ER plastic surgery hand surgery

Step by Step Surgical Technique] Finger Block

Key Point Summary

指ブロックは、掌側から or 背側から注射する方法がある。掌側からのほうが痛みが強い。

掌側からのブロックには、皮下 or 腱鞘内に注射する方法があるが、基節骨背側の麻酔が不十分になりやすい。

背側からのブロックには、2ヵ所の注射を要する。指全体の麻酔が可能。

初心者には、背側からの"経中手骨ブロック"がオススメ!

 

 

 

 

 

 

Q & A

 

resident
指ブロックって手掌側からうつ方法と手背側からうつ方法がありますよね?結局どちらがいいんですか?

まず身につける指ブロックとしては、"経中手骨ブロック"をオススメするよ。手背側からのほうが痛みが少なく、指全体を確実にブロックできるからね。
medical advisor

resident
経中手骨ブロックってOberst麻酔のことですか?

そう、ドイツの外科医Maximilian Oberstが1882年に報告した方法で、麻酔の歴史に残る有名な伝達麻酔だね。
medical advisor

 

 

Outline

【解剖】

  • 指節骨の2時と10時に背側指神経(橈骨神経浅枝と尺骨神経背側枝)があり、4時と8時に掌側指神経がある。
  • 掌側指神経が、PIP関節以遠・背側の皮膚感覚を支配する。

指基部断面の解剖

 

掌側指神経がPIP関節以遠背側の皮膚感覚を支配する

 

【指ブロックの分類】


(1) 指基部・掌側・正中1ヵ所から注射するSingle-injection volar 法

(a) 皮下ブロック

(b) 経腱鞘ブロック

(2) 指間(みずかき=web)・背側・2ヵ所から注射するTwo-injection dorsal法

(c) 経中手骨ブロック


掌側から注射するほうが、痛みが強い傾向がある。

掌側の正中1ヵ所から注射するほうが、神経障害は起こしづらい。

 

 

 

 

【各 指ブロックの特徴】

(a) 皮下ブロック

  • 指基部・掌側の皮下に2〜3cc注入する。
  • 背側指神経のブロックが不十分になるため、基節骨背側の麻酔効果が弱い
  • (b)経腱鞘ブロックと比較すると痛みが少なく、効果は同等とされている。

皮下ブロック

 

 

(b) 経腱鞘ブロック

  • 指基部・掌側の腱鞘内に2〜3cc注入する。
  • 骨に達するまで針先を刺入して、シリンジに軽く圧を加えながら針をゆっくりと引き抜き、麻酔液が楽に注入できる位置(骨膜と屈筋腱の間隙)で注入する。
  • 背側指神経のブロックが不十分になるため、基節骨背側の麻酔効果が弱い。

少量の注射量で確実に指ブロックができるとされているが、腱鞘を貫くブロックは、少なからず感染、腱損傷、癒着のリスクがあることから著者は使用していない。

 

経腱鞘ブロック

 

 

(c) 経中手骨ブロック

  • Web・背側・2ヵ所から背側指神経に1cc、掌側指神経に2〜3ccずつ注入する。
  • 背側指神経もブロックするため、基節骨背側を含め指全体が麻酔される。

注射針による神経障害のリスクがある。

 

経中手骨ブロック

経中手骨ブロック

 

 

 

Step by Step

 

■ Step 1 

  • 手掌側からの指ブロック注射は、針を刺入する際の痛みが強いこと、背側の指神経のブロックが不十分となる傾向にあるため(基節骨背側の麻酔の効きが悪いため)、著者は経中手骨ブロックを好んで用いている。(指尖部のみの処置であれば、掌側からの皮下ブロックも有効である。)
  • 1%キシロカイン10cc または 0.75%アナペイン10ccを10ccロック付きシリンジに吸う。
  • 針は23G針を好んで用いている。ある程度の針の長さがないと手背のwebから注射した際に手掌の指神経まで届きづらいためである。
本稿では、どの病院でも容易に入手可能な23Gの針を用いているよ。痛み緩和と神経障害予防目的で、より細い針(24Gや25G)を好んで使用している病院もある。26G以上の細い針は、針の長さも短くなるため経中手骨ブロックでは届かない場合があるので、皮下ブロック以外では使用しないほうがいいいよ。
medical advisor

注射針のGと長さの一覧表

 

1%キシロカイン

0.75%アナペイン

 

アナペインは0.75%と1%の2種類があるよ。局所浸潤麻酔で使用できるのは0.75%のほうなので注意しよう。(1%は硬膜外麻酔用)
medical advisor

 

 

■ Step 2 

  • 指の橈側(or もちろん尺側からでもOK)から背側指神経に1 cc注射する。


注射はゆっくりと時間をかけて注入したほうが痛みが少ない。

 

 

■ Step 3 

  • 針先を深部にすすめて掌側指神経に2〜3 cc注射する。


局所麻酔薬が容易に注入可能な層に注射する。シリンジ圧が高くて押せない場合は、不適切な層に針先が入っている可能性が高いので位置をずらす。

 

 

■ Step 4 

  • 尺側の背側指神経も同様に1cc注射する。

 

 

■ Step 5 

  • 尺側の掌側指神経も同様に2-3cc注射する。

 

 

■ Step 6

  • 3分待ってから手術を開始する。

手術部位の炎症が強い時(例:瘭疽など)は、麻酔が効くまでに時間がかかるため3分以上待ってから執刀した方が良い。

 

 

■ Evidence


resident
指ブロックにエピネフリン添加の局所麻酔薬(例:1%Eキシロカイン)は禁忌なんでしょうか?「手指や足趾で使用すると壊死を起こす危険があるから禁忌」って勉強した記憶があります。



2005年にLalondeが、3110人を対象にしたprospective studyで、 low-dose epinephrine (1:100,000 or less) を添加した局所麻酔薬を手指に使用しても1例も壊死は認めなかったことを報告しているよ。
medical advisor

Lalonde D et al. A multicenter prospective study of 3,110 consecutive cases of elective epinephrine use in the fingers and hand: the Dalhousie Project clinical phase. J Hand Surg Am. 2005;30:1061-1067.

 

resident
1%E、手指や足趾の手術で使っても良かったんですね!


この論文を読むと"エピネフリン添加局所麻酔薬は指に使用できる"と結論づけたくなるんだけど、(1) エピネフリンが低濃度であること、(2) 研究対象者が限定されていること(※) に注意しないといけないね。つまり、レイノー病や重症心不全など末梢循環障害を有する場合は使用しないほうがいいね。
medical advisor

※Elective epinephrine injection was avoided in the uncommon situations in which patients might have had pre-existing significant problems with hand or finger ischemia such as previous finger infarction, severe acute crush, previous replantation, Buerger’s disease, revision Dupuytren’s surgery, severe vasospastic disorders, and so forth. Smokers, however, were not excluded unless they showed significant signs of finger ischemia.

 

あともう1つの問題点は、日本ではエピネフリン添加キシロカインの添付文書に「指趾への使用は禁忌」と記載されているんだ。使用に際してはあくまでも"医師の裁量で"ってことになるね。
medical advisor


 

■ 関連記事

  • This article was written by.
  • Latest Articles

Shimpei Ono (Plastic Surgeon)

Associate Professor, Department of Plastic and Reconstructive Surgery, Nippon Medical School. He specializes in hand and foot plastic surgery, microsurgery, and reconstructive surgery, and is involved in clinical practice, research, and education. His research interests include the development of movable prosthetic fingers, VR education, application of 3D ultrasound and medical imaging engineering, and emphasis on PROs. He also has an interest in art anatomy and medical illustration, and lectures and writes about the fusion of art and medicine. In his educational activities, in addition to teaching students and residents, he is also involved in international medical exchange and disaster medicine as the director of the Association for Southeast Asian Medical Research (Ajiken).

-ER, plastic surgery, hand surgery
-, , , ,

© 2025 Minor Surgery & Emergency Powered by AFFINGER5