。

  • 3D視野での繊細な組織操作により合併症リスクを軽減。

 

3. 手術チーム全体が恩恵を受ける可視化技術

  • 最新内視鏡は術者だけでなく、助手・看護師も同じ視野をリアルタイム共有できます。
  • これにより以下の効果が期待されます。
    • 教育・研修の効率化

    • チーム全体の安全意識向上

    • 合併症発生率の低減

まさに「チームで手術を見る時代」への進化です。

 

4. 今後の展望:AIとの融合

  • 近年ではAIが内視鏡映像をリアルタイム解析し、解剖構造の自動認識や術中ナビゲーションを行う研究も進行中です。
  • 将来的には以下が実現する可能性があります。
    • 術中にリスク部位を自動警告

    • 経験差を埋めるリアルタイム教育ツール

    • 個別化手術プランニング

まとめ:形成外科に訪れる「内視鏡革命」

  • 最新の内視鏡システムは、形成外科に新しい治療戦略をもたらしています。
    • 4K3DICG蛍光で、視野と安全性が飛躍的に向上

    • 患者満足度の高い整容性を実現

    • 手術教育・安全管理を強化

参考文献

  • Olympus Corporation: ENDO EYE FLEX 3D製品情報, 2017.

  • Olympus Corporation: 外科手術用内視鏡システム「VISERA ELITE III」, 2022.

  • Karl Storz GmbH: IMAGE1 S 4U RUBINAシステム概要, 2024.

  • 浅野裕子, 福間英祐. 内視鏡下乳癌・乳房再建術. 形成外科 2024; 67: 567-573.

  • Khan DZ, et al. AI-assisted operative anatomy recognition in endoscopic surgery. npj Digital Medicine. 2024;7:161.

 

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Shimpei Ono (Plastic Surgeon)

日本医科大学形成外科学教室 准教授/医師。Advanced Medical Imaging and Engineering Laboratoryを主宰。 手足の形成外科、マイクロサージャリー、再建外科を専門とし、臨床・研究・教育に従事。可動式義指の開発、VR教育、3D超音波や医用画像工学の応用、PROsを重視した研究を展開。 美術解剖学や医療イラストレーションにも造詣があり、芸術と医学の融合をテーマに講演・執筆。教育活動では学生・研修医指導のほか、東南アジア医学研究会(Ajiken)部長として国際医療交流・災害医療にも取り組む。

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