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【診療Tips】感覚障害と知覚障害の違いを臨床例で解説|指外傷や正座後のしびれを例に感覚障害と知覚障害の違いを臨床例で解説|指外傷や正座後のしびれを例に

はじめに

  • しびれやピリピリとした違和感は、整形外科や形成外科の診療で頻繁に遭遇する症状です。
  • カルテに「感覚障害あり」「知覚障害あり」と記載することがありますが、両者の違いを正しく理解して使い分けることは、診断や説明においてとても重要です。
  • 本記事では、感覚障害知覚障害の違いを、
    指外傷や正座後のしびれなど身近な症例を通してわかりやすく解説します。

本記事は医療従事者向けです。患者自身による自己診断・治療はせず、症状がある場合は必ず医療機関を受診してください。
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感覚と知覚の違い:まずは基本から

用語定義(簡単に)指外傷での例え
感覚 (Sensation)皮膚や末梢神経が「刺激があった!」と信号をキャッチし、脳に送る過程。まだ意味づけされていない段階。針が指先に触れたときに、「何か触れた」という信号が末梢神経から脳に伝わる。
知覚 (Perception)脳が感覚信号を整理して「何が起きているのか」を理解・認識する段階。脳が「右手の人差し指の先端がチクッと痛い」と判断する。誤作動すると「ジーンとする」「虫が這うような感じ」など異常な認識になる。

Sensory vs Perception

 

 

感覚障害と知覚障害の定義

用語定義具体例イメージ
感覚障害 (Sensation disorder)末梢神経や感覚受容器の問題で、脳に信号が届かない・弱い状態指先を触ってもまったくわからない(感覚消失: anesthesia)、触られても鈍い(感覚鈍麻: hypesthesia)センサーから電線までのトラブル
知覚障害 (Perception disorder)感覚入力はあるが、脳が誤って解釈する状態。異常な知覚や幻覚として感じる。断端部を軽く触れるとビリビリする、幻肢感覚(ない指があるように感じる)、虫が這うような感覚(paresthesia)脳側の解釈エラー
ちなみに「感覚障害」と「知覚障害」は、感覚と知覚それぞれにおいて、すべてを包括する言葉だよ。
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臨床例で理解する

1. 指外傷:深い切創で神経断裂

指を深く切った場合、末梢神経が切断されて信号が脳に届かなくなります。

  • 感覚障害の症状

    • 触られてもわからない

    • 熱い・冷たいが区別できない
      → 完全な「入力途絶」なので感覚障害と記載。

電線がきれた状態なので「感覚」。
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2. 指切断後の断端部

指を切断した患者では、断端部にしばしば異常知覚が現れます。

  • 症状

    • 軽く触れるとビリビリする

    • 電気が走るような感覚

    • 触っていないのに「指がまだあるように感じる」(幻肢感覚)

→ 信号は脳に届いているが、脳が誤作動して異常な知覚を生じている状態。
知覚障害として記載する。

脳が間違って解釈しているの「知覚」。
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3. 正座後の足のしびれ

正座は臨床でよく見られる一時的な末梢神経圧迫のモデルです。

  • 正座中
    神経が圧迫されて信号が届かない → 感覚障害(感覚鈍麻)
    例:「足先が触られてもわからない」

  • 正座解除直後
    血流が戻り神経が急に回復 → 知覚障害(paresthesia)
    例:「ジーンとする」「ビリビリする」

 

臨床での使い分け

場面適切な用語
カルテ記載感覚検査で反応が鈍い・ない → 感覚障害

患者の訴えが「ジーンとする」「虫が這う」 → 知覚障害

患者説明「神経から脳への信号が届きにくい状態です」(感覚障害)

「信号は届いているけど、脳が誤って感じています」(知覚障害)

でも、実際には明確に区別されていないケースもある。たとえば「幻肢感覚」という言葉。本来は perception(知覚)の問題なので、「幻肢知覚」と呼ぶのが正しいはず。しかし、西洋から日本へ用語が導入された際の翻訳上の問題や、医療者間での伝わりやすさといった理由から、誤った訳語がそのまま定着しているよ。
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患者さんへのわかりやすい説明例

「指先はセンサー、神経は電線、脳はコンピューターのようなものです。感覚障害はセンサーや電線が壊れて信号が届かない状態、 知覚障害は信号は届くけれど、コンピューターが誤作動して変な感覚として認識してしまう状態です。」
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まとめ

  • 感覚障害:末梢神経や受容器の問題で入力が届かない。
    → 触られてもわからない、感覚が鈍い。

  • 知覚障害:脳が誤って解釈して異常な感覚を生じる。
    → ジーンとする、虫が這うような感覚、幻肢感覚。

この2つを正しく区別することで、
カルテ記載が明確になり、患者への説明や治療方針決定にも役立ちます。

ここでは、神経評価やリハビリに使える器具を紹介するよ。日本医科大学では、酒井医療でよく購入しているよ。
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Shimpei Ono (Plastic Surgeon)

日本医科大学形成外科学教室 准教授/医師。Advanced Medical Imaging and Engineering Laboratoryを主宰。 手足の形成外科、マイクロサージャリー、再建外科を専門とし、臨床・研究・教育に従事。可動式義指の開発、VR教育、3D超音波や医用画像工学の応用、PROsを重視した研究を展開。 美術解剖学や医療イラストレーションにも造詣があり、芸術と医学の融合をテーマに講演・執筆。教育活動では学生・研修医指導のほか、東南アジア医学研究会(Ajiken)部長として国際医療交流・災害医療にも取り組む。

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