ER hand surgery

【診療Tips】指の挫創:神経・腱断裂のクイックチェック!

Key Point Summary

指の挫創を診察では、血流(動脈)、動き(腱)、感覚(神経)の評価を怠らないようにする。

血行障害を疑う時は、その日のうちに緊急手術が可能な病院に搬送する。

神経・腱の損傷を疑う場合は、その日は皮膚縫合のみをおこない、翌日以降に手外科外来に紹介すればよい。

 

 

 

Q & A

resident
指の挫創を診察するとき、腱や神経の合併損傷があるのか、自信をもって診断できなくて…
指の挫創はERで遭遇する機会の多い外傷なので、しっかりマスターしておきたいよね。ERで縫合処置を受けて、抜糸目的で紹介になった患者さんを診察したら、腱断裂や神経損傷があったということが多々あるよ。
medical advisor
resident
ER当直中に、その日のうちに緊急手術ができる病院に搬送しないといけないのって、どんな場合ですか?
血流障害を認める場合だね。指動脈が2本とも切断されていると不全切断と呼ばれて、再接合術の適応になるよ。指動脈の損傷が1本だけであれば、血流障害は認めない。腱や神経は急がないので翌日以降に手外科外来に紹介でOKだよ。
medical advisor

 

 

Outline

 

 

■ Step 1: 皮膚血流をチェックする

  • 指は2本の指動脈で栄養されているので、2本ともやられていないと血流障害は生じない。
  • 皮膚の色調:肌色であればOK、蒼白なら詳しくチェックをする。
  • CRT(capillary refill time: 毛細血管再充満時間): 指先を圧迫し、白くなった部分が赤く戻るまでの時間を計測する方法。2秒以上かかるようであれば虚血(=不全切断)の可能性がある。
  • Pin prick test:25〜27G針で指先を穿刺して、出血のスピードや色で血行状態を推測する方法。血流障害がない場合は新鮮血(赤色)がすぐにでる。暗紫色の血液がじんわりでる場合は虚血を疑う。
まずは指の色とCRTをチェックして、疑わしければpin prick testを追加しよう。血流障害を疑う場合は、緊急手術が可能な病院にすぐに搬送だね。
medical advisor

 

開放骨折と不全切断の違い

 

 

■ Step 2: 指の動き(腱)をチェックする

 

 

■ Step 3: 指の感覚(神経)をチェックする

  • 指の橈側と尺側を交互にさわって感覚が違うか患者に確認する。
  • 25〜27Gの針先を皮膚に軽く押し当てて(刺さない)、感覚の違いを確認する。
完全に無感覚であれば神経断裂の判断がしやすいんだけど、患者さんの多くは「健常部と比較すると鈍く感じます」のように答えるよ(この場合も実際には神経損傷があることがほとんど)。判断に迷う場合は、後日、SW testや2PDなどで定量評価するのも有効だね。
medical advisor

 

 

■ Step 3: 指の感覚(神経)をチェックする

  • 血流障害+(不全切断を疑う場合)は、その日のうちに緊急手術が可能な病院に搬送する。
  • 腱や神経の損傷は急がないので、皮膚縫合して、翌日以降に手外科(or 形成外科、整形外科)のある病院に紹介でOK。
resident
二次救急当直の病院だと、手外傷の患者さんを紹介する病院が決まっていて、ER看護師さんが詳しいことが多いですね!
実は、腱断裂は受傷当日に手術(腱縫合)をするのが最も成績がいいとされているんだけど、夜間・休日の当直帯では受けいれてくれる病院が少ないのが現状だよ。受傷当日は、指ブロック下に洗浄&皮膚縫合&シーネ外固定のみをおこない、翌日以降に手外科外来に紹介すれば大丈夫だよ。
medical advisor

 

指ブロック下にて、洗浄、5-0ナイロンで皮膚縫合した直後

 

 

背側から手関節軽度屈曲位でシーネ(オルソグラス3号)外固定した。手関節を軽度屈曲位で固定するのは、中枢側の腱断端が引き込まれるのを最小限にするため。

 

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Shimpei Ono (Plastic Surgeon)

Associate Professor, Department of Plastic and Reconstructive Surgery, Nippon Medical School. He specializes in hand and foot plastic surgery, microsurgery, and reconstructive surgery, and is involved in clinical practice, research, and education. His research interests include the development of movable prosthetic fingers, VR education, application of 3D ultrasound and medical imaging engineering, and emphasis on PROs. He also has an interest in art anatomy and medical illustration, and lectures and writes about the fusion of art and medicine. In his educational activities, in addition to teaching students and residents, he is also involved in international medical exchange and disaster medicine as the director of the Association for Southeast Asian Medical Research (Ajiken).

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