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【診療Tips】ばね指にたいする腱鞘内ステロイド(ケナコルト-A)注射

Key Point Summary

ばね指の保存療法として、腱鞘内ステロイド(ケナコルト)注射は有用である。

腱鞘内ステロイド注射は1指に対して2(〜3)回まで。

糖尿病に起因するばね指に対して腱鞘内ステロイド注射はオススメしない(=禁忌に近い)。

 

 

Q & A

resident
ばね指の腱鞘内ケナコルト注射って何回でもやっていいんですか?

1指に10回ぐらい注射するドクターもいるけど、ステロイド注射は腱の脆弱化、感染、皮膚・皮下脂肪の萎縮などの副作用もあるから、指1本あたり注射回数は2(〜3)回までと決めているドクターが多いよ。あと1回あたりのケナコルトの量も大事。5〜10mgが適量で、20〜40mg/回注射すると腱断裂のリスクが高まるよ。すぐ(注射後3ヶ月以内)に症状が再燃するものは手術をしたほうがいいね。
medical advisor

resident
糖尿病に起因するばね指の患者さんに腱鞘内ステロイド注射ってどうなんですか?
ステロイド注射は糖尿病を悪化させるね。糖尿病が悪化するとばね指も悪化する...という悪循環に陥ってしまうので、個人的には糖尿病患者さんにはステロイド注射はしていないよ。
medical advisor

 

 

Outline

【ケナコルト】

  • 中力価のステロイド注射薬で、注射部位の炎症を抑える効果がある。
  • ケナコルトは生体内で難溶性であるため、組織吸収が遅い。そのため注射部位に留まり、長期的(2週間〜1ヶ月程度)に抗炎症効果を発揮する。

高野恵雄, ほか.持続性ステロイド剤. 臨床と薬物治療1989;8:85-89.

ケナコルト-Aを有効且つ安全に使用するためには、組織吸収が遅いことを考慮して頻回注入は避けるべきだね。
medical advisor
  • ケナコルト-Aの投与量に関しては、5〜10mg/回とするDrが多い(20〜40mg/回だと多すぎて腱断裂のリスクが高まる)。ケナコルト-Aは、①50mg/5ml と ②40mg/1mlの異なる2種類があるので注意を要する。いずれも腱鞘内ステロイド注射の保険適応がある。
  • 組成:1mlシリンジで、ケナコルト-A 50mg/5mLを0.5mL(5mg)1%キシロカイン0.5mLを吸い、27G針で注射する。
  • 副作用:腱の脆弱化(腱断裂の報告もあり)、感染、皮膚・皮下脂肪の萎縮

ケナコルト-A皮内用関節腔内用水懸注50mg/5mL

 

ケナコルト−A筋注用関節腔内用水懸注40mg/1mL

 

 

 

 

 

Step by Step

■ Step 1 

  • 触診でA1 pulley部を確認する。圧痛を伴うことが多い。患者に患指の屈伸運動をしてもらうとゴリゴリを触知する。

 

 

■ Step 2 

  • Step 1で確認したA1 pulley部に注射針を刺入する。この際、針先は腱鞘内を貫いて少し深めまで刺入する。
A1 pulley部はA1 pulleyと腱の間のスペースが狭いことが多いため、A1 pulleyよりもやや遠位、指基部の皮線(palmar digital crease)から注入するDrもいるよ。
medical advisor
針を皮膚にたいして垂直に刺入する、と書いてある教科書が多いけど、写真のようにやや斜めに刺入したほうが、腱鞘内を探しやすく、注入時もシリンジを保持しやすいので、個人的にはやや斜めに刺入しているよ。
medical advisor

 

 

■ Step 3 

  • 注射シリンジに軽く注入圧をかけながら、少しずつ抜き、抵抗のなくなったところ(=腱鞘内)で注入する。
針先が腱鞘内に入っているのを確認する方法として、① 患指を屈伸しても針先が連動しない。② A1 pulleyのやや近位に指をおき、注入時に薬液がはいってきた際のふくらむ感じを触知する、などがあるよ。
medical advisor
腱鞘内に入れると痛みが強く感じられるということ、腱鞘内でも腱鞘上でも効果は同じという報告から、腱鞘上に注入するという報告もあるよ。
medical advisor

 

 

 

■ 施術後

  • 注射用の絆創膏を貼付する。
  • 当日は患部が濡れないように保護し、翌日〜は通常どおりに手を使用して可とする。
麻酔の影響で1〜2時間ほど指がしびれた状態になることを伝えておくと安心するよ。また、効果がでるまでに1週間ほどタイムラグがある人がいるので、すぐに効果がでなくても心配しないように話しておこう。
medical advisor

 



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Shimpei Ono (Plastic Surgeon)

Associate Professor, Department of Plastic and Reconstructive Surgery, Nippon Medical School. He specializes in hand and foot plastic surgery, microsurgery, and reconstructive surgery, and is involved in clinical practice, research, and education. His research interests include the development of movable prosthetic fingers, VR education, application of 3D ultrasound and medical imaging engineering, and emphasis on PROs. He also has an interest in art anatomy and medical illustration, and lectures and writes about the fusion of art and medicine. In his educational activities, in addition to teaching students and residents, he is also involved in international medical exchange and disaster medicine as the director of the Association for Southeast Asian Medical Research (Ajiken).

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