アクアプラストとは?
アクアプラスト(Aquaplast)は熱可塑性プラスチックで、温めることで柔らかくなり、冷めると硬化する性質を持ちます。
この特徴を活かし、患者の患部に合わせて成形することで、オーダーメイドスプリントを簡単に作成することが可能です。
⚠️ 注意事項:本記事は医療従事者向けです
本記事は、形成外科・整形外科・リハビリ領域の医療従事者に向けて執筆しています。
一般患者が自己判断でスプリント作成や使用を行うと、熱傷や皮膚障害、誤った固定による症状悪化のリスクがあります。必ず医師・作業療法士の管理下で行ってください。

アクアプラストシートを患者に合わせてカットする
メリット
既製品に比べてフィット感が高い。
その場で調整できるため、患者満足度が高い。
変形や治癒過程に応じて、再成形が可能。
スプリント作成に特別な機械を必要とせず、ティファールなどの湯沸かし器で対応可能。
臨床での使用例
使用目的 | 具体例 |
---|---|
外傷後の固定 | マレット指、骨折後の安静保持 |
拘縮予防 | 瘢痕拘縮に対する夜間スプリント |
疼痛緩和 | 変形性関節症に対する安静目的 |
postoperative management | 皮弁や移植部位の安静保持 |
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作成に必要な道具
アイテム | 用途 |
---|---|
アクアプラスト本体 | スプリント材料 |
ティファール電気ケトル | 材料を温める |
はさみ | 不要部分のカット |
蛍光ペン | カット部分のマーキング |
🩺 Tip: 角を丸く加工することで、スプリント装着時の不快感や皮膚障害を防止できます。
作成手順
Step 1:材料を温める
ティファール電気ケトルなどで60〜70℃前後に加熱。
アクアプラストを温湯に浸すと柔らかく変化する。
ポイント

アクアプラストを柔らかくするためのお湯を準備する

アクアプラストを60〜70℃前後の温湯に浸して柔らかくする。やけど防止のためピンセットを使用するのが望ましい
Step 2:成形
柔らかくなったアクアプラストを患者の手指に合わせて形作る。
圧痕が残らないように、均一に力を加える。

やや冷ましてから患者の手にあてがい、目的とする部位に沿わせて成形する(熱すぎる状態であてがうと熱傷のリスクがあるため注意)
Step 3:不要部分をマーキング&カット
蛍光ペンで不要な部分をマーキング。
医療用はさみでカットし、角は丸く整える。
Step 4:冷却・固定確認
形を整えた後、自然冷却または流水で冷やして硬化させる。
装着後、患者に圧迫感や痛みがないか確認する。

冷えて硬化したアクアプラストスプリント:指や手にぴったりフィットし、変形や拘縮予防、安静保持に活用できる
保険請求(コスト)
- アクアプラストを用いたスプリント作成では、疾患や病態によって請求できる内容が異なります。
大きく分けて以下の2パターンがあります。
請求内容 | 点数・金額 |
---|---|
処置料 + 材料費を同時請求 | J119 消炎鎮痛等処置:135点+特定保険医療材料「056 副木(1)軟化成形使用型」手指用:1,380円 |
材料費のみを請求 | 056 副木(1)軟化成形使用型:1,380円 |
請求の考え方
J119 消炎鎮痛等処置は、疼痛や炎症の治療が目的である場合に算定可能です。
例)変形性関節症など、痛みの軽減を目的としたスプリント拘縮予防が主目的の場合(例:瘢痕拘縮に対する夜間スプリント)では、J119は請求できず、材料費のみ(056 副木)を算定します。
ポイント
特に拘縮予防目的では、J119が認められないことが多いため、事前に院内での運用ルールを確認しておくことが重要です
はじめに
アクアプラストを使えば、その場でオーダーメイドスプリントを作成可能。
患者の手指形状にぴったりフィットするため、満足度が高い。
熱管理と角の加工を徹底し、快適な装着感を提供する。
保険請求も可能で、臨床的なメリットが大きい。
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