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【診療Tips】屈筋腱縫合後の早期自動運動療法(early active mobilization: EAM)

Key Point Summary

屈筋腱の早期自動運動療法(early active mobilization: EAM)を解説する。

 

 

Outline

【屈筋腱損傷後のリハビリテーションの種類】

屈筋腱縫合後のリハビリは、固定 vs 早期運動開始法、の2つに大別できるよ。早期運動開始法はさらに以下の1 〜3にわけられるよ。
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  • (3週間)固定法
  • 早期運動開始法

① 早期自動伸展・他動屈曲法(Modified Kleinert法)

② 早期自動屈曲・伸展法(EAM法)

③ 早期他動運動法(Duran法)

 

早期運動は上記①〜③の組み合わせ(例:①+③、②+③、など)で用いることが多いよ。
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当然、固定法の方が再断裂のリスクが避けられて安全なんだだけど、癒着や関節拘縮が必発なので、条件を満たせば早期運動療法を選択するよ。一方で固定法が絶対にいけないというわけではなく、小児例やコンプライアンス不良患者などでは今でも選択されるよ。
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【術直後のスプリント作成】

  • 術翌日に、ハンドセラピスト(OT)が熱可塑性プラスチックを用いて背側伸展制限用スプリントを作成する。
  • 背側伸展ブロックスプリント: 手関節10°、MP関節60°、IP関節(PIP関節およびDIP関節)0°で作成する。
もちろん自分で作成できるようにしたほうがいいよ。日医大形成ではアクアプラストとストラップで作成しているよ。
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屈筋腱縫合後は、手指や手関節を過伸展すると腱が再断裂してしまうので、伸展制限用スプリントが必要になるよ。あと、ガーゼやストラップがひっかかって抵抗運動にならないように注意しよう。
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【早期自動運動療法】

  • 早期自動運動療法(EAM)をするのであれば術翌日から開始する。術後数日経過してから開始するのは×。術後24時間以上経過するとすでに癒着がはじまっており、その状態で屈筋腱を滑走させると腱の再断裂が生じやすい。
  • 基本的には、自動屈伸運動(自動屈伸単独法)を採用している。しかし、術直後に疼痛が強く自動屈曲が困難な場合は、ラバーバンド+自動屈伸法を採用することもある。
  • 日医大形成では、聖隷浜松病院 手外科・マイクロサージャリーセンターの屈筋腱リハビリプロトコルを採用し、一部改変して運用している。

早期自動運動療法のプロトコル

 

 

【術翌日〜3W】

  • 背側伸展制限スプリントを常時装着した状態で、自動屈伸運動他動屈曲・自動保持運動(press & hold)を中心におこなう。
  • 最初の1週間は、腱周囲の浮腫による腱滑走抵抗の増大を考慮して、自動屈伸運動よりも他動屈曲・自動保持運動(press & hold)を中心におこなう。
  • PIP関節の屈曲拘縮を生じやすいため、Duran法を併用する。
  • 主治医&ハンドセラピストからリハビリ指導を受け、リハビリ法と禁忌を十分に理解したら、2〜3時間に5分の頻度で患者にリハビリをするように指導する。

【自動屈伸運動】

自動屈曲

自動伸展

PIP関節の伸展が不十分になりやすいため、MP関節を60°より屈曲位を強めた状態でPIP関節が0°までくるように訓練する。写真のように、基節骨背側に手指をあてたり、同部にwedge splintを挟み込むとよい。

 

【他動屈曲・自動保持運動(press & hold)】

他動屈曲

自動保持

 

【Duran法】

Duran法:MP•DIP関節を屈曲位で保持してPIP関節のみを他動伸展することでPIP関節拘縮を予防・治療する。

 

【長期経過】

  • 本症例の長期経過(術後7ヶ月)を提示する。

 

 

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Shimpei Ono (Plastic Surgeon)

Associate Professor, Department of Plastic and Reconstructive Surgery, Nippon Medical School. He specializes in hand and foot plastic surgery, microsurgery, and reconstructive surgery, and is involved in clinical practice, research, and education. His research interests include the development of movable prosthetic fingers, VR education, application of 3D ultrasound and medical imaging engineering, and emphasis on PROs. He also has an interest in art anatomy and medical illustration, and lectures and writes about the fusion of art and medicine. In his educational activities, in addition to teaching students and residents, he is also involved in international medical exchange and disaster medicine as the director of the Association for Southeast Asian Medical Research (Ajiken).

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